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Episode 763 あなたを怒らせてしまうのです。

「葬送のフリーレン」を読んで、その物語に散りばめられるエピソードから Autism の匂いを嗅ぎ取ってアレコレと想像/空想してみる…を月に1回のペースでやってみようなんて思いから始めてみたこの連載、意外と続いていて、執筆者である私自身が驚いています。
今回はその6回目、単行本一冊につき記事をひとつ書く感じですから、今回のテキストは単行本の第6巻です。

さて、第6巻のあらすじをサラッと…。
第6巻は、北部最大の魔法都市・オイサーストで行われている「一級魔法使い選抜試験」の、第二次試験であるダンジョン攻略に挑む受験者の奮闘と試験後の姿、そして始まる最終第三次試験…というあたり。
例によって、私はネタバレを含む内容に踏むことことを、私は望みません。
興味がある方には、ぜひ現物を購入して手にとって欲しいから。

さて、今回のトピックスは、こちら。

フリーレン様と喧嘩しました。

零落の王墓での戦いで杖が壊れてしまったのて、直しに行きたいとフリーレン様に伝えました。
そうしたら古い杖は捨てて新しい杖を買った方がいいと…

それでもあれはハイター様に貰った杖です。
小さな頃からずっと一緒だったんです。
少なくとも私には、捨てるだなんて発想はありませんでした。

オイサースト郊外にて、フェルンの言葉

第二次試験の激闘は、無事…でもないけれど、少なくとも死者を出さずに終了し、フリーレンも、その弟子であるフェルンも合格したのですが、その戦闘でフェルンが大切にしていた魔法の杖は粉々に壊れてしまいます。

そんな大切なものを「捨てる」だなんて…。

この時のフェルンの心持ちは、悲しいやら悔しいやら、怒りの感情もある中で、それを上手く表現出来ずにいるように思います。
それはそうですよね…恩師に頂いた大切なものなのですから。

その後、フリーレンは粉々になったフェルンの杖をオイサーストの街で魔法店を営むリヒターに修理してもらうワケですが…。

恐らくフリーレンは、フェルンにボロカスに言われたに違いありません。
私が大切にしていた杖を、捨てろだなんて!

フリーレンは「どうしようか」と迷った挙句、杖を直して何とかしよう…と思ったのでしょう。
あぁ、私にも心当たりあるよ、似たようなエピソードね。

ある日、パートナーよりも早く自宅に帰った私は、風呂に湯を張って入浴剤をひとつ投げ込みました。
それがパートナーが「特別な日」用として取ってあった入浴剤だと気づかずに…ね。
パートナーが帰宅して、その入浴剤が入った湯船に気がついて「えっ、あれ使っちゃったの?」と聞かれた私は、パートナーにボロカスに怒られたんですよね。

パートナーの言い分はこうです。

ひとつだけ違うのがあったとしても、楽しみに取ってあったなんて言ってないから、知らなくても当然だし、そんなことは怒っていない。
でも、それがどんなものだったのか確認くらいするのが普通じゃない?

…てね。

つまりね、その入浴剤がパートナーにとってどんなものだったのか、パートナーの気持ちを確認しないで、使ってしまったという事実だけに「ごめん」と言われてもね…ということです。
わかって欲しいのはパートナーの「私の気持ち」のガッカリ感であって、私の行動を咎めたいのではないワケのね。

ただ、Autistic(自閉の民) である私は、このあなたの気持ちを受け止める…を飛ばしてしまうことがとても多いのですよ。
結果として、気持ちを受け止めてもらえずに宙に浮いた感情は、怒りとなって相手に叩きつけられることになる…。

多分ね、粉々になってしまった杖が、フェルンにとってどんなに大切なモノなのか…の確認があれば、フェルンはそんなに怒らなかっただろう…とか、私は思うのです。
仮に杖が直らず終いであっても、その杖を燃やした灰をペンダントに納めて携帯するとか、納得する形で看取る方法でも良かったに違いないだろう…と。

フリーレンは感情や感性に乏しい。
それが原因で困難や行き違いが起こることもあるでしょう。
でも一つだけいいこともあります。
その分だけきっと、フリーレンはあなたのために思い悩んでくれる。

聖都シュトラール郊外の庵にて、ハイターの言葉

幼い頃のフェルンに掛けたハイターの言葉は、フリーレンのエルフ故の(Autistic とよく似た)資質を、端的に言い表していると感じます。

街を歩き、杖の修理ができる場所をひとり訪ねたフリーレンは、何も言わずに修理された杖をフェルンのベットの上に置いて、先に寝てしまいます。
それがフリーレンにできる、フェルンに対しての精一杯の心遣いだったとして、フリーレンは本当に感情が希薄なのか…と問えば、恐らく否です。
その表現方法が違うだけ…多分ね。

この上手くいかない事実を「行き違い」として見極めたハイターの眼力は、やはりただの「生臭坊主」ではなかった…ということでしょう。

余談ですが、入浴剤を使って怒られた私は、ひとり同じモノを探して購入し、コッソリと元のところに置いたのでした。
私の精一杯も、フリーレンと同じレベルだった…ということです。

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