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重度身体障がい者が地方から東京で一人暮らしするときに読んだら参考になるかもしれないエトセトラ【中編】

どうも、ホッシーです。

突然ですが先日、東京に引っ越してきてから初めて代官山にある蔦屋書店に行ってきました。
代官山の蔦屋書店は2つぐらい建物がありまして、その左側の棟にデザイン系のアートブックがたくさん置いてあるのですが、ずっと欲しかったアートブックが所狭しと置いてあって、

「これがTOKYOか…!!」

と面食らいながら、絶賛シティーボーイへの道を歩んでいるところです!


さて、今回も前回に引き続きわたくしホッシーの引越し体験記を書いていきます。

今回からは割と動きがあるので、重度肢体不自由をお持ちの方にとってこのシリーズのメインとなる話をしていけたらと思います。

それでは、どうぞ!

引越し準備 ~内見編~


物件の見学


さて、物件の目処が立ったところで実際に内見に行きましょう!

今回は岡山から東京までの往復、宿泊費、現地調達、自分の体力のバジェットを考えて、多くて2〜3回の内見チャンスがあります。

前回しっかり(と当時は思っていた)下調べをして絞った物件を見に行き、その実が本当に住みやすいかどうかを確かめたいと思います。

まず最初に見に行ったのは2LDKで家賃約10万ほどの物件。


広い!!!!

そしてそんな感じの広い部屋が隣にもう1部屋!!!!


え、ここ決定じゃない??ここなら近くにマックもモスもコンビニもあるし最高じゃない??(選ぶ基準がカロリー)

と思っていたところで1つ問題が発生。

お風呂やトイレに入る扉に入れない…!!!!


なんと幅が68cm。
歩行ができる方ならスムーズでも、車椅子だとどう頑張っても入れません…

せっかく生活できるスペースがあったとしても、生命を健康に維持することが出来ない場所では住むことは出来ません。

というわけで、非常に、非常にいい物件だったのですが、こちらは見送ることにしました…


お次に見に行った物件は前回のnoteで紹介した友人であるだいちくんの家。

お家の中を見せてもらうと、この広さぐらいあると車椅子に乗りながらでも結構広々と生活できるんだなぁと発見がたくさんありました。(滞在時間は約3分!)

さてさて、部屋は良くても水周りが広くない限りは住むことが出来ません。

プライバシーに関わるので写真を撮りませんでしたが、こっそりと入り口の幅を見せてもらいました。

そしてここに来て1つ分かったことがあります。


もしかして東京の1DK〜1LDKの水周りって大体このサイズじゃない…?


そうなんです。

不動産屋さんも言っていたのですが、東京の自分が望む条件の物件で、水周りの入り口や内装が広い物件は無いとまでは言い切りませんが、ほぼ無いです。
(ちゃんと探せばあるとは思いますが、少なくとも自分が調べた範囲や巡り会えた範囲ではありませんでした。)

となるとこの辺りはなんとか他の代替案で解決して、生活の多くを占めるリビングやダイニングなどの空間の動線、周辺環境などに重きを置くのがいいのではないかと考え方をシフトすることにしました!

次の物件。


入って広々とした空間を見て

「あ、ここかもしれない」

と思いました…!

今までの物件に比べて部屋の数は限られるため、ものを置くには多少レイアウトの工夫が必要ですが、ヘルパーさんを利用しながらの生活を想定するとかなり取り回しのいい物件なんじゃないかと思います。

条件はかなり良いし、駅までのアクセスも悪くない。
水周りも他の物件とさほど変わりない(と当時は思っていた)ので…

よし、ここにしよう。

というわけで無事物件が決まりました!!

移動と宿泊について


さて、ここまで何事も無かったかのように「内見に行きましょう!」と言いましたが、重度の身体障害があるとそんなこと簡単にできるはずがありません。

後半では、そんなわたくしが県を跨いだ移動をできるようにいろんな条件を確立するまでや、移動や宿泊の際にどのような方法でやってみたのかを書いていきます。

ちなみにわたくしホッシーは、

・寝ることはもちろん、自分で起き上がって車椅子に乗れない
・トイレも全介助
・お風呂も全介助(なおかつこの当時は特殊浴槽による介助が必要だったので普通のお風呂は使えない)

