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Episode 471 そんなに閉じてはいないのです。

ここ数回の記事で口酸っぱくなるほどに言ってきたことは、結局のところ…こころの奥底にしまい込んだ「私の気持ち」をいかに引っ張り出すのか…という「たった一言」で言い現わせてしまいます。
何故、しまい込んでしまったのかについては、過去記事を読み返していただくとして…。

ちょっと思うところがあって、Twitterで「自閉」という言葉のイメージについて、皆さんの意見を聞いてみました。

ザックリ6割の方が何かしらの「敷居」の中に閉じこもっているイメージをお持ちのようです…というのは凡そ予想どおりでした。
ここで私の「自閉」のイメージをお話ししようと思います。

閉じこもっていると感じているのは、外から見た印象の話なのでしょうね。
「『自閉』スペクトラム症(=ASD)」と診断された「自閉症者」である私の感覚は、扉も殻もない筒抜けの門から外の様子を伺っている…アンケート3項目の感覚です。

先のコラムでお話ししたように、人間の基本的な部分を作る原動力は「好奇心」であると思っているのですよ。
この好奇心を動かすものは「私の気持ち」以外にはありません。
それが誰かに触発されたことであっても、興味関心を持つ…という原動力を他人が植え付けることは絶対に出来ないと思うのです。
あなたが出来ることは、私の注意を引く…というところまでです。

この注意をひかれて喰いついた「私の気持ち」が行動になって現われるワケです。
前のコラム記事の言葉を引用すれば、それが「成長」であるということになります。
その成長の過程で周囲との関係を覚えていく、私たちのような「自閉症者」は、それが上手くいかないからブラックボックスを作って社会からはみ出さないようにした…と説明しました。
でもこれは生活するための「現象面」の話です。
ブラックボックスの中には「私の気持ち」は存在しません。
では、私の気持ちはどこにあるの?

受動型のASDを説明する時に、ライフハックを多用するとお話ししました。
その受動型の私がどうしても射止めたいあなたに向かって積極奇異外モードを発動することがある…というお話しもしました。

言っちゃナンですが…意中のあなたを射止めようと必死になっている「狩モード」のその瞬間は、私は「私の気持ち」に正直に行動しています。
そうです!これが積極奇異の「奇行」の正体だと私は思っています。
周囲との調整能力に欠けるのが「障害の本体」だとすれば、好奇心の赴くまま周囲との調整をせずに突っ走るのが積極奇異型ということだと考えます。
その一方、受動型や孤立型は、子どもの頃の積極奇異での「奇行」を散々咎められ、気持ちを抜いたブラックボックスという帳尻合わせを使い始めます。
調整する能力がないに等しいから、気持ちの調整をせずにしまい込む。
気持ちを表に出せば周囲との摩擦で咎められるのは痛いほど分かっている…ということ。

外からは気持ちを見せないからね、「自閉」は扉や殻の中に閉じこもるイメージなのでしょうね。
でも実際は精々…手で覆う程度しか隠せていないどころか、安心して見せられるタイミングを覗っているように思います。

ASDは「自閉スペクトラム症」と言われる前、「アスペルガー症候群」や「高機能自閉症」などという、幾つかのタイプに分かれて呼ばれていました。
その中に「カナー型自閉症」と呼ばれるものがあります…一般的に知的障害を伴う自閉症を指す言葉です。
良く知られた旧来からある自閉傾向のことで、知的障害を伴ってしまうが故に周囲との関係性がより難しくなってしまうことが多いのですが、大声を出すとか周囲に溶け込まずにひとり遊びをすることが多いとか…その「問題行動」から知的障害というレイヤーを外せば、アスペルガー症候群の積極奇異傾向や受動傾向と、違いが見当たらなくなってしまう…と、私は感じるのです。
「カナー型自閉症」の場合、「私の気持ち」のコントロールは「アスペルガー症候群」や「高機能自閉症」の人よりも難しいと思います。
良いも悪いも、気持ちの赴くまま。

自閉という言葉のイメージは、カナー型のイメージから来ているのでしょう。
自分の思考スピードはかなり遅く、あなたの言葉に反応する自分の気持ちを気持ちを伝える術がない。

結果として周囲との接触を好まない自分の世界…だから「自閉」。
でも、その一方で最も気持ちを押し殺していないのがカナー型とも言えます。
当事者側から見たら、扉や殻があるようには思えないのです。

怒られることが多くて、コッソリ隠した「私の気持ち」。
持っていることも忘れるほどにホコリを被ってしまってますが…。
それを表に出すのに、敷居なんてないハズなんですけどね。
本当は見せたいと思っている…だと思うんですけどね。

もしも扉や殻があると思っているのなら、それはきっと、妄想が作り出したゴーストなのではないか…と、そんなことを思うのです。

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