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病院で広報担当になるためのキャリアパス

先日、TwitterのDMでこんな質問をいただきました。

以前から医療に携わる仕事をしたいと思っており、総合病院で広報を担当したいと思うようになりました。しかし、求人サイトなどで総合病院、大学病院などの広報担当の募集は少ないようでした。病院の広報職になるのは難しいのでしょうか?また、病院や医療関係会社で広報マーケティングを担当されている方は、どのような経歴で仕事をされているのでしょうか?

DMでちゃちゃっと返信しようかと書いているうち、思いのほか長文になってしまい、DMにするのが憚られましたので、許可をいただき公開回答としました。同じようなことでお悩みの方にも参考になれば幸いです。

病院広報職の採用は狭き門

病院の数は国内に約8,000施設、さらに広報担当を専任で置いているところは限られます。増員ではなく欠員補充として応募をかけるケースがほとんどで求人市場としても小さいのです。広報活動に効果や意義が見いだせる病院も多くないことも背景にあります。

一方、専従スタッフを置かないまでも、広報活動に取り組む病院は多数あり、広報誌発行やホームページ・SNSなどの管理運用を中心とする業務に取り組んでいます。こういった場合、外部との関わりが深い地域連携や、庶務・総務、経営企画などとの兼任、部署機能の一部に収められているのが一般的かと思います。

そういった状況ですから、新卒や未経験で広報専従として入職する機会は限られています。結果的には遠回りとはなりますが、キャリアパスとして、実例をベースで2つの進路を挙げてみます。

制作・広告業界からの転職

病院は他業界の知見を取り入れたいと考える傾向が強く、その職域の経験者は即戦力として重宝される市場価値が高い人材です。制作会社での経験があり、Adobe Illustratorなどのプロユースのアプリケーションを使えるスキルがあれば、院内では配布物・掲示物などが多様ですから重宝されるでしょう。広報誌や年報の編纂では入稿・編集・取材などの経験は非常に力になると思います。

ほかにも写真撮影、動画編集、SNS慣れしているともなれば、広報の手数が増え活躍の場が広がります。ただし、医療とは関連の薄い業界からの転職で、その方面の知識量が足りなければ、院内の制作下請けポジションに陥ってしまいます。業界知識の吸収と、いかに周りの協力を得るかがポイントです。

院内他職種からのジョブチェンジ

もうひとつは、病院へ入職し、事務職などを経て広報担当になるという流れです。医療業界の特性を把握し、病院業務を経験している訳ですから、自律的に院内の情報収集、医療制度に合わせた広報プラン、各部門の役割に応じたディレクションが求められるでしょう。何といっても病院経営の勘所がわかった上で仕事ができるのが最大の強みです。

前述のような制作スキルを持つことで広報担当への道が早く開けるかもしれませんが、外部制作会社に誌面制作やホームページ制作運用を委託して、自分はディレクションをするという選択もあります。この場合、プロジェクトの調整役、舵取り役といった側面が強くなると思います。

病院広報で何を成し遂げたいのか

医療機関の広報を志す理由はさまざまかと思いますが、少なくとも華やかな仕事ではありません。もし、華やかに見える病院の広報活動があれば、その病院の広報スタッフが優秀なのでしょう。実務は何とも面倒で思い通りにならないことの連続です。

院内においても「経営企画の方針がぶれて広報のコンセプトも定まらない」とか、写真撮影を嫌う医師、原稿が遅い医療技術部門、強みを伝えたいが強みがない、ネタがないなど、苦労は多いかと思います。

また、関係先の訪問活動や渉外を広報業務と定義する病院もありますので、広報と一口に言っても「仕事の内容は病院によってさまざまである」と肝に銘じてください。どの職業・職種でも同じですが、やりたいことと任される業務にミスマッチがないかを、就職活動の各段階で確認をしていただきたいと思います。

マーケティングという考え方

病院広報は病院にベネフィット(利益)をもたらす活動でなければなりません。何をどのように社会へ情報発信すればよいかを考え抜く仕事です。前述の2つのキャリアパスでは方法論のコアとなるマーケティングを学ぶステップが登場していませんが、広報担当を名乗るには必須の知見と心得てください。

私見ながら、日本の病院に適用できるのマーケティング体系は確立されておらず、身につける最短ルートもメソッドも用意されていません。マーケティングの基礎を学び、病院業界・周辺業界の動向をキャッチアップを今日からはじめるのが、病院広報担当の第一歩となることでしょう。

病院広報・マーケティングの支援活動

すべてを記すことはできませんが、足がかりとなるところをいくつか挙げておきます。


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