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[看護師採用サイトをつくる④]ホームページだけは過去の話 差が広がるSNS・動画活用

“ホームページだけ”の時代の終わり

ネットの採用活動がホームページだけでは対応しきれない状況になりました。つまり、ホームページに文章と写真を載せるだけでよい時代の終わりです。
今回、ホームページの話から少し脱線しますが、視野狭窄に陥らないためにもそれと隣接するSNS・動画についてもお話をしようと思います。

2020年からのコロナ禍で状況は急加速で一転。採用担当と求職者・学生が会えなくなるという想定外の事態が起きました。採用活動の主軸ともいえる学校訪問、院内説明会、合同説明会、インターンシップ参加が軒並み実施できなくなり、病院も求職者も職場や病院の雰囲気、人柄を肌で感じる機会を失いました。病棟も病棟で大変だったと思いますが、「今年は採用できないのでは」という人事担当の危機感も相当なものだったと想像します。

そこで台頭したのがYouTubeなどを使った動画による病院紹介です。病院スタッフが自前で撮影したものや、採用メディアが提供するサービスを利用した映像発信が急増しました。
以前から動画を採用活動に使った事例もありましたが、必要に迫られ一気に普及した印象です。

動画活用のパターンとヒント

リアルで会えない状況はネットで面接するというような「新しい採用」へ変化してきています。これまでは、メインは対面、動画やネットは補助的な手段だったのに対し、2020年からはリアルでやっていたことをネット上に置き換えるという動きになりました。

各病院のさまざまな取り組みはネット上で公開されています。ぜひ、YouTubeなどの動画サービスで「看護部採用」などと検索して、他院の事例をご覧になってください。

動画主な内容

  • スライドや資料を映す横で、看護部長や教育担当の師長がスピーカーとなるプレゼンテーションスタイル

  • 新人看護師に密着して、業務1日の流れを追うドキュメンタリー

  • 各病棟スタッフが案内役となり、病棟の特徴をリレー形式で説明

  • 幹部職員、他職種、専門看護師・認定看護師のロングインタビュー

  • 院内施設や設備を巡るバーチャルツアー

  • 短いカットを繋げたかっこいいコンセプトムービー

続いて、ネットを語る上では避けられないソーシャルメディア(ソーシャルネットワークサービス / SNS)についてです。動画を作ったあとには、それを告知し広める活動が必要になります。「病院のことを知ることができる動画がある」と広まる原動力のひとつとして有効なのがSNSです。動画だけでなく、採用全体の取り組みとして、SNSに取り組むべきかを考えていきましょう。

なぜSNSを検討する必要があるのか

ネットで何かを調べるときにはGoogleかYahoo!があればよいというのは過去の話で、SNSの検索機能もよく使われます。病院名をSNSで検索したときに病院や看護部のアカウントが表示されれば、SNSをきっかけとして、継続的で双方向の関係構築への可能性が開きます。ブログのような文章がなくても写真1枚でコンテンツとして成立しますし、「いいねボタン」を押せば相手に好意を伝えることもできます。発信者も読み手もアクションが容易です。

また、フォロー(購読登録)という仕組みで投稿したことを知らせることができます。加えて、過去の投稿からの一連の流れ(タイムライン)もあるので、いわばナラティブなコミュニケーションで親近感が醸成できます。看護部がSNSを始めることで、求職者は「この看護部とは価値観が近そう」といったホームページでは表現しきれない雰囲気を感じてもらえます。

これとは逆に「ここの看護部は自分の価値観と違いそう」と、求職者が共感できないナラティブに気づくこともあります。これは“嫌われた”のではなく“ミスマッチがお互いにわかった”とポジティブな反応と考えて下さい。イメージと違うとわかるのが入職前なのか、入職後なのかはとても大きな違いです。

看護部SNSのはじめかた

SNSといっても実は多種多様です。ここではすべてを紹介しきれないため、看護師採用では「LINE」か「Instagram」を検討されることをお勧めします。Instagramは20〜30歳代女性の利用率が非常に高いので看護師採用と相性がよいです。炎上のリスクを減らし、限られた人だけに届けたいということであればLINEを選択してもよいかと思いますが、病院や診療目的のアカウントとはわけた方がメリットが多いはずです。
すべてのSNSで情報発信すれば可能性は広がりますが、管理運用が生じますので、徐々に広げていくのが得策です。
SNS運用の課題とリスクから適任者を決める
SNSを始めるときには、いわゆる「炎上」を気にされる方が多いようです。「炎上」とはSNSなどで特定の個人や組織へ批判的なコメントや避難が多数発生している状態を意味するネット用語です。企業や芸能人の言動がやり玉にあがっているのがネットニュースでよく見られます。

