橋田先生がコロナ禍をどう描くか、楽しみにしていた...。

*はじめに*

この記事では 故 橋田壽賀子先生、そして主に私の好きな「渡る世間は鬼ばかり」について、私自身の思いやエピソードを交えて書いてあります。

実は昨年、まだnoteを始めたての頃、「渡る世間は鬼ばかり」について書いたことがありました。

その時のPV数一桁、スキ1。(2021/4/6 PM12時現在)

まぁ、内容も稚拙だし。
この内容でスキをいただく方が不思議かもしれません。(笑)

今回もどのくらいの方がお読みになるかはわかりませんが。
あくまでも私自身の記録として残そうと思いました。

☆☆☆


昨日、スマホに飛び込んできたニュース速報に言葉を失った。

脚本家の橋田壽賀子先生死去。享年95歳。
仲間や、公私共に長きに渡って実の娘のように慕っていた泉ピン子さんたちに見守られて亡くなったという。
ご本人の意向で通夜・告別式は行わないそうだ。

数日前、俳優の田中邦衛さんが亡くなったこともあり、私が小さい頃から活躍されてきた偉大な方々がまた亡くなったことに、少なからずショックを受けている。

私が橋田先生の作品に初めて出会ったのは 「おしん」だった。
主人公おしんを演じた、小林綾子さんが 私と同世代ということもあったし、当時とても人気のあったドラマだったので、リアルタイムでは見られなくとも まとめて放送された時に観た記憶がある。

その後は大河ドラマ「春日局」を始め、改めて作品を振り返ると、【橋田作品】と意識せずとも、連続ドラマ/単発ドラマ含めて割と多くの作品を見てきたことに改めて気づいた。

中でも個人的にとりわけ好んで見てきたのは
「渡る世間は鬼ばかり」シリーズだ。

実は、開始当初、シリーズ序盤と、リアルタイムで観ていたのは私ではなく、母や妹だった。

「これ、面白いよ。」

そう話ながら観ている母や妹を眺めながら、当時は大学入試の受験勉強に勤しんでいたり、大学に入って以降は、友達と飲んだり、バイトやサークルで家に帰宅する時間も遅く、家族と過ごす時間も少なくなっていた。

たまに早く帰った日に、一緒に観ていた記憶はあるのだが、正直、内容はほとんど覚えていなかった。
というのも、私自身、後に再放送された時に改めてしっかりと観てわかるのだが、登場人物がとても多い。
そして、橋田作品ならではと言わしめるほどの長セリフ。
これは、生前、橋田先生ご自身もインタビューを通して語っていた。
「何かをしながら、このドラマを観る人のことを考えた」
上でのことだと言う。

リアルタイムで放送されたのはシリーズ全て通して、木曜日の夜9時から。
その時間帯というと、夕飯の片付けや、お風呂の準備など、主婦に限らず、視聴者は何かをしながら観ている。
だから、橋田先生はそんな人たちに、ラジオドラマを放送するような気持ちでセリフを書いてきた、と以前テレビのインタビューで観たことがあった。

確かに、パソコンやスマホに向かいつつ、観ていても内容は頭に入った。
というのも、昨年から夫も私もテレワークで家での時間が多くなり、二人で全シリーズ、スペシャルを幾度も観ていたのだ。

私は夫の海外転勤のために暮らしていた国で両親と妹の訃報を受けた。
その後、私は数ヶ月日本に帰国し、事務的な手続きなどに追われていた。

この数ヶ月もそうだったが、夫の任期を終え、帰国したあとも、家族が生きていた頃には見えなかった
母方の親族、父方の親族の本性が浮き彫りになっていた。

そういえば、父方の祖父が亡くなった後もそうだった。
長男で、喪主を務めた父が当時、親族の中で色々苦労したのを見ていた。

一言で言えば相続。

直系ではない親族まで出て来て、ああでもない、こうでもないとそれぞれの意見を主張する。

両親と妹の死後もそうだった。

結婚して、旧姓ではなくなったとはいえ、遺された家族、喪主は長女の私一人。

けれど、母方の親族も、父方の親族も時間が経過するにつれ、面倒な主張を言い始めた。

そして、時間が経つにつれ、母方の親族は父を、父方の親族は母を、あらゆる形で責める。

「親戚って、人数がいればいるほどウザいな。面倒くさいな...」

そんなことを思うたびに、ちょこちょこ助けられていたのが、私にとっては他でもない「渡る世間は鬼ばかり」だった。

正直に言うと、私が「渡る世間は鬼ばかり」が好きだからと言って、登場人物の誰かに共感するというわけではない。
岡倉家の五人姉妹(弥生:長山藍子さん/五月:泉ピン子さん/文子:中田喜子さん/葉子:野村真美さん/長子:藤田朋子さん) がもしも友達だったら
愚痴を聞くの面倒くさいだろうな、と思う。
五人姉妹の誰かが「聞いてくれる?」と言って実家を訪れ、生前は両親に、以降は姉妹に愚痴を言う場面なども
「甘えてるよなー」
「理解できないなー」
なんて思ってしまう。

小島家一家が営む「幸楽」にせよ、岡倉大吉(故 藤岡琢也さんと 故 宇都井健さん) ・節子(故 山岡久乃さん)が営み、
後に孫であり、長子・英作(植草克秀さん)夫妻の娘 日向子ちゃん(大谷玲凪さん)が引き継いだ 「おかくら」にせよ
もし、客として行ったとしたら、いきなり大声で現れる親戚とおぼわしき人物たちのガヤガヤで落ち着かないだろう。

そして、仮に 「幸楽」も「おかくら」も存在していたら。
「こんな店、うるさくて落ちつかない!」
「料理は美味しいけど、従業員がしゃべりすぎ!」
「いきなり神出鬼没の親戚登場があるのでおすすめしません。」
なんてコメントが食べログやぐるなび、RettyやGoogle口コミに並びそうだ。

けれど、不思議なもので、実際登場人物の誰もが近所や職場などに普通に存在しているような、そんなリアリティある世界観が面白い。

そして、「渡る世間は鬼ばかり」を好きな理由がもうひとつある。

どんなドラマでも今や普通に存在するような
「殺人」だとか「殺人事件」というものが
ドラマ内では存在しない。

嫁姑問題に留まらず、男性の育児参加だったり、女性の社会進出や、IT革命、リストラ、介護、いじめなど
世相や、普遍的な日本の社会問題をドラマ内で散りばめてきた。

けれど、殺人などといった、今ではドラマやアニメ、ゲームでも扱われるものは存在しなかった。

これは橋田先生の意志だった。

確かに、普通に生活していたら
殺人というのはニュースで報じられても、日常的なものではない。
いや、日常的になってはいけない。

そのこだわりが私は好きだった。

弥生の夫、良を演じた前田吟さんのコメントでは
新作が作られる予定だったという。

また、プロデューサーで長年共に作品を作ってきた石井ふく子さんも
「橋田さんはコロナ禍を描きたいと言っていた」
とコメントされていた。

コロナ禍の「渡る世間は鬼ばかり」。
とても、見たかった。

「幸楽」や「おかくら」は今もなお飲食店を襲っている打撃をどう切り抜けるのか。

五人姉妹を取り巻く環境はどう変化しただろう。

橋田先生の描くコロナ禍の人間模様。家族のあり方。

純粋に見たかった。

長くなりました。

読んで下さり、ありがとうございました。

橋田壽賀子先生。

沢山の作品をありがとうございました。

心よりお悔やみ申し上げます。









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