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Episode 655 「性格×文化=ライフハック」です。

2022年の年末の公開版「自閉文化を語る会」は、私にとってASDの表層と核心をさぐる内容として、とても意義深いものになったと感じています。

このツイートは以下のように続きます。

定型と言うマジョリティが作り上げた地域文化に対して、性質上の制約を抱えるASDがどのように社会をサバイブする方法を見つけるのか…と言う点に於いて、個人の資質や家庭環境を含む所属するコミュニティの文化的な影響は避けられないのだと思います。 
結果として、表面に現れる現象に大きな差がでる。

私はASDの核心に迫る中心に向かう方向とは逆に、ASDの多様性を探る拡散する方向の話題も必要なのだ…と、今回のスペースで感じたのです。 
そう言う意味で「自閉と文化の関係性」の話題はとても面白かったし、今後もお話して深めていきたい話題だと、感じたのです。

「ASD者が自らの視点で定型文化を語らう」と言う「自閉文化を語る会」の今回の内容は、結果として画期的な内容だったのだと思います。
今までにないから違和感もあるし、荒削りな部分もあったとは思うのですが、ここに違和感がある内は、自閉の立体視の影が消し切れていないのだろう…と、思うのです。

ハナシ(スペース)の内容は「冗談」から始まり、「皮肉」「嘘」と進む形で進行するのですが、それぞれの当事者が「冗談」「皮肉」「嘘」をどのように取り扱うのか、その考え方と方法を表現することで進行します。
その話題ひとつひとつを拾ってお話ししてもスペースの要約にしかならないので、ぜひ録音が公開されている内にお聞きいただくとして…。

象徴的だったのは「冗談」の話題です。
定型文化圏の「笑い話」のASD的な受け取り方という「インプット」に関しての話題と、その「笑い話」のASD的な表現の仕方という「アウトプット」に関する話題がセットになって進みます。
この対話の中で「笑い話」に限らず、全てのインプットに対しても、全てのアウトプットに対しても、ASD当事者が住む地域の文化的な地域特性の中から情報を受け取り、情報を発信するという「当たり前」の事実が、何で今まで脚光を浴びてこなかったのか…ということが明確になっていくのです。

私は1999年夏~2010年春まで、大阪・滋賀という関西文化圏で生活して、2010年春の人事異動で新潟へ引っ越すことになります。
この関西文化圏での10年間で培った「ボケ」がそのまま新潟で通用するワケもなく、コミュニケーション齟齬からASD的な自己完結思考の墓穴を掘ることになった過去を思い出しては、地域性という環境がASD思考に与える影響の強さを理解することになるワケです。
つまり、コミュニケーションの地域的な質の違いを見抜き、考慮することなく「私のやりかた」を押し通せば、他地域のカルチャーのゴリ押しになるワケで、「郷に入っては郷に従え」ではなくなる…ということです。

ASDの私が、自分が所属する文化圏で生活する術を如何に見つけるのか。

結果として、打率3割でも冗談やお笑いを強引に使っていく方法を選ぶ人もいれば、可能な限り避けて周囲に合わせて作り笑いを浮かべる人もいるし、全く無視して知らん顔を通そうとする人も出てくる…ということ。
その奥には、ASDの核心と言うべき「あなたと私の関係性の理解の弱さ」が共通項として見え隠れしているように思うのです。

今までのASDを取り巻く環境としては、定型側を基準点にしてASDの思考を解剖していく方向の話題や研究が多かったのだろうと思います。
定型を基準としてASD的な特異点の模索…という方向性ですよね。
一方で今回のスペースが「画期的」だったのは、ASDが定型文化から何を受け取り、定型文化をどのように見ているか…という視点がネガティブ要素を排除して語られた点です。
マジョリティたる定型文化に、ASDとしてどのように乗っかるのか。
その個人的なライフハックの手法が千差万別で、それは個性だけではなく生活地域の文化的差異にも左右される、その対応地域が限定される、そんなことが浮き彫りになったのだろう…と。

今回の公開版「自閉文化を語る会」は、「ASDとは」という中心に向かうベクトルで語られることがありませんでした。
そのことに「肩透かし」を感じた方もいるのでしょう。
でも、ASDの多様な考え方を理解する上で、とても重要なヒントに富む話題だったと、私は思います。
この方向の議論が、今後活発になっていけば…と、そんなことを思うのです。


今回の「自閉文化を語る会」は2022年12月29日にリアルタイム公開ですから、一ヵ月間として2023年1月28日あたりまでは公開されているハズ。
尚、2022年7月1日(日本時間)以降のスペースは、無期限公開に移行しているハズなのですが、その詳細についての確認が取れていないのでご注意を。

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