SNSの情報発信は、知らない人たち、会ったことがない人たちに話しかけるのと同じです。ネットにおいても相手は人間ですから、相応の距離感や礼儀が欠かせません。そういった社会性や常識が重視されます。よく言われるのが「その投稿は上司や母親に見られても恥ずかしくないものですか?」という考え方です。これを聞かれてもピンと来る方がSNS担当に向いています。また、情報発信ですから交流を避ける気質よりも積極性が歓迎されます。ツールを使いこなすかは後から身につきますから、コミュニケーションのセンスや能力が問われます。

失敗しないコツ

幹部・管理者の立場にある方にぜひ知っておいていただきたいことがあります。SNSをやっている職員に看護部採用SNSの担当を任せたいお考えかもしれませんが、スタッフはSNSをやっていないように振る舞うかもしれません。余計な仕事をしたくない心理が働くからです。ある程度の責任をもたせてたいのであれば、他の業務を軽減させることとセットで委任してください。

また、残念なことに更新が止まっている看護部ブログが世に溢れています。SNSも一人任せにすると多くの場合、続きません。一人に丸投げ(SNSの全責任を負わせること)は避けてください。SNSチームを作るなどして負担が分散する体制で臨んでほしいと思います。SNSは若い人なら誰でもできると思わず、目的や計画を立てて運用してください。たとえば、採用スケジュールを見ながら2か月先までどんなネタを投稿するか予定を立てます。「日々の思いついたことを気軽に」というスタンスでは、ブログと同じ道を辿りかねません。

最後に「SNSさえやれば、動画さえ作れば人が押し寄せてくる」ということはありません。SNSは非常に大きなフィールドで、数多ある情報に埋もれるのが常です。説明会や見学会でフォローを促すポスターやトークで売り込みも忘れずにやりましょう。

何を発信するか

一般的にはその病院によって変わるものです。Twitter、Instagramなど利用するSNSでも変化します。都会のど真ん中にある基幹病院と、山間部にある単科の病院ではまったく異なる内容になるでしょう。SNSに投稿するネタで悩む担当者はたくさんいます。
ただ、看護師の採用目的としたSNSはかなり運用しやすいと思っています。専門職として共通で持っているバックグラウンドがあるのは非常に有利で、看護職としての「内輪ネタ」が通用しやすいです。いわゆる病院集患ではターゲットとなる人が多様すぎて、事務的で無味乾燥な投稿に終始してしまいます。

〈内輪ネタのヒント〉

  • 日常業務の中のあるある「”今日は落ち着いてますね”は禁句」

  • 職業病「映画やドラマの医療シーンをプロ目線で見てしまう」

  • しごとの工夫「小児科だとキャラクターグッズに敏感になる」

〈院内の日常のできごと、業務知識、採用イベントなど鉄板ネタ〉

  • ノウハウ「発熱と高体温の違い説明できますか?」

  • 最新情報「看護必要度を改めて勉強するにはこの本がいい!」

  • 院内の事件簿(ライトな内容で)

  • どんな患者・傷病を抱える人が多いか

  • 福利厚生などの制度がどのように利用されているか

  • 説明会の準備風景 / 説明会中 / 事後報告

  • 職員寮の間取り

  • 院内イベント、研修会・勉強会

  • 病院から一番近いカフェはどこ? 職員食堂のメニュー

Instagramでは「インスタ映え」の言葉の通り写真や動画の投稿が主流です。ただ、最近では写真ではなく、料理の写真と合わせてそのレシピの画像を載せたりとHow-To系のコンテンツも増えています。業務風景やスタッフの写真だけでなく、配布用の説明会資料を転用したり、ホームページのバナーのようにグラフィカルな画像で興味喚起を試みるのもよいでしょう。「写真でなくてもよい」というのは重要なポイントです。
ネットを使った情報を伝えるという点では動画もSNSもホームページも同じです。それぞれ特性や長所・短所がありますので、使い分けられれば、採用活動の大きな武器になるでしょう。

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