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バス停のある風景:湯ヶ島温泉

湯ヶ島温泉バス停 予想に反して寂しい場所にある

湯ヶ島温泉。
東海バス。
静岡県伊豆市湯ヶ島。
2006年撮影。

伊豆箱根鉄道修善寺駅から出ている湯ヶ島温泉行のバスに乗った。
国道をそれてやや細い道を狩野川のある方へと下っていく。
周囲は民家などがあるが、温泉街はない。
ちらりと、旅館「湯本館」の看板が。
バスはさらに進む。
狩野川を渡り少し進むと老舗旅館「落合楼」の前。
だいぶ前のことだが、観月ありさ主演のドラマ「私を旅館に連れてって」のロケ地。
そこも通過していく。
名の知れた宿屋の前を通るが、温泉街は全くない。
道はさらに狭くなり、緑に覆われた川沿いの道を山の奥の方へと進んでいく。
湯ヶ島温泉は、この先に温泉街を形成しているのだろうか?
少しばかり開けた場所にぽつりぽつりと家が建つ。
全体的に山間のさびしい場所。
そこが終点「湯ヶ島温泉」だった。
終点湯ヶ島温泉、といわれてもピンとこない場所。
振り返ると、宿屋らしき建物があるにはあるが…。
その建物のわきの小さな階段を下りていくと、川沿いに共同浴場があるのだが。
てっきり何軒もの温泉宿が立ち並ぶ温泉街を形成しているのかと思っていたが、温泉街など見当たらず山の中の小さな集落とでもいった方がよいかもしれない。

そういえば、修善寺駅で湯ヶ島温泉までの乗車券を購入したら、そこに印字されていたのは湯ヶ島温泉ではなく湯ヶ島温泉世古と印字されていた。
これはどういうことかと思いながら、湯ヶ島温泉行のバスに乗った。
いずれにせよ、行先が湯ヶ島温泉になっているのだから、湯ヶ島温泉に行くに決まっている。
では、世古とは何だろう。
実はこの世古というのは、湯ヶ島温泉バス停のある場所のことで、前述した共同浴場は世古の大湯と呼ばれている。
このバスは途中に湯ヶ島駅(鉄道がとおっているわけではない)、湯ヶ島温泉口など似たような名称のバス停があるため、それを区別するために乗車券に世古の地名を入れたのだろう。

湯ヶ島温泉は、本谷川、猫越川(この二つの川が落合楼のあるところで合流し狩野川になる)沿いに宿が散在する温泉場で、宿屋が軒を並べるような温泉街ではないことをこの時初めて知った。
湯ヶ島は温泉街を形成した温泉場という勘違いをしたのは、川端康成氏が湯ヶ島温泉の「湯本館」に逗留して伊豆の踊子を執筆したという話を知って、有名な温泉場だから、きっと何軒もの温泉宿が立ち並んでいると勝手に勘違いしたのだった。
もし、そんな温泉場だったら、川端氏もそこで執筆をしなかったかもしれない。
「雪国」を執筆した越後湯沢の高半旅館も、温泉街から離れた静かな場所にある。

バス停の周囲の風景はストリートビューでご覧ください。