#LIVE 対決の日が来た

なんて思いながら
今日は朝から忙しい。

結婚式の準備みたいに
朝からなんだか
時間がない。

声出しする暇もなく
頑張ってねと
送り出される。

応援してくれて
ありがとう。

例年通りの会場。
例年通りのメンバー。

それに加えて
一見無愛想な彼が
会場に到着していた。

また私はびっくりした。

PAを1人でやってる?
どこからどこまで彼は
音楽をできるの?

PAに挨拶に行く名目で
彼に挨拶をしに行った。

明るくて話しやすい私で
ちゃんと目を見て
今日は宜しくお願いします!と
言ったら

彼はうん。とだけ言った。

楽器を演奏している時の
無邪気で楽しそうな彼とは
大違いだ。

椅子が空いてたので
敢えて隣に座った。

不思議そうにする事もなく
声をかけてくる事もなく
ただ隣に座っていた。

彼に
コーヒー買ってきてくれる?
と言われた。

PAはリハでも本番でも
始まったら席を立てない。

だからちょうど良かったんだろうと
行ってあげることにした。

私は
青いやつでしょ?良いよ。
と言った。

そしたら彼は
目を見開いてこう言った。

なんで言ってないのに
青いやつだって
わかったの?と聞いてきた。

私は知っていることが
恥ずかしくって
笑顔だけ返して
席を立って買いに行った、

練習の時一回だけ
飲んでたコーヒーが
青い缶だったから。それだけ。

そういえば横に置いてた
たばこも1本しか
箱に入ってなかった。

私は青い缶のコーヒーは
自販機で売っているのだけど

taspoを持っていないので
向かいのコンビニにまで
たばこも買いに行った。

先程の席に戻ろうとすると
彼女さんが彼に話しかけていた。

ペットボトルの水を差し出して
いっぱいになった灰皿を
片付けていて

彼は水に手をつけず
ありがとうとだけ言っていた。

私は悪いことは
していないのだけれど
戻るのを躊躇していた。

けれど
彼女さんは席に座らず
どこかに行ったので
その隙に渡しに行った。

なんだか早く戻りたくて
もう買い物したら用済みだろうと
コーヒーだけ渡したら

彼が座らないの?と
聞いてきた。

あ、と言って
良いのかなと思いながら
私は座った。

彼女さんはこっちをみて
目が合ったような気がするけど
もう違う方を向いていた。

コーヒーの横にある水は
一切減ることなく
ただそこにあった。

彼はすぐにコーヒーを飲み
たばこの箱に手をかけたけれど
さっきの最後の一本は
もう吸ってしまっていたようだ。

席を外せないから
どうしようというのが
顔でわかった。

私は満遍の笑みで
マルボロが入った
袋を差し出した。

彼はまた目を見開いて
なんでわかったの?と
笑顔で言ってきた。

私はまた恥ずかしくて
もう顔を見れなくなった。

嬉しくて
胸が熱くなった。

タバコを吸って
コーヒーを飲みながら
ステージを見つめる彼の
横にただ座っているだけ。

私は
次にいつ会えるか
わからない不安だけが
ずっと頭の中をぐるぐるしていた。

そうしているうちに
彼はリハだと言って
ミスターと
ヘビーローテーションはまだなのに
また立って行った。

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