という生活に必要最低限の3セットをこなせない身体の持ち主なわけです。

そんな状態で移動時間約5時間以上かかる東京に行き、さらに宿泊込みの工程をこなすのはとてもとても大変です。

正直あまり精神論で解決するのは好きでは無いのですが、今回ばかりは

「とにかく自分一人でできるところまでゴリ押しでやってみる」

と見切り発車で動いた部分も多く、あまり参考にならないかもしれませんがどこかしらにヒントがあればいいなぁと思って書いていきます。


ひとまずざっくりとやったことをまとめると、

・自分でできることやなんとかできる部分と全く出来ないことを自覚して、出来ないことを他者に頼む際にリスト化して相手に分かりやすく提示して、お互いのハードルを下げる。

・制度やサービスで利用できそうなものがないか調べる。そして実際にそれを行っている自治体や施設に相談する。

・いろんな方々に声を掛けまくって、可能な範囲でヘルプを借りられるような信頼関係を作っていく。

といったところです。


一人暮らしをしようと動き出した最初の方は、某支援団体に電話をして「障害を持った人が一人暮らしをするための方法」を聞いてみようと思ったのですが門前払いされたり、

一緒に一人暮らしを目指すチームのようなものに出会ったは良いもののなかなか条件に合わなかったりといった具合だったので、

「だったらもう一人でやるもんね!!プンスカプンスカ」

と自分で新幹線やホテルのチケットを取ろうとして無理矢理動いておりました。

が、もちろんそんな簡単に行動できるはずもなく途中で何度も頓挫していたので、移動や行動の心理的ハードルを下げるべくステップごとに分けることにしました。

まずいきなり東京まで行くということはせずに、

「近場はもちろん、大阪や福岡などにも一人で行ける」

という状態まで持っていきました。

「一人で電車や新幹線の切符を取り、スケジュールを組んで、目当ての場所まで行ってその後家に帰る」

という練習をしたのです。

・車椅子を一つのモビリティと考えた時に、目的地までどれくらいの時間で行動できるか

・どういう道を通れば地面から受ける衝撃を抑えられるか

・どのタイミングでトイレに行きたくなるか

・出先でご飯を食べるときはどういったものなら1人でスムーズに食べられるか

など自分にまつわることを一つ一つ検証してその対策を考えながら

近場のスーパー

ちょっと電車に乗って映画館

隣県の観光名所

離れた都道府県の大きな都市

といった具合に、徐々に自分一人で行える行動範囲を広げていったのです。

ここで、トイレやお風呂は1日我慢すればなんとかなるということがわかりましたが、泊まるとなると1人では出来ないことのオンパレードです。

なのでここでは家族や友人、ヘルパーさん含め

「他者に自分の介助方法を説明できるスキル」

が求められます。

ただでさえ介助は大変なことなので、自分と相手との体格差(身長差や性別差、年齢差ではない)に合わせて、それぞれに見合った比較的楽な介助方法を口頭で説明できるレベルまでノウハウを構築するのです。

例えば

・同じかそれ以上の体格なら体を直接持ち上げて介助する方法を用いる

・体格差がある場合はリフトを用いたり、依頼する内容を制限し他の代替品を使う

・介助者の既往歴を確認する(特に腰痛や呼吸器系疾患がある場合は負荷の少ない方法を考えたり、そもそも介助させない、なども考慮する)

・介助者のフィードバックは必ず聞いて改善していく

といったことを事細かに説明していくのです。
(ただどれだけ考えて説明しても、説明が足りない場面や、相手と自分の言葉の受け取り方の違いは果てしなくあるので、いろんなアプローチを考え、お互い持続的に健康を維持できるよう常にアップデートしていきましょう!)

ただこれは友人や家族と都合が合うならまだしもの話で、自分一人で県外で宿泊するとなると、ベッドに入ることも出来なくなり自分の体調管理も難しくなります。

せめてスポット的に何かヘルプを受けられるものはないかと思い、ここで初めて

「制度を使ってみよう」

と思ったのです。

ガイドヘルパーなどのように、自分が行きたい場所に同行してくださるサービスがあるので、ひとまずはダメ元で当時相談支援を依頼していた施設と自治体に「移動支援」や「ガイドヘルプ」という名目で支援を受けられないかと相談してみました。

いろいろ相談した結果以下の通りの回答が得られました。

・移動支援を支給決定して出すことはできる。

・ただ、どの団体もしくは施設でそれを受けるかは本人とその施設同士の契約になるので自治体からできることはない。したがって県外の事業所とのサービスは県外で行ってほしい。

