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アジア現地採用インタビュー 【マレーシアでITエンジニアになる編】

好評連載中のアジア現地採用インタビューシリーズ!

今回はマレーシア・クアラルンプール在住のてるさんにロングインタビューを依頼しました。

日本での経験、マレーシアで見つけた全く新しい生活、そして今後の目標について。

現地採用はキャリア形成しにくい、と言われることがあります。

確かに勤続年数が長くなれば役職があがることも、現地スタッフから管理職にステップアップすることもほとんどないです。

所属先での自分のポジションが変わらないなら、新たな場所を見つけてそこに到達するまで努力を重ねればいいだけのこと。

てるさんのお話を聞きながらそんなことを感じました。

※追記てるさんの生い立ちから現在に至るプロフィールはこちらからどうぞ。

コンビニ行くノリでマレーシアで働き始めたら

「英語ゼロ、貯金ゼロ。なのにマレーシアで仕事見つけて暮らせるの?」

ボンビーガールのマレーシアでの特集でそんな情報を見かけて、「いやいや無理でしょ、仕事するなら英語力とか必要でしょ」と内心ツッコミながらも、ウェブ検索で求人情報を探してみました。

そしたら、海外就職が未経験で英語ゼロでも応募できる求人がホントにあって。
「海外で働くとか、実現したらなんかかっこいい」そんなノリでサクッとコールセンターの求人に応募。履歴書を英語に翻訳したものを転職エージェントに送ると、2日後に人事からメールが来て、その日のうちに2回の電話面接がありました。

なんとその2時間後に採用決定の連絡が。
びっくりしましたけど、そのノリできちゃいました。それが1年半くらいの前のことです。

・なぜ応募しようと思ったのか
・過去にどのような仕事をしていたのか
・これからどんなキャリアを築きたいと思っているのか
・これまでの仕事で重要視していたこと

電話面接ではこんなことを主に質問されました。
応募~採用までの流れは非常に早かったのですが、会社からの質問が結構多く、しっかりと面接された印象でした。

「ちょっと海外で働いてみたいからです!」みたいな軽いノリで回答できると思っていたのに、電話口の温度差を感じ取って、いきなり真面目モードに切り替えて回答した記憶があります。笑

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それからのマレーシアで過ごした時間は、人生の休息期間だったというか。
日本でのハードワークや忙しい生活ですり減っていた心がだんだん回復して、今ではすっかり満タンになって心のゆとりが生まれました。

そうすると次のステップを考える余裕ができて、会社勤めじゃないフリーランスで、プログラミングスキルを使った仕事をするITエンジニアを目指そうと決めました。
忙しくて時間ないし未経験だし、と足踏みしていた目標に向かって、勉強の日々を過ごしています。

平日夜や休日、自由に使えるまとまった時間を趣味やスキルアップのために自己投資できるのも、マレーシアに来たからこそ得られた時間のゆとりです。

余白なく走り続けて消耗するだけの日本での生活のままだったら、フリーランスになろうとか未経験だけどプログラミングやってみたいとか、考えもしなかったと思います。
海外転職をして世界が大きく変わりました。

生活のために仕事をしながら、将来のために時間やお金を自己投資できる。

この両方をバランスよく保てて、時間にも精神的にも余裕ある暮らしができていることが本当に尊いし、幸せだと感じてます。

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日本での仕事

マレーシアに来る前の、日本での経験をふりかえるとけっこう長くなります。

最初に就職したのは18歳。
実家が貧しかったのと、「大学なんていっても何も身に付かない、行くだけお金の無駄」と家族に言われていたので、そういうもんかなと思って進学せずに就職することにしました。

高卒で医療機器の営業職を3年やりました。医療業界なら安定してそう、営業職なら人として成長できるかも。そんな気持ちで選んだ仕事でした。

でもある日、ふと思ったんです。ずっとファッションが好きだったのに、なんで医療機器の営業をやっているんだろう。

「ファッション関係のかっこいい仕事がしたい」

そう思って仕事を辞めて、東京のファッションデザインの専門学校に2年間通いました。奨学金を借りて通ったので、今でもその奨学金を返済しています。

2年間勉強して、卒業するときには気分はすでにデザイナーでした。でも現実は全然違ってて。
学校の掲示板で求人情報を見ていると、とにかく給料が安い。東京ではギリギリ暮らせない給料の低さに、デザイナー気分から現実に引き戻されました。

