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【チェス】王道の古典定跡を識る-10-

まどろっこしい前置きは抜きにして。前回の記事の続きから。
ナイドルフバリエーションの盤面からの変化を考えていました。

〇メインライン

6手目白Bg5と指すのがメインラインです。

メインライン

近年ではあまり指されない応手ですが、白の狙いとしては、リヒターラウザーアタックのように、次の黒e6を誘うことにあります。リヒターラウザーアタックの記事で述べているように、黒は放置するとダブルポーンによって構造上の問題を抱えてしまうため、e6と応手せざるをえません。

白は、f4と指して次のe5のポーンプッシュを準備します。

<第1図>

<第1図>から、7手目の黒の応手としてはさまざまな手が考えられます。具体的には、Be7、Qc7、Nbd7、b5などです。

ここではQb6と指して、b2のポーンを狙う応手をみてみましょう。b2のマスのポーンはポイズンドポーンと呼ばれ、黒はテイクすることで確かにポーンアップすることはできますが、その代わりにクイーンの可動範囲がかなり絞られてしまうことが難点です。

<第2図>

この後の進行として、白Qd2、黒Qxb2、白Rb1、黒Qa3となり、黒は結果的にはポーンアップすることができます。しかし、クイーンの動けるマスはa5のみとなっており、評価値的には互角の盤面ですが、黒は指しにくいと思います。

<第3図>

もう一例みてみましょう。一般的な応手は7手目黒Be7と指して、ピンを解除する一手です。

<第4図>

白はQf3とクイーンサイドキャスリングを準備する手に対して、黒はQc7と指し、e5のマスに圧力をかけていきます。白は予定通りキャスリングをし、黒はNbd7としてピースを展開していきます。この後は、白g4、黒b5と続き、やはり「シシリアン・ディフェンス」の理念である、白はキングサイドから、黒はクイーンサイドから攻めるという展開になります。

<第5図>

〇フィッシャーソージンアタック

6手目白Bc4と指すのがフィッシャーソージンアタックです。

フィッシャーソージンアタック

弱点であるf7のマスを直接的に狙うかなり攻撃的な白の応手になります。黒はこの強力な斜線にあるビショップを取り除きたいため、b5とポーンをプッシュしますが、白にタクティクスが存在するため、こちらは悪手です。

簡単にタクティクスの手順だけ記しておきます。

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6. … b5 7. Bb3 b4 8. Nd5 Nxe4
9. Qf3 Nc5 10. Nxb4 Nxb3 11. axb3 Ra7
12. Ndc6 Nxc6 13. Nxc6
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実際に盤面で動かしてみればわかりますが、白のナイトによってクイーンとルークのフォークがかかります。

そのため、フィッシャーソージンアタックに対する黒の一般的な応手は、e6とポーンを突いてビショップの斜線を塞ぎつつ、d5のマスを牽制する手になります。

<第6図>

白は黒のb5の攻撃を事前に防ぐため、Bb3とビショップを下げます。黒はNbd7とピースを展開し、白はf4と指して弱点のe6のポーンを狙いながらキングサイドからの攻撃を狙います。

やはりビショップの斜線が気になる黒はNc5と指して、ビショップを攻撃するという流れになります。

〇オポセンスキーバリエーション

最後にもう1変化だけみてみます。6手目白Be2と指すのがオポセンスキーバリエーションです。

オポセンスキーバリエーション

この手は、次のキングサイドキャスリングを準備しています。最も古典的な指し回しで、白が若干攻撃性を失う手でもあります。黒はe5と指して、中央の支配を取り戻そうとします。白はNb3とかわし、黒Be7、白O-O、黒O-Oと続いて、両者穏やかな盤面となります。

<第7図>

この後は、一例として以下の手順で進行し、白は黒の弱点であるdファイル、黒は白の弱点であるcファイルからそれぞれ攻撃を狙う展開になります。

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9. Be3 Be6 10. Qd2 Nbd7 11. a4
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<第8図>


今回はナイドルフバリエーションの6つの変化のうち、3つをみてみました。前回と合わせてこれで4パターンを紹介したことになります。次回の記事以降では、残りの2パターンをみた後、「シシリアン・ディフェンス」の大詰めとしてドラゴンバリエーションの進化形をみていきたいと思います。

それではまた次回の記事で。

             ―B.―

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