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激動の駒交換を制する/将棋


<実践編> "相居飛車"の中盤戦

序盤戦から勝負は中盤戦へ

前回の記事の<第11図>からの続きである。

<第1図>(前回記事の<第11図>)

いよいよ中盤戦へと突入していく。
中盤戦は激しい駒交換が多く、
盤面が活発に動くこととなる。

ここでは、駒得・駒損の考え方が重要となってくる。
駒交換の際に、以下に有利に陣形を整えるのかが、
勝負のカギを握る。

例えば、<第1図>で、
☗3四銀と歩兵を取る手は、
その後、☖同銀と銀将をタダで取られてしまい、駒損である。

<第1図>からの先手の好手は、
”合わせの歩”と呼ばれる、☗2四歩と打つ手である。

<第2図>

これで、2四のマスには、
先手は銀将と飛車の2枚の攻撃が当たっているのに対して、
後手は銀将の1枚でしか守れていない。

先手は有利な駒交換を仕掛けることが可能である。

<第3図>

一般に攻め駒と守り駒の駒交換は、
攻め駒が得と言われている。
守り駒は玉将の周りにいないと真価を発揮できないが、
攻め駒は持ち駒にすれば好きなところへ打てるからである。

相手の手を読む力

次の局面へ進めてみる。

<第3図>からは、☖2三歩の一手が重要である。
8八の角行のラインが利いているため、
2四の飛車の働きを止める必要がある。

ここで、相手の先の手を読む力が試される。
一見先手は☗3四飛と歩兵をタダで取れそうに見える。

しかし、相手の反撃を想定しておかなければならない。
☗3四飛としてしまうと、
☖8八角成→☗同銀→☖4五角
の攻めが非常に厳しい。

☗3五飛と逃げたとしても、
その後の☖2七角成で馬を作られて反撃されてしまう。

<第4図>

駒を交換すると、
自分だけでなく相手も好きなところへ駒を打てるようになる。
これは相手の手を読む上で気にするべきことであり、
反撃の手を与える可能性があるため、注意が必要である。

盤面を戻して、<第3図>である。
☖2三歩に対しては、素直に☗2八飛と戻るのが良い。
2八のマスに飛車を戻すことで、
先ほどのように角行を交換されても隙のない陣形となる。

この後は、
☖8八角成 ☗同銀 ☖4四歩 ☗7七銀 ☖4三金右 と続く。

<第5図>

後手の意外な隙をつく

先手は<第5図>から、
守りを固めるために☗5八金☗7九玉とする手も有力だが、
後手には意外な隙があった。

その手は、☗6一角と角行を敵陣の最奥に打つ一手である。

<第6図>

一例として、☖5二銀と打たれると、
角行は取られてしまうが、
☗8三銀
と飛車を狙う手に対して、
☖6一銀→☗8二銀成
と大駒を取り合う展開となる。

この後、成銀が桂馬や香車を取れるため、
先手優勢である。

このように、☗6一角には、
飛車取りの狙いが隠されていたのである。

☗6一角のほかにも、
☗5二銀
と打って、王手と金将の両取りを狙う手もある。

本譜では、
☗6一角と打つ手に対して、
後手が☖5一銀と受けた。

先ほど見た☗8三銀の飛車取りを狙う手に対して、
4二のマスを空けて飛車の逃げ道を作る手である。
また、☗5二銀の王手も防いでいる。

<第7図>

ここでも、先手の妙手が存在する。
それは、敢えて自ら大駒である角行を捨てる、
☗4三角成である。

<第8図>

当然、後手は☖同金と取る一択であるが、
2三のマスの金将の利きがなくなったことを活用して、
先手は☗2三飛成と敵陣を突破することができる。
大駒を犠牲にしての鮮やかな攻めの一手である。

後手はこうなると受け方が非常に難しくなる。
☖3二銀と打ち、2一と2三のマスを守ることはできるが、
☗2二竜
とされ、守り切ることができなくなる。

<第9図>

仕方なく後手は桂馬を3三のマスに跳ねて、
甘んじて両取りを受け入れることとなる。

さいごに

”相居飛車”の中盤戦では、
激しい駒交換が起こる展開となった。

ときには大駒を切ってまで、
敵陣を突破し、陣形を崩す戦法がみられた。

このように、
駒交換をしながら、相手の手を読むことで、
有利な展開へと持っていくことも必要である。

激動の中盤戦だったが、
対局はいよいよ終盤戦へと続く。

             ―B.―

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