専門学校卒業後は派遣会社に登録して、IT企業のコールセンターで何社か派遣社員をやりました。
でもやっぱり、デザインとか、何かを作るかっこいい仕事がやりたかったのでチャンスは常に探していました。

いくつかの企業に派遣されて、派遣先のひとつでクリエイティブ事業のスタッフを募集を見かけて。

派遣での経験のうち、関連しそうな職務経験を取り出して実務経験があることをアピール、派遣社員からクリエイティブ事業の正社員になれました。

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IT企業の広告代理店で、スマホゲームの広告をデザインして配信するクリエイティブディレクターという仕事です。

念願のクリエイティブな仕事に続いて、毎日毎日クライアントとの打ち合わせや広告デザインの依頼などをこなしました。

クリエイティブディレクターの仕事は、クライアントのニーズを聞き出して、スマホゲームのアプリのダウンロードを促す効果的な広告を展開すること。

広告のデザインはもちろん、広告の媒体もテレビを始めYouTubeやSNSなど、どの媒体でどんなふうに広告を展開すればいいのか、広告のターゲットや獲得、導入時期などもじっくり検討します。

広告の動画やバナーの作成は、やればやるほど正解がわからなくなるというか、どうやってロジックを組み立てるのが難しいというか。

時間をかけて、緻密に作り込んで、「この広告いける!」と思って展開するとアプリのダウンロード数の伸び率がいまいちだったり、逆に「コレがウケるの?」という広告がヒットしたり。

広告は人の商品を売る仕事であり、当時の広告予算はとても大きいものでした。だけど、クオリティが高ければいいというわけではないし、こうやれば必ずうまくいくという必勝法というか、ロジックがないように感じて、悩みまくってました。

頭の中ではごちゃごちゃ悩んでいても、とにかく仕事をこなして、3年続けました。

ある日、新しい広告プロジェクトを任せられたんですが、これまでにない大規模な予算とスケールの大きさで、一気にプレッシャーを感じてしまって。
自分の中で、なにかがポキッと折れてしまった感覚がありました。

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そこで休職の手続きを取って、すぐに休んでくださいと会社からの知らせ。それから家でずっと寝てました。

1~2ヶ月はほとんど動けなくて寝ているだけ。すると、少しずつ回復してくるのがわかって。
3~4ヶ月経つと、何もしてないな、何かしたいな、という気持ちがふつふつと湧いてきました。

そんな時に当時の同僚からメッセージが届いて、「ボンビーガールっていうテレビ番組で、マレーシアで働く女性の特集があるらしいよ」とのこと。

マレーシアか。海外で働くってなんかかっこいいな。
でもきっと、すごくお金がかかるだろうし、英語も上手くないといけないだろうし、難しいんだろうな。

同僚からのメッセージを見た時はそんなこと思い浮かべましたが、テレビをつけて番組を見ているうちに先入観だったことがわかりました。

ボンビーガールで特集している女性は、英語力ゼロ・貯金ゼロでマレーシアで働き始めて、自由で快適な南国での生活を満喫している。

英語も貯金もなくても、海外で働けるんだ。それってなんかかっこいい。

そう思って早速ネットでマレーシアの求人情報を検索しました。未経験でも応募可能で英語能力不問の仕事を。

検索でヒットした求人情報に応募すると、電話面接2回を経て同じ日に採用通知が。
このスピード感、日本じゃありえないですよね。

僕は専門学校卒ですが、マレーシアの場合、専門学校卒は5年以上の実務経験、高卒は10年以上の実務経験があれば就労ビザは申請できます。
大卒なら実務経験がなくてもいいみたいです。