・基本的に通院や通所を想定したものとして支給するため、自治体としても「県外への支援」というものに対してはどう支援したら良いかわからない。

とのことでした。

至極当然というか、まぁそうなりますよねという結果でした。

基本的に自治体が支給する障害者支援サービスは

「地域生活を営む上で必要な支援をする」

というものなので、旅行以外の目的で県外に行ったり、ましてや引越しをするという想定はほぼないはずです。
それにこうした支援は各自治体の人口の傾向によって事例や制度が変わってきます。


さて、この間にも物件が埋まるかもしれないという不安に駆られながら何も出来ずに日々は過ぎていきます。


こうした状況を見かねてか、前住んでいた施設のトップの方にこうした流れを相談したところ、許可を頂いてなんとたまたま新しく相談支援員になる予定だった当時のグループホームの職員さんが1回目の内見に同行して下さることになりました!!

ちなみにこちらの職員さんが正式にわたくしの相談支援員さんになってくださったおかげで、引越しの話がトントン拍子で決まっていったのです…!!感謝!!


この時ばかりは本当に運が良かったなぁと思いましたが、2回目の内見ではどうしても一人で東京に行かなければならないという事態になりました。

もうダメかもなぁと思っていた矢先に、友人から紹介してもらった

「クラウドケア」

というマッチングサービスを教えていただいて、2回目の内見時に利用してホテルでの宿泊を手伝っていただきました。

こちらのサービスは自分の行きたいところや時間、手伝って欲しいことをフォームにエントリーして、その内容に対して対応可能なヘルパーさんが名乗り出ることでマッチングできるというサービスとなっております。

今回は1泊分の自分とヘルパーさん分の宿泊費と、ヘルパー利用料とをお支払いするという形でお手伝いしていただきました!
完全実費なのでわりとお金に余裕がある場合は利用してみてください!

そしてカフェバイトで出会って「お手伝いしますよ!」と声を掛けてくださった方々に着いてきて頂いたりしながら内見をすることができました。
(皆さんその節は本当にありがとうございました…!!)


さて、ここまで方法を書きますと言いながら、最終的には

「人や環境の運が良かった」

という何の再現性も無い話で解決してしまうのはどうなのか、とこれを書きながら個人的に思っております。

ですが、その「人の運」を掴めるか否かはけっこうゴリ押ししてきた行動が功を奏している部分もあります。

引越しを考えていた当初は

「制度を上手く利用しながら引越しをしたい」

と考えておりましたが、制度だけではカバー出来ないことがあまりにも多くあるので(そもそも制度でやることでは無いと判断されるので)、それ以外の方法をいくつか考えなければならなかったのは、当時すごくハードだったなぁと思います。

ですが、振り返ってみると自分ができたことなんて本当に微々たるもので、自分のために動いてくださった他者がいたからこそできたことが多いなぁ、とありがたさを痛感しています。

一人暮らしのみならず、あまりにも前例が少ないことをしようとすると様々な場面で必ずと言っていいほど出会いますが、

「〇〇したいです!」

と声を出すと(そしてその声を出した人のマイノリティ属性が強いと)

「どう考えても無理じゃない?」

「他人に迷惑かけていることを自覚していますか?」

と言う人もいます、必ず。(わたくしもしょっちゅう出会います。)

もしかしたら8割ほどの人は言わないだけでそう思っているかもしれない。

ただそれでも言い続けたり、言い続けるだけでなくて実際に行動を起こしたりしていくと、本当に極わずかな割合で

「どこからともなく手を差し伸べてくださる方が現れたり、必要なものがスっと手に入る瞬間」

が訪れる場合があります。

そういう方々やタイミングに出会う間口を広げるためにも、自分がやってみたいことに対して周りに言い続けてみたり、ちょっとした何かから自分で行動してみるだけでかなり効果があるんじゃないかなぁと個人的には思います。
(行きたいお店の予約をしてみる、とかそういう類のこととか)

ただ、そういう運の良い割合の中に居られたことにありがたいなぁと思う反面、

「本当にこんな『運』なんていうフラジャイルな綱渡りで一人暮らしってやるべきなのか?」

とも思うので、今後同じ道を歩むであろう当事者の方に対して、もうちょっと楽になるようなサポートをしたいなぁと思っているところです。

終わりに


さて、内見という参勤交代並のイベントを終え、次からは

「賃貸契約から引越しまで」

という多くの方々にとってもハードなイベントが待ち構えております。

今度こそちゃんと参考になることが書けたら良いなぁと思いながら続きを書いているところです!

それでは、今回はこの辺で!


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