【四目垣よつめがき】 (泉鏡花文学ことば図鑑『春昼』)

”「ああ、お爺さん。」
と低い四目垣へ一足寄ると、ゆっくりと腰をのして、背後へよいとこさと反るように伸びた。”
泉鏡花『春昼』より

竹で編んだ垣根の一種。
丸竹を四つ目に組むシンプルな垣根で透き間が大きい。

鏡花文学の登場人物は芝居の台詞のような名調子で話すことが多い。
同様にその仕草が細やかに目に浮かぶ文章でもある。
まるで役者が演じている姿を見るようだ。
その理由のひとつには舞台セットのように配置された小道具や、家屋の建具の扱いがさらりと書かれていることにあると思われる。

他の作品では『歌行燈』の門附(かどづけ=流しの芸人)がうどん屋に入る所作について、
”仄(ほん)のりと、薄赤い、其処の板障子をすらりと開けた。”
とある。
いかにも浮世絵か歌舞伎の舞台を見るような和の情緒がある。

こういった明治時代などの日本家屋を覗く楽しさがあるので随時とり上げていきます。

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