「管理組合設立総会」って、なんやねん。

 うちのマンションの管理者に指定されているマンション管理業者から、「第1期臨時(管理組合設立)総会延期のお知らせ」なる紙が届いたんだけど、いろいろ思うところがあったので、メモ書き程度に書き出してみる。


 まず、私は従前からことあるごとに述べているように、「管理組合」という用語は、「マンション管理の適正化の推進に関する法律(以下、「適正化法」)」第2条3号に規定されているとおり、「マンションの管理を行う区分所有法第三条若しくは第六十五条に規定する団体又は区分所有法第四十七条第一項(区分所有法第六十六条において準用する場合を含む。)に規定する法人をいう。」とされており、「建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」)第3条では、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し」とあることから、マンションの区分所有者は、当然に、管理組合を構成していることになるのだから、現在の法令上、「管理組合の設立」という表現を用いることは果たして適切なのだろうか?と、常々疑問を抱いているわけです(これが実務上の慣行ということであれば、はあ、そうですか、という話なんですけどね)。

 
 ちなみに、国土交通省が公表している「マンション標準管理規約(単棟型)」においても、「第6条 区分所有者は、区分所有法第3条に定める建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体として、第1条に定める目的を達成するため、区分所有者全員をもって○○マンション管理組合(以下「管理組合」という。)を構成する。」とあって、ここでもやっぱり、区分所有者は当然に管理組合を構成する、という書きぶりになっている。


 でもまあ、管理組合設立総会、なんて表現は、実務上も定着しているのだろうし、その方が一般の購入者にとってわかりやすいだろう、というのは理解できるので、この辺は気になるけどぶっちゃけどうでもいい。


 区分所有法が施行される前のマンションにおいては、管理組合自体の存在が認識されていなかったり、あったとしても形骸化したりしていたので、「管理組合を設立」という表現はおそらくその頃の名残を引き摺っているのではないか、というのが私の考え。


 それはともかく、この設立総会なるものがコロナの影響で延期されるのは理解できるとしても、この紙面には、「適正化法に基づき、マンションの工事完了から1年以内に管理組合を設立する必要があることから」などと書かれており、はて、そんな規定ありましたっけ?なんてしばらく条文とにらめっこしていたんですけど、少なくとも適正化法自体にはそんな規定はない。
 

 適正化法で「マンションの工事完了」について言及しているのは、72条で、「マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約(新たに建設されたマンションの当該建設工事の完了の日から国土交通省令で定める期間を経過する日までの間に契約期間が満了するものを除く。以下「管理受託契約」という。)を締結しようとするとき(次項に規定するときを除く。)は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等に対し、管理業務主任者をして、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるもの(以下「重要事項」という。)について説明をさせなければならない。」とあって、前半部分の国土交通省令というのが、「マンション管理の適正化の推進に関する法律施行規則(以下、「施行規則」)」なんだけど、その82条に、「法第72条第1項の国土交通省令で定める期間は、一年とする。」とあり、要するにここでは、「新たに建設されたマンションの当該建設工事の完了の日から1年を経過する日までの間に契約期間が満了する契約以外の委託契約を結ぶ場合には」、マンション管理業者は管理業務主任者に、しかるべき説明をさせなければなりませんよ、ということを規定している。
 

 つまり、「工事完了から1年以内に管理組合を設立しなければならない」なんて書いてないわけです。
 

 じゃあ、「工事完了から1年以内に管理組合を設立しなければならない」なんて、どこに書いてあるんだ、という話だけども、これは二通りの読み方があると思っており、まず、①区分所有法34条2項で、「管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない」とされていることから、マンションの原始規約において管理者に指定されている大手デべ関連会社の管理業者が、便宜、工事完了から1年以内に引渡しがなされることも踏まえて、適宜その時期に総会を開催することにしている、という実務上の考え方。もう一つが、②上記の適正化法及び同施行規則において、「新たに建設されたマンションの当該建設工事の完了の日から1年を経過する日までの間に契約期間が満了する契約以外の委託契約を結ぶ場合には、マンション管理業者はしかるべく説明会を開催しなければならない」ということとの関係で、通常は長期にわたりマンションの管理業務を担う管理業者が原始規約で定められているのだが、契約期間の満了が1年以内なので、工事完了から1年以内に総会を開いて、その中で管理会社の委託契約についても改めて承認を受けるのが妥当、だとする実務上の考え方。この①と②の考え方を総合した結果が、「工事完了から1年以内に管理組合を設立しなければならない」という表現になっているのかな、と。
 

 で、開催の延期について。
 

 うちの管理者は、国際展示場(東京ビッグサイト)を集会の開催場所に指定しているのだけど、そもそも区分所有者は、規約または集会の決議により、電磁的方法によって議決権を行使することができるとされており(区分所有法39条3項)、集会に出席せずに、電子メールの送信やWEBサイトへの書込み等の電磁的方法を用いて議決権を行使することができるので、書面や電磁的方法による事前の議決権行使方法を認めておけば、WEB会議システムを用いた総会の開催も可能だとされている(以上、法務省HP及び公益財団法人マンション管理センターのHPを参照)。マンションができて最初の総会であったとしても、区分所有法上の「集会」には違いないのだから、わざわざみんなで集まらなくても、WEB会議システム等を使えばやれるんじゃね?と思ったりもします(この辺は要検討事項です)。
 

 もっとも、区分所有者が、単に傍聴をするのではなく、WEB会議システム等を用いて集会に出席し、議決権を行使することを認めることについては、第三者が区分所有者になりす ました場合や大規模障害等による通信手段の不具合が発生した場合等の対応についても検討しなければならなくなるので、その点は現在行われているような会社法上の株主総会の方法が参考になるものと思われる。

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