許すトレーニング

おはようございます、バルセロナ在住の画家川口ほたるです。

今朝、妹のような存在である友人ビルマちゃんからこんなメッセージが届きました。

「大好きな恋人と関係を続けたいけれども、許せないことがあって、どうやって許したらいいかわからない。」

まず許せないことをなんとかして許したいほど好きな相手がいるのはとても素敵なことです。ビルマちゃんはとてもとても心のきれいな、芯の強い女の子で、フェミニズムやベジタリアニズムにも自分の考えをしっかり持っているまっすぐな人間です。本能的に行き当たりばったり生きている私とタイプは違えども、心の通った間柄。そんなわけで彼女の質問に、自分なりの考察を広げてここでシェアしたいと思います。というのも、似たようなことで悩んでいる人はきっと多いと思うし、こういうことを人に相談するのってなかなか状況的に難しかったりする。だから、何となくこの記事に行き着いた何人かが少し救われたり、一人じゃないんだなっとだけでも思ってくれたらいいなと。

①自分と会話する

まずは、もやもやしている感情をジャッジメントなしで受け入れてあげましょう。肯定も否定もしない。自分に、もやもやの感情が沸き起こっているな、と冷静に見つめて、成り行きを見守ってみましょう。感情というのは面白くて、そうやって自分自身に観察されると、なんだか小さく丸まって少し扱いやすくなります。こうやってまず自分と自分の感情との間に距離を置いて、自分が支配権を握ります。「感情的」になっているときには、感情が自分を支配しているので、まずはその上下関係をひっくり返すのが大事。

次に、 感情というのは何か外的又は内的刺激に対する心の反応なので、その刺激は何だったのか考えます。例えば道で近づいてきた猫を撫でようとしたら、猫ががぶりとあなたの指をかんだと想像してください。まずきっと、あなたはびっくりして、そのあと痛みを感じたり猫の意地悪な反応にイラっとするかもしれません。その場を去っても、猫相手とはいえなんだかもやっとした気持ちが残ったとします。

この場合、刺激は猫が噛んだこと。

まず「許す」に焦点を当てた考察方法を紹介すると、これはとてもシンプルに、相手の目で状況をもう一度観察してみることです。猫になりきって考えます。

『あ、ヒトが歩いてる。なんかちょっと匂い嗅いで見よかな。でも怖いヒトもいるし注意深くな、、あっと手出してきた!びっくりしたなもう、、噛んでもうた、、なんかヒトが怒ってる?なんでかわからんけどとりあえず逃げよ!』

例えばこんな感じ(笑)。ここまでできれば猫にこれ以上恨みを持つ理由なんて全然ないですよね。

また、セルフケアの観点から言うと、もうひとつこんな考察方法もできます。

もう一度今度は自分の気持ちにズームインして状況を観察すると、猫に噛まれたこと自体というよりは、猫から自分の期待した優しさの見返り(かわいくすり寄ってくるなど)が得られなかったがっかり感なんかがそのもやもや感情の正体だったりします。

このようにして、刺激が特定できたら、その周囲の状況をつぶさに思い出して、本当の感情の根源、すなわち自分の奥底にある欲望(この場合は猫に愛情表現してほしいという気持ち)のところまでちゃんと自分に正直に白状します。

そうすると、実は、「あいつやな猫だったな」という結論では解消できない根本的な心理「誰かに愛情表現をしてほしい、またはそういう温かいやり取りがしたい」という欲求を把握することができ、じゃあそのために何ができるか。友達と会って会話をしたり、恋人や家族と会ってハグしてもらったり、そういう風に正しいセルフケアができるわけです。

このように、相手の立場に立つ考察と、自分の気持ちの根源をたどる考察を組み合わせることで、感情に振り回されたり傷つけられたりせずに冷静に自分の心を手当てしてさらに経験を学びに変えることができます。

②誰かに話す

あなたをかんでくる相手は猫ばかりではありません。また、猫のようにわかりやすく傷つけてくる相手ばかりではありません。実際人間同士の間で起きる感情というのは大抵もっとややこしくて、感情の出どころや自分の根源的な欲求の何が枯渇しているのかなどを探り出すのがとても難しかったり、そもそもそうした探求を自分一人でしたくないと思うケースが多かったりします。

そんなときは、信頼できる人やカウンセラーなどの専門家に話して、考察を手伝ってもらうというのがとても効果的です。自分一人で暗い感情の海を探検しなくて済むし、他人目線というのは強力なサーチライトのようなもので、ひとりだけだとみるのがとても難しい局面が簡単に見えたりするものです。

助けを求めるというのは、セルフケアのとても大切な仕事の一つです。

③相手と話をする

相手が猫でなく人間の場合、そしてその相手があなたにとってとても大切な人である場合はなおさら、ちゃんとその出来事について会話をしましょう。一度にお互いのもやもやを解消できなくて大丈夫。少しずつ、ゆっくり心を開いて話をする努力が大切です。相手がしたことについて、自分がどのように感じたか、どのようにしてくれたらうれしかったか、落ち着いた居心地のいい空間で、おいしいクッキーでも食べながら、正直に話しましょう。泣いたり感情があふれても大丈夫。ただし、あなたがそうして話をしたいのは、相手があなたにとってとても大切な存在だからなんだよというのをきちんと伝えてから話し始めるとより相手があなたの気持ちを受け取りやすくなります。そうでないと、ついつい人は自分の行動を正当化して守りに入ってしまい、耳にふたをしてしまいがちだからです。このように相手に対して「私は敵じゃないんだよ。」ということをまず伝えるのが大事。

前述したように、最初からうまくいかなくて全然大丈夫。一度に全部話さなくても全然大丈夫。お互いに愛情を持つ相手同士なら、やがて収まりどころが見つかるまでお互いのためにそうした話し合いの時間を作れるはずです。


「許す」というのは難しい。ひどいことをされたならなおさら。でも、「許す」というのは相手への優しさというだけではなくて、自分の心についた傷を消毒して、治癒をうながしてあげるための行為でもあるのです。そしてコツをつかめば意外と単純。トリッキーなのは、一度「よし、許そう」と決心しても、怒りや悲しみの感情は波のようにたまに戻ってくるのです。でもそれはとても自然なこと。要は、「許す」というのは一過性のアクションではなく、時間軸のある取り組みだということ。感情がもどってきたら、「ああまた来たな」くらいに思って自分の確立した【観察→刺激特定→相手目線分析と自分の欲望掘り下げ→必要であれば他人や相手との対話】という対処法で静めるというのを繰り返しましょう。

永遠に感じるかもしれない感情の揺り戻しも、次第次第に小さくなってやがて収まります。こうやって長い目で見ることは、そればっかりにとらわれずに日常生活のほかのことにも取り組める心の余裕を作る助けにもなります。


執念深いさそり座の私は、父親や恋人から受けた暴力を何年経っても思い出します。それでも、このセルフケアのやり方でたまに思い出す怒りはずいぶん小さくなったし、完全に許す見通しが立ってきています。


心のケアは焦らずじっくり。


読んでくださってありがとうございました、良い一日を!




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