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どうでもいいとか、面白いとか

どうでもいい、面白いと感じることについて。


私はどうやら人よりも色々なことがなんでもいいらしい。
犬が好きだし、猫も好き。
きのこの山が好きだし、たけのこの里が好き。
晴れた日は気持ちがいいし、雨の日は気持ちが落ち着くし、曇りの日は涼しくて過ごしやすいし、雪の日は気分が高揚するし、霧の日の視界の狭い感じも上がる。
春が好きで、夏が好きで、秋が好きで、冬が好き。
日曜日が好きで、月曜日が好きで、火曜日が好きで、水曜日が好きで、木曜日が好きで、金曜日が好きで、土曜日が好き。
食べ物はたいていなんだって美味しい。
成功すれば嬉しいし、失敗ですら後から振り返れば楽しい。

要はなんでも大体私にとっては面白いのだ。
だから大抵のことはなんでもいい。
何をやってもそれなりに面白いからだ。
私の生活には特に何も事件は起きないが、
それでも毎日がそれなりに面白い。
しかしそれには代償もあって、
何をやっても面白いという感想しか出てこないので、
他の人には気を使っていると思われてしまったり、
周囲との温度差を感じることはままある。


「面白い奴にはゲラが多い」とは現代お笑いの礎、松本人志の言葉である。
面白い人というのは同時に様々な物事から面白さを感じ取る能力に長けているはずだという理屈だ。世間のノイズに埋もれて誰もが見逃してしまうような極小さく、見えにくい面白さにも気づくことができる。
このように他の人よりも鋭敏すぎるセンサーを持っているため、誰よりも笑ってしまうというわけだ。
お笑いリテラシーが高い、と言い換えてもいいかも知れない。
面白いというのは面白くない、取るに足りない普通の状況との相対的なものでしかない。よい方向に違和感を感じたとき、人間は面白いと感じる。お笑いリテラシーの高い人たちは標準となる普通の状況というものがしっかりしているのだと思う。だからこそ些細な違和感を感じ取ることができる。実際彼らは日常生活から様々なことを感じ取る。

未読ならばハライチの岩井氏が書いたエッセイを読んでほしい。
「僕の人生には事件が起きない」
岩井氏を取り巻く状況は普通だ。
普通の場所に住んで、普通に仕事をして、普通の生活をする。
しかし、彼はそんな普通の日常で実に様々なことに気がつく。
「死の庭」という話が好きである。
庭の雑草を駆除するために塩を撒くと良いという情報を得た岩井氏は早速実行しようとする。しかし別のネットサイトで庭に塩を撒いてはいけないという記事を目にする。
塩を撒いた庭は土地が荒れて、もう二度と植物が生えられなくなってしまうというものだった。結局岩井氏は塩を撒かなかった。危うくうちの庭を「死の庭」に変えてしまうところだった、という話である。
誰にでもありそうな何気ない日常の一コマである。
しかし、なんだか面白い。
なんてことない、言い換えればつまらない日常の出来事が、「死の庭」というキーワードで括ることで一転、スペクタクルな非日常へと変貌を遂げる。
私が同じ経験をしたところでこんな話は人にするまでもなく、記憶の彼方へ追いやられてしまう、その程度の出来事である。
これがリテラシーの高さ、持ち合わせた鋭敏なセンサーの成せる技である。

常につまらなさそうにしている人がいる。
それなりに安定した地位を手に入れながら、
仕事がつまらない、テレビがつまらない、面白いと思える趣味もない。
生きてて楽しいの?
と問えばおそらく全然、と返ってくるのだと思う。
不毛なのでそんなことは敢えて訊いたりはしないが。

小さい頃は楽しいことは大人が用意してくれたり、友達が用意してくれたり。
何もしなくても楽しいことが向こうから向かって来てくれるような感覚があった。
しかし、勝手に転がり込んでくる楽しみはいずれ底を尽く。
それは金や資源が無限ではないように。
つまらなそうにしている人たち。
私には彼らが、尽きかけの楽しみが天から降ってくるのを不貞腐れながら寝っ転がって待っているようにしか見えない。
これを怠惰と言わず何と言おうか。
働かないで金が手に入るのか。
ある日庭から石油が湧いて出るのか。
答えは否、自明である。

面白さというのはあくまで主観である。
絶対的な面白さというものは存在しない。
あくまで自分の判断、内面的な基準に基づいている。
金や資源の捻出と面白さの捻出が決定的に違うのがここだと思う。
要は自分の心の持ち様でいくらでも湧いてくるのが楽しさではないか。
それなら、いつだって楽しく生きたいものだ。


今、私が考えていることは、自分の感じている面白み、笑いどころを如何に押し付けがましくなく、理屈っぽくなく人に伝えられるかということである。
そういう意味で、この文章は最悪だ。
もっと自然に自分の面白いと思える対象を他人と共有できるようになりたい。
まあ、これは今後の課題とさせて戴きますということで、
今回はこの辺で終わらせていただきます。


終わり。



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