細田成嗣
1989年生まれ。ライター/音楽批評。2013年より執筆活動を開始。編著に『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(カンパニー社、2021年)。2018年より国分寺M'sにて「ポスト・インプロヴィゼーションの地平を探る」と題したイベント・シリーズを企画/開催。
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松丸契と彼の「幽霊」たちに関する断想——「SOUND & CITY Presents Playing with Ghosts: Kei Matsumaru」について
極めて魅力的なコンセプトがあったとして、当然といえば当然だが、それを具現化した際に魅力的な音楽になるか否かはまた別の話である。受け手側にとっては、あらかじめ把握したコンセプトを単に確認するために聴くことほど退屈な聴取もないだろう。優れた作品や表現であるなら、多くの場合、具現化された響きを実際に体験することで何がしか新たな気づきが得られるものである。それは言語化された概念からは漏れ落ちていた種々さまざまな知覚情報かもしれないし、制作者でさえ意図していなかった別のコンセプトが浮
音源の発掘/再発を考えることは過去の歴史と向き合うことのみならず、同時代の音楽を未来にどう受け継ぐかを考えることでもある
毎年さまざまな音源の発掘/再発が行われている。けれど世の中ではどうやら好事家のためのマニアックなアイテムと思われている節があるようだ。そんなことを考えながらカンパニー社の『日めくりジャズ366 2024年版』を捲っていたら、「評論家やファンはジャズの本質をすべてレコードで評価しようとしている。アメリカを回りクラブギグのみで歴史本を書くのは不可能に近いがレコードだけで歴史を勝手に作るのはやめてもらいたい」というホレス・タプスコットの主張が目に留まった。もっともである。わたした