ドキュメンタリー番組出演にまつわるこぼれ話 その2
※これは番組放送前に書いた内容を、放送後に公開したものです。ご了承ください。
テレビが町にやってくる!
という話題で、今年の夏は大変にぎやかでした。楽しかったな、あの頃。
それからちょっと時間が経って、9月の半ば。ホントに日本からやってきたディレクター。
「外でワイワイお酒飲めるのっていいですねー!」
と、笑顔で話す姿が印象的でした。
ちょうど、その時期の日本ではコロナの感染拡大による営業時間の短縮や自粛ムードで、気軽に飲みに行く機会なんてほとんどなかったようで。
その点で言えば、深センやうちのお店は通常営業。こちらの日常はあちらの非日常なのか。そんなギャップを感じたことを覚えています。
それから共同経営者である中国旦那リャンくんもお店にやってきて、またたく間に意気投合。
ほんわかさっくりとした事前に知らされていた取材内容に、ここにきて衝撃の変化球が投げ込まれました。
「国際結婚の夫婦の日常も取材したいです」
「え、いやです」
うっかり即答しちゃった!
もしくは声に出さなくても心の中では断定していた。その辺はっきり覚えてません。
というのも「バーをメインに撮影する予定」を了承していたから。それならいいよ。バーの宣伝にもなるし、深センで暮らす日本人の様子を日本に向けて発信するのは興味深いだろうし、「テレビなんてすごい!」って田舎の家族や友達も喜んでくれるだろうから。
バーがメインだと聞いてOKと返事をしたのに、蓋を開けてみたら我が家の日常を撮りたいという。
ハンバーグを作りたいから材料を揃えてくださいと言われて、ハンバーグを作るんだなと予想していたのに、やっぱりピザにしましょうと言われた気分。ハンバーグの材料はピザのトッピングに使えばいいじゃないですか、みたいな。
なんか話が違うなあ。
夫婦の日常くらいいいじゃない、と思う方もいるかもしれません。
しかし、ここまで触れなかったのですが、我が家はずっと崩壊寸前なんですよ。お恥ずかしいことに、結婚してからの11ヶ月間のうち10ヶ月はポンコツ関係で、あっちもこっちもガタガタです。
「自宅も取材させてください」
「もっといやです」
このあたりきっぱり断りましたが、結局自宅でも取材に応じました。
だけど、インタビューされてる時間は辛くて、最後はこらえきれなくなってボロボロ泣き出してしまい。もう撮影やめてください、ってお願いしましたけど、あれも放送されるのかな。リアルな実態、みたいなものかな。
バーの宣伝も深センで生活する日本人も、日本まで届いたらいいなと思ったけど、どうやってもうまくいかなくてもがきあがいてる夫婦の実態を発信したいわけがない。見たい視聴者はいるかもしれないけど、私は大事な人たちに見せたくない。
ふっくら美味しいハンバーグができたらいいなと一緒にお料理しようとワクワクしていたのに、目の前にさしだされたのはコゲたしょぼいピザ。なんだこれ。
取材を受けたのは自己責任だし、周りからどんな風に見られても全く気にしないくらいメンタル強いよ。いいんだよ。いいんだけどさ。
だけど、「遠く離れた知らない土地に嫁いで、幸せに暮らしていてよかったな」って思ってるかもしれない家族や友達が、切り取って編集してつないだワンシーンを見て、悲しい気持ちにならないといいな。
遠く離れた知らない土地でも、元気で明るく暮らしてる私を見て欲しかったから、「バーをメインに撮影する予定」を了承したのにな。
人は人の見たいようにしか見ないし、聞きたいようにしか聞かない。
だから私もきっと、無意識に都合の良いように取材内容を解釈していたんだろう。
テレビが来ることになってよかったな、テレビってすごいな。そう思った夏の時から何もかもが変わってしまいました。
今になって心に浮かぶ声、やっぱりテレビなんか嫌いだ。大嫌い。