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【チェス】王道の古典定跡を識る-8-

さて、「シシリアン・ディフェンス」の変化について、今回で3パターン目となるわけであるが、この記事で取り上げるのは、オープンシシリアンの盤面から5手目黒e6と指すシュエヴェニンゲンバリエーションである。

シュエヴェニンゲンバリエーション

「シシリアン・ディフェンス」の変化のなかでも、その歴史が古い定跡で、黒はポーンを低い位置にかまえて5ランクのマスを牽制する。この後の手順の一例として、白Be2、黒Be7、白O-Oと続き、穏やかなオープニングとなる傾向にある。

<第1図>

近年では、古くからある定跡の研究が進み、攻撃的に指し回すケレスアタックと呼ばれる変化も見出された。ケレスアタックでは、白g4とポーンを突き、次のBg5の準備をすることで、f6のナイトに圧力を加える。こちらのケレスアタックがシュエヴェニンゲンバリエーションの主流な変化となっている。

ケレスアタック

この後は、黒h6、白h4と互いに端ファイルのポーンを突いてキングサイドを直接攻撃していく応手が続く。

<第2図>

他の攻め方としては、ドラゴンバリエーションの記事で登場したユーゴスラブアタックのような、白Be3と指すイングリッシュアタックも先進的な定跡である。

イングリッシュアタック

次に黒a6と指して、白のBb5+をかわす手に対して、白はf3と応手する。f3という一見何もない手にみえるが、この1手は明確な狙いのもと指されており、将来的にgポーンを突いてf6のナイトを攻撃することやユーゴスラブアタックでみたように、クイーンをビショップの斜線に重ねてやはりナイトを攻撃することを狙う手となっている。

<第3図>

この後の展開として、一例ではあるが、黒b5と指してc3のナイトを狙う手にたいして、予定通り白はQd2とクイーンを重ね、黒Nd7、白g4と続く。

<第4図>

「シシリアン・ディフェンス」の理念であった、白はキングサイドから、黒はクイーンサイドからそれぞれポーンストームを仕掛けるという根本的な戦術をまさに体現しているのがこの変化である。このように、イングリッシュアタッでは、互いに攻撃的な盤面となることが多い。

5手目で黒がe6とシュエヴェニンゲンバリエーションを選択した後、白は6手目で、f4と指すマタノビッチアタックと呼ばれる応手も存在する。

マタノビッチアタック

白はe5のマスを牽制しつつ、やはりgファイルのポーンを突くことによってキングサイドからのポーンストームを狙っている。黒がa6と指してビショップやナイトを牽制する手にたいして、白はさらにキングサイドに圧力をかけるために、Qf3と指す。

<第5図>

e5のマスを牽制する黒Nd7に続いて、白はf7と指し、f6のナイトを狙いながらキングサイドからの攻撃を続ける。黒h6、白h4と進行して、白のキングサイドからの強力な攻撃がなされる盤面となる。

<第6図>


今回の記事では、シュエヴェニンゲンバリエーションの変化について、ケレスアタック、イングリッシュアタック、マタノビッチアタックをみてみた。ケレスアタックが比較的穏やかに進行するのに対して、イングリッシュアタックやマタノビッチアタックは、古典定跡の研究が進むなかで出来上がってきた攻撃的な応手である。一長一短だが、定跡を丸暗記するのではなく、1手1手に込められた意図をくみ取る能力を鍛えたい。

次回からはいよいよ「シシリアン・ディフェンス」の目玉ともいえる5手目黒a6のナイドルフバリエーションについてみていく。オープンシシリアンの局面では、最も選択される可能性が高く、それゆえに変化も多い進行である。

それではまた次回で。

              ―B.―

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