#LIVE 明るくて

あの、好きです。

忘れやしない。

夜が限界を迎えて
少しだけ空が眩しかった。

雪は降ってなくて晴れている
けれど
道路は凍っていて
明日になりきれないトワイライトは
道路をツヤツヤと光らせていた。

誰もいない大きな国道。
凍っている道路をガリガリと歩く
2人の大きな足音は
私たちが無言になってしまったことを
教えてくれた。

私は
彼女がいるからごめんねと
決まっている返事を
青ざめながら
凍えている全身で待っていた。

すると

どうしてお酒を飲んでる時に
みんな好きだって言うんだろうね。

立ち止まって
少し怒ったように彼が言った。
続けて

音楽やってるとさ
みーんな好きだって言ってくれるよ。
音楽やってるからなのかわからないけど。
でも絶対いつでもお酒が付いてくる。

少し時間が止まってしまった。
気づくと私たちは
横断歩道の真ん中にいて
向こうの信号が赤になろうとしていた。

車も人もいない
赤になっても少しくらい平気なのに
私は急がないとというふりをして
彼の手を握って
向こう側まで走ってしまった。

手は離されるのだろうか。
告白の答えより怖かった。
握っているか握っていないかの
スレスレで彼の手を掴んでいた。

きっとこの手を離したら
彼の答えと一緒に
今日が終わってしまう。

どうにかなりそうな
寂しさと切なさは
私の手をどんどん冷たくした。

すると彼は
私の指先の方に手を移して
こう言った。

だって明るくて話しやすいから
好きだって言われたって
嬉しくないでしょ。

だから
飲んでる時に言われても
嬉しくない。

音楽とお酒ってセットだよね。
明るくて話しやすいも
セットでしょ?
だから嫌なわけじゃないんだけど
納得いく?


んーわからない。

私は本当にわからなかった。

でしょ。
よし、手温かくなったね。
さ、帰ろう。

彼の
前から決まってたような
1秒も考える隙を与えない
流れるセリフは
なんだか正しかった。

私は
明るくて話しやすい私は
いつからこうなったのか
これは演技なのか
彼は私がそうじゃないと思ってるのか?

ずーっとそれを考えながら
家の方向に歩いていた。

手は温かくなっていて
ずっと彼に握られていたことに
気付いた頃には
歩いて私の家に着いていた。

今日は偶然か必然か家には誰も居ない。
だから私は迷わず
繋いだ手をそのまま離さないで
家の中に入ろうとした。

玄関を開けて中に入り
彼も靴を脱ごうとした

すると彼の携帯電話の着信が
大きく鳴り響いた。

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