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Episode 519 居座ることでの成長です。

私は本州日本海側唯一の政令指定都市に住んでいて、その街で小さなちいさな発達障害の自助会を運営しています。
毎月一回、市内中心部のコミュニティ施設で茶話会を開いていてですね、先月は新しく参加された方もいて、とても楽しくお話しができたと思っています。

実は…私は「自助会は進歩してはいけない」という立場で会を運営しているのです。
そこには私の自助会に対しての思いがあるのです。

この話は上のリンクから過去記事をジャンプしていただくとしてですね、この記事を書いてから先、直近の1年間で私が感じたことは「居座ることでの成長」なのかも知れません。

作曲家で指揮者でもあった故・山本直純氏は、口ひげと黒縁メガネがトレードマークのクラシック音楽の普及・大衆化に力を注いだ人物でした。
彼は、後に世界的指揮者になる小澤征爾氏に「自分は日本に留まって音楽の底辺を広げる。お前は世界を目指せ」と言ったそうです。

一年前に書いた記事で私は、作曲家・山本直純氏の立場に自助会の立ち位置を重ねたのです。
特に私のような「ポツンと政令市」を拠点にしている自助会の主催者は、「来たい人は来れば良い」と言うような上から目線の態度では人も集まらないし、理解もされない…と考えたのです。

私が住む街は首都圏や関西圏のように、政令市が幾つも連なっているような地域ではありません。
確かに、この地域では大きな街なのです…でも、その周りが同じような街が幾つもあるワケではないのです。
周辺の人口が少なければ、当然のように交通の便も良いワケがありません。
商圏を構成するエリアが広大な割に人口が少ないのです。
それ故に自助グループが幾つもできるようなことはなかったのでしょう。
私ができることは、そんな地方都市にある自助グループの灯が消えないようにすることだったのです。

可能な限りの労力を省き、準備するものはコミュニティ施設の予約と自分の体だけ、自助会の開催が私の重荷にならないように…とにかく継続することだけを考えて会を重ねていったのです。

話の内容はなるべく初歩的なこと、できるだけ発達障害の「入り口」付近の話題を膨らませる様に…それは、今回初めての方でも話に入りやすくする工夫で、結果的に「同じ話題」をこの一年間で何回も話すことになったのです。
会話の内容は「仕事のこと」「病院(クスリ)のこと」「家族のこと」が多かったなぁ…。
毎回欠かさず出てくださる方もいるのです。
でもメンバーが変われば雰囲気も背景も変わるのですよね。
同じように仕事のことでも、クローズ就労している方もいれば、オープンの方もいるし、就活中の方もいたりして。
前回から気になっていたことを、また改めて話してみるとか、今回参加された方の話を聞いて「閃く」とかね。

不思議なもので、同じような話を行ったり来たりしているうちに見えてくるものがある…と気が付いたのは、去年の秋くらいだったでしょうかね。

最初は、新たな参加者に広く扉を拡げておきたい…という思いから「飽きるかもしれないけれど、同じ話の繰り返しを良しとする」という選択をしたのでした。
これは「進歩したい、成長したい」という向上心に蓋をするのではないか…と考えたりもしました。
でも、その心配はなかったのです。

繰り返し何度も話される内容は、何とか自助グループにたどり着いた「あなたが一番『知りたい』と思っていること」だ、ということ。
それは、「一回聞いただけで納得できるほど簡単なものではない」ことが殆どだということ。
何回も「聞いて話して」…をしているうちに、自分の中で安定した考え方ができるようになってくるということ。
それは、自分がどのように考えているのか…という「自分への問いかけ」だということ。

自助会の立ち上げから、3月の定例会で丸2年です。
主催する私に、やっと本当の自助会の意味が見えてきたように思います。
今後もこの地方都市に自助グループの灯が灯り続けますように…。
自助会で一番得るものがあった人は、実は主催する私です。
参加される皆さんに、感謝です。

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