こうして3年続けたクリエイティブディレクターの仕事を辞めて、マレーシアに行きました。

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マレーシアでの大きな変化

マレーシアでの1年半の生活で変わったなと感じることは、ストレスが溜まりにくい体質になったこと。

突然やってきて働き始めた頃は慣れない環境で緊張してたけど、だんだんと周りが見えるようになってくると、肩の力が抜けて楽になりました。

日本にいた頃とは全く違う世界が見えるようになって、勝手に築き上げた価値観が壊れていくような感覚を覚えました。

固定概念や同調圧力がなくなり、自分は自由なんだと心から感じます。

心が折れて病休をとって退職、それからマレーシアに来て勤務時間以外の時間がまるまる自由に使えるようになって、心がゆっくりと回復していきました。

そして、生活にも慣れてすっかり元気になった頃、次は何をしようかと考えるようになりました。

そして始めたのがプログラミングと英語の勉強。
この2つを習得して、次はフロントエンドエンジニアとしての仕事をやってみたいと思うようになりました。

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日本にいた頃からITエンジニアの仕事には憧れていたんですが、忙しくて勉強する余裕が全然なかったんです。
マレーシア生活が1年経った頃、そろそろなにかやろうという気持ちが湧いてきたところで、プログラミングの勉強をするためにネットで情報収集を始めました。

TwitterなどのSNSを中心に、どの勉強方法がいいか比較検討して、数十万円もするプログラミングスクールは高くて無理だし、日本で合宿コースなんかは仕事休んで行けないし。
というわけで見つけた「Menta」というWebサービスで勉強を始めることに決めました。
これはオンラインでメンター(師匠みたいな人)を探して、月額1万円で無期限でメンターに教わることができるサービスです。

「Menta」で学んで7ヶ月くらいですが、だいぶいい感じにかっこいい作品が作れるようになりました。もうすぐポートフォリオを作成しようかなってワクワクしてます。

それから英語の勉強。
マレーシアで1年も仕事も生活もできてるのになんで今さら、って感じですが。(笑)

ぶっちゃけ現地の女の子とデートしたいと思ったからです!

目標達成のために、こんなことを短期間で猛特訓しました。

・声をかけるフレーズ、質問するフレーズ、女の子を褒めるフレーズを暇さえあれば検索して調べる
・ノートに書いて声に出して覚える
・お会計で自分が出すときのセリフや帰り際のキザなフレーズも忘れずに覚える

そしてめでたく!
マッチングアプリで知り合った女の子と実際に会うことに!
めちゃめちゃ嬉しかったんですが、そこで新たな課題を発見しました。

それは、自分から質問することはできるけど、相手の返答の意味がわからないこと。
単語の意味、リスニング力、文法による微妙なニュアンスが全然分からない。
英語能力が決定的に不足していることを改めて感じました。

会話には慣れてるけど、基礎固めが足りないと思って「スタディサプリ」という英語学習サービスで基礎からやり直しています。

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プログラミングと英語の勉強を始めた当初は、フリーランスのITエンジニアになって、オンラインで仕事をしながらアジアの国々を巡るノマドワーカーになろうと考えていました。

でも最近は、タイで日本人フロントエンドエンジニア募集という求人情報をネットで見かけて、タイで働くのもいいなという選択肢も出てきました。
会社勤めはいい経験値になるし、退勤後に副業でフリーランスの仕事をしてもいいし。

時間と心に十分なゆとりができると、住みたい国もやりたい仕事も自由に選べるようになるし、物事を柔軟に考えれば考えられるようになりました。

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はじめての海外転職をやってみたい人へ

行ったらどうなるかもわからないのに、いきなりマレーシアに行ってよくわからない経歴が残るのが嫌だとか、コールセンターは絶対やめたほうがいいとか、そんなことを言う人もいます。

でもそれって、自分次第でどうにでもなること。

コールセンターでも専門性をアピールすることができるし、未経験でも英語ができなくても、日本人というだけで海外で働けるなんて、ものすごくラッキーなチャンスじゃないですか。

日本での生きづらさから離れてみると、周りの目や、どうでもいい意見に振り回されることなく、自分が本当にやりたいことを見つめられるようになります。

行きたいけど勇気が出ない人は、コンビニに行くノリで海外転職してみてください。全く違った世界が見えてきますから。


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