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Episode 9 居酒屋トークが苦手なのです。

お酒、大好きなんです。
種類は問わず、何でも美味しくいただくのですが、個人的には日本酒が一番です。
私の住んでいる地域は「米どころ」「酒どころ」の地域で、全国的にも有名な美味しい地酒でも、普通の酒屋に定価で置いてあったりするのです。

当然、街の居酒屋でも美味しい地酒が良心的な値段で提供されていて、店の大将が腕を揮った美味い肴をつまみながら、馴染みの酒や初めて呑む銘柄の酒や…あれやこれやと楽しく地酒を試すのです。

ただ、そんなに楽しい居酒屋も、大人数でワイワイ…となると、会話が上手く聞き取れなくなりがちで、雰囲気を楽しめなくなったりすることがあるんです。

「すみませーん、生中3つ!」
「生中3つ!ハイ喜んでー!」
なんて、居酒屋で良く聞く店員さんとお客さんのやり取りですが、居酒屋のあっちの方でこんなやり取りがあったって、目の前のグループトークが止まるわけがありません。
実は聴覚過敏/鈍麻にとって、これがかなりの曲者で…。

私は言葉が苦手(言語聞き取り能力が低い)なので、聞くという作業には集中力が必要です
ですから、耳のスイッチをONにして、聞く体勢を作って会話をするわけです。
そのタイミングで後ろから「生中3つ!」って、別の言葉が聞こえるわけです。
ちょっとぐらいなら問題ないんですが、繁盛している店なんかだとあっちでもこっちでも店員さんとお客さんのやり取りが繰り返されるわけです。
こうなると目の前の会話と後ろのやり取りが被るので、目の前の会話を聞き漏らさないように更に集中力を高めなければなりません。

あとは悪循環の連鎖…集中力を高めれば高めるほど、後ろの雑音も耳に入ってきてしまうのです。
音の洪水に呑みこまれて溺れ、耳から入る情報の全てが聞き取れなくなってしまうのです。

「カクテルパーティー効果」といわれるものがあります。
ざわついた環境の中でも自分に必要な情報を選び出して聞くことができるっていうヤツです。
今の話は、まさに「コレ」です、これが弱いんです。

聴覚過敏とカクテルパーティー効果のバランスは一律ではありません、人それぞれです。
聴覚過敏の人のカクテルパーティー効果の弱さについて、会話も雑踏のざわめきもエンジン音も、街中の音を同列に引き込む…といった説明も見かけます。
そういう人もいるのでしょうが、私の感覚はそういう受動的なものではない、ちょっと違います。
積極的に聞きにいったときに必要な音(声)が選択できなくなる…が正しい感覚です。

私の場合、圧倒的に視覚優位なので、基本的に耳はお留守です。
視覚情報で事が足りる時は、耳からの情報は完全スルー、必要ないから聞いてません。
でも、会話はしぐさや表情はあっても基本は音の情報ですから、聞きに入らなければなりません。
ここではじめて必要な音を拾わなければならない事情が生じて、カクテルパーティー効果の弱さという弱点が顔を出すのです。

そもそも聞くという作業に労力が必要なので、言葉が苦手になったのかもしれません。
AS/ASDだから過敏/鈍麻があるのではなくて、過敏/鈍麻の特性があるからそれに適応するためにAS/ASDの思考(発想)になった、という方がしっくりくるかもしれません。
AS/ASDに多くのパタン特性があるのは、こう考えると納得いく話です。

居酒屋の片隅でうな垂れる私…。
残念ながら、まわりの人は「また飲み潰れて」とか思うわけです。
すみません、今度は静かな小上がりの和室でお願いします…。 

旧ブログ アーカイブ 2018/9/23

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