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エッセイ的な記事

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2020年12月の記事一覧

水を飲む

その日はどうも疲れ切っていた。  理不尽に怒られた。  水の量を間違えて不味いご飯が炊けた。  大皿を落として割った。  作った麻婆豆腐は洗剤の味がした。 こんな日は早く寝るに限る。 いつも通り、寝る前にコップ一杯の水を飲もうとした。 その瞬間、ふと手が止まり、驚愕した。 コップに並々注がれていたのは水ではなく洗剤だったのである。 そう、私は全く無意識でコップに洗剤を注いでいた。 もし、もしもである。 気づかずに飲んでしまっていたとしたら。 私は死んで

そこは夢の跡

とあるスナックについての思い出。 駅前に、文字通り傾いたスナックがあった。 その名もスナック 「ドリーム」。 桃色文字の黄色い看板には蔓性の雑草が巻き付き、入り口のビニール屋根はくすんで破れて、傾きかけたコンクリの建物はもやはり蔓が巻き付いていた。 実家から駅までは遠く、また自転車で通える距離の学校に通っていたので駅を利用する機会は決して多くはなかったが、両親が運転する車の窓から覗くこの異様な店は子供心にも妙に惹かれるものがあった。なんとなく、両親にここについて尋ねるのは

夜の簾について

夜の簾は部屋の中を隠してくれないという話。 から簾の目隠し効果の話に脱線。 夏の日の夜、アイスを買いにコンビニまで行った。 すぐに戻るので電気を付けっぱなしにしていたのだが、帰ってみるとカーテン代わりの簾は役割を果たしておらず、部屋の中が丸見えだった。 どうやら夜の簾が目隠しとして機能しないことは常識であるようだ。 夏でも夜はカーテンを締めろのこと。 では何故、夜の簾は機能しないのか。 ふんわりと定性的ではあるが科学的な整合性はありそうな説明を考えてみたので説明してみる

苺ましまろは俺の頭をおかしくさせるヘロインなんだ。

海外掲示板のとある記述についての話。 「苺ましまろ」というアニメに対する海外の反応である。 https://cough.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/encore2-9896.html 苺ましまろは俺の頭をおかしくするヘロインなんだ。 ばらスィーのアートスタイルに近い当初のキャラクターデザインの方が好きだとしても これを見ることは最高の幸福だ。美羽の妄想ファンタジーには爆笑した。 特に伸恵が。わおーん、わおーん!(笑)折笠富美子のエンディ

人格の憑依 百合の思考を辿って

とある百合カップリングに関する記事が、読めば誰でも簡単に百合オタの視点と思考を辿れる構成になっていて好き。という話。 とあるpixiv百科事典の記事を読んだ時のこと。 pixiv百科事典はイラスト共有サービスpixivの公式インターネット百科事典である。主として漫画、アニメ、二次創作、同人活動といった内容を扱っており、pixiv会員ならばだれでも自由に書き込むことができる。 その記事というのは「ラブライブ!サンシャイン!」から、Aqoursの幼馴染コンビ、高海千歌と渡辺

「通うんだからね」という文章から想像されうる性別について

――タイトルの文章について、誰の声で再生されただろうか。 表現の明快さは時代によって変化するという話。 谷崎潤一郎の「文章読本」を読んだ。昭和9年に発行された、文章の書き方、読み方の指南書である。かの小林秀雄、川端康成といった文豪にも支持された名著である。どうでもいいが私は最も好きな小説として谷崎の「春琴抄」をよく挙げる。 さて、以下は「文章読本」からの引用である。登場人物の言葉遣いに関する記述である。 『おそらく皆さんは「通うんだからね」と書いてあれば男の声を想像し、

「日替わり定食」という言葉について

「日替わり定食」という言葉に矛盾を感じたが、実際には何も矛盾はしていなかったという話。 最近の昼食が毎日、セブンイレブンの「蒙古タンメンのカップ麺」と「モンスター」の組み合わせに落ち着いていることに気づいたので、これに「ジャンク定食」と名付けた。その時にふと思ったのが「日替わり定食」という言葉、矛盾してはいないかということである。 私は漠然と「定食=決まった料理の組み合わせ」だと思っていた。例えばコロッケ定食ならば「ごはん、みそ汁、コロッケ、千切りキャベツ、たくあん」の定