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Episode 11 聞くために塞ぐのです。

全然詳しくないんですけど、落語、結構好きなんです。
毎週日曜日の「笑点」とか大好きで、国分太一さんが主演された映画「しゃべれどもしゃべれども」とか、アニメ化された雲田はるこさんの漫画「昭和元禄落語心中」とか、落語を題材にした物語とかも大好きです。
アニメ版がすごく良かった「昭和元禄落語心中」ですが、この秋に実写ドラマ化されるそうで、これまた楽しみで。

さて、その落語絡みで過敏の話をひとつ。
私自身が対人関係で後れを取ってしまう原因のひとつに、聴覚の問題があります。
先ず、聞く体制ができていないときは聞いていない、そして、聞く体制を作っても想定できない音が耳に入ってきて、必要な音を拾いだせないことが多いからです。

ざわついた環境が苦手なのは「自分が認識していない音が混ざるから」だということは、何となく理解していただけたかなと思っています。
音が大きかろうと小さかろうと、聞こうと思っている私の意識外で発生する音は、カクテルパーティーの網をくぐって聞こえてきてしまうのです。

落語で聞く「耳の穴ぁかっぽじってよぉく聞け!」なんていう威勢の良い啖呵、なんかこう…短気で喧嘩早い江戸っ子の姿が目に浮かびそう、耳垢を全部キレイに取って、集中して聞きやがれ!って感じでしょうかね、あぁ、惚れ惚れする格好良さ…でも。
たぶん、普通に必要な音声情報を拾い出せる人はこれで問題ないだと思います。
…残念ながら、私には通用しません。

「人の話を聞くために耳を塞ぐんです」って言ったら、意味わかりますか?
多分、ほとんどの人が意味不明だと思います。

目の前にいる人との会話を成立させたい、そのためには聞く体勢を作らなければならない、でも聞く体制を作れば必要ない音も耳に入る、世の中しんと静まった場所の方が少ないわけで…さぁ、どうする?
その答えが「耳を塞ぐ」です。

会話したい人は基本「目の前」にいるわけですから、「周囲のざわつき」よりも「目の前の声」の方が物理的に聞こえる音量も大きいことが多いです。
だから、耳を塞ぐことで一律に音量を下げて、周囲のざわつきを消すのです。
端から見ていたら、耳を塞いで聞き耳を立てる変なヤツです。

会話は基本、一対一です。
ひとりの言葉にほかの誰かの言葉が被さると、拾い出せなくなってきます。
人数が増えれば増えるほど会話が難しくなる、言葉を拾い出すのがどんどん難しくなるからです。
グループトークが苦手な理由は、こんなことでもあるわけです。

もしもこのやり取りが落語なら…。
「やいこの野郎、耳の穴ぁかっぽじってよぉく聞け!って、なに耳ぃ塞いでるんだよっ…」
「へぇ、聞くために耳を塞いでおります…」
「なに言ってやがる、このトンチキめ!」
…って、感じでしょうかね。

噺家さんならこのやり取りを、お客様にどのように伝えるか、そんなホロリとする人情噺があれば、聞いてみたい気もします。 

旧ブログ アーカイブ 2018/9/25

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