ドイツ観劇記vol.1 Dorian

こちらでドイツの鑑賞記録をまとめていきます。
ジャンルを縛らずパフォーマンス・音楽・演劇・オペラなど舞台表現の全てを書いていきます。

記憶をたどりながら。

Dorian

Datum a:2023年10月15日(日)
Datum b:2024年11月9日(水)

Wo: Düsseldorfer Schauspielhaus

Regie: Robert Wilson
Mit: Christian Friedel 

シアターオリンピック以来、衝撃を受け続けいたRobert Wilsonの作品を鑑賞。
今回はChristian Friedelによる一人芝居を観劇。

by Darryl Pinckney and Robert Wilson, based on motives by Oscar Wilde
ドリアン・グレイの肖像 や 幸福な王子、サロメで有名なあのOscar Wilde が原作なのはよくわかります。

この作品もまた美術的な美しさ、照明の美しさと言う、現代美術の系譜すらも感じ取ることができる、まさに「総合芸術」たる作品である。

非常に詩的な言葉たちが投げかけられるのだが、その舞台美術、光の妙、音響効果、映像効果、なにより名優Christian Friedelの演技力、その全てが、我々が内在的に抱えている、恐怖・差別・比較・消費の全てを暴いているように感じた。

人類が追求すべき本質的な自由を、個人というミクロな存在から炙り出しているこの作品は、あまりにも多くの問題を抱える地球人類にとって必見の作品としかいえない。演劇業界や美術業界、という括りに関係なく、全人類が見るべき作品である。しかも、これは、足を運ぶことに意味がある。

舞台空間を使うと言うこと、それはあまりにもものを多くすればいいわけでもない、空間を背景で埋め尽くせばいいわけではない。
その空間は私たちの脳みそなのだ。
脳みそとは宇宙であり、際限がない。
どこに終わりがあるかもわからない。
舞台空間はまさにその空間である。そのことを思い出させてくれるし、そうだったと改めさせられる。

ドリアンは何が苦しんでいるのか。
はっきりと明言されるわけではない。いつだって彼は俯瞰して世界を見て、自分を見ている。だからこそ、とても冷たく、現実を突きつけてくれる。

演出に関してはもう無駄がなさすぎる。少しのミスも許されていないのに、余白しかない。

必見。


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