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クリエイティブになるには、3種の読書を1000日続けよ | きのう、なに読んだ?

このツイート見てから10日くらい、毎日このこと考えているので、いったん書き出してみます。

レイ・ブラッドべリ:クリエイティブになるには

ツイートにはレイ・ブラッドベリ(「華氏451度」著者)の講演の一部を切り出した動画がついています。聞きながらざっと訳をつけてみました。

【動画の粗訳】

とにかく様々な分野のものをまずインプットしないといけない。シンプルな方法を教えましょう。

これから1000日間、毎晩、まず短い物語を1つ読む。せいぜい10分か15分です。次に詩を1つ読む。歴史を通じて素晴らしいとされているもの、古典を読んでください。シェイクスピアを、アレキサンダー・ポープを読んでください。ロバート・フロストを読んでください。短編を1つ、詩を一つ。

あとは、論考を1つ読んでください。分野は幅広く、考古学、動物学、生物学。歴史に名を残す哲学者を読んで、比べてみる。オルダス・ハクスリー、ローレン・アイズリーなど偉大な人類学者の書いたもの。あらゆる分野の論考を読むんです。政治学、文学批評。

1000日間、毎日、物語1つ、詩を1つ、論考を1つ、頭に詰め込むんです。1000日後には、すごいですよ、いろんなアイディア、いろんなメタファー、そしてあなた自身が人生をどう見るか。あなた個人の経験とともに蓄積される。これで間違いなくクリエイティブになれます。

つまりクリエイティブになるには、フィクション、詩歌、ノンフィクションと、偏らずに幅広く良質な作品を大量にインプットせよ、ということ。

この動画を見てから、「毎日、物語1つ、詩を1つ、論考を1つ」を実践したいなあ、どういう仕組みなら私でもできるかなあ、と何となく考え続けているんですよね。物語は短編集かな。詩は日本だったら短歌や俳句も範疇に入りそう。論考は、古典とされるものは論理構成を学ぶ意味とその分野の出自を知る意味で大事で、加えて現代の研究者が一般向けにまとめたものを見て最新の研究や議論にも触れたいな。ブラッドベリは寝る前に、と言ってるけど、朝でもよさそう…。

ちょっと話がそれますが、ブラッドベリがessay と言っているのは、文脈を踏まえて「論考」と訳しました。英語のessayは、日本でいうエッセイ(随筆)を指す場合もあるのですが、小論文とか論考を意味することもよくあるんですよね。

読むジャンルの多様性

話を戻して、ツイートで流れてきたこの短い動画のことをずっと考えてしまう理由は、自分の「インプット不足」感に響くものがあるからです。「たくさん本を読んでますね」と言っていただくことがあるのですが、全然足りてない感覚なんですよね。この「足りなさ」を量で補おうとしがちなんですが、時間制約があって難しい。「古典を読むべき」というのも、周りの尊敬する識者を見るとおっしゃるとおりなんですが、どうもしっくり来ない。そこでブラッドベリはインプットの「ジャンルの多様性」を確保せよ、と言っています。フィクション、詩、ノンフィクションという異なるジャンルをシステマチックに網羅せよ、と。

私の感じている「インプット不足」は量というよりも質であり、質においても古典という時間軸の長さというよりもジャンルの多様性という幅であった、ということです。

中でも「詩を読め」という指摘にはぐっと来ました。

この動画は2001年2月22日に Point Loma Nazarene University’s Writer’s Symposium By the Sea というシンポジウムの基調講演から切り出したようです。小説家志望の若手向けと思われます。

基調講演のポイントをまとめた上記の記事によると、ブラッドベリは講演の中で「良い短編にはメタファーがある」と言っています。詩を読むように勧めているのも、詩こそまさにメタファーの芸術だからなのでしょう。私はフィクションを書くつもりは全くありませんが、ビジネスにおいても適切なメタファーや豊かな表現力は不可欠ですし、短編や詩を日々読めば人生が豊かになりそうですよね。

創造性、大量の読書、教養

もう1つ、冒頭のツイートの動画を見て気づいたことがあります。クリエイティブになるにはインプットを大量にせよとブラッドベリは言っています。一方、昨今のクリエイティブや創造性を高めるにという議論は、デザイン思考、システム思考など、アウトプットの方法論が多くを占めています。加えて心理的安全性やオフィスデザインといった有形無形の環境づくりも、創造性に直結するものとして議論されています。しかし創造性を高めるためにインプットを大量にシステマチックにせよ、という議論はあまりきいたことがありません。

他方で、ここ数年「ビジネスパーソンが身につけるべき教養」がブームっぽい感じです。「教養」に関する書籍や記事を見ると、教養を身につけるべき理由として、個人の人格形成にとって重要である、正解がない時代に判断をするよりどころになる、はたまた欧米エリートと互角に渡り合うための知識、などが挙がっています。興味深いことに、ブラッドベリが勧めているものは「教養」そのものですよね。しかしここ数年の「教養は大事」の論調において、創造性との関係を指摘したものは、あまり多くないのではないでしょうか。

内なる声に耳を傾けるための読書

さらに、動画の最後にブラッドベリーが「あなた自身が人生をどう見るか。あなた個人の経験とともに蓄積される」とさらっと言っているところにも、私は注目しました。経験を蓄積し、経験から学び、自分が大切にしたいことに自覚的になっていくと、人格が成熟し自律的に生きやすくなります。それには経験を振り返り(リフレクション)、内省し、感じたことや考えたことを言葉にしていくことが欠かせません。周りに強いられる「あるべき論」に押し込められてしまいがちな、自分の主観、内なる声に耳を傾けよう、ということで、私もよくそのようにお伝えしています。しかし、これだけでは視野の狭い経験主義に陥るリスクがあると、薄々感じていました。感じていましたが、こうした内省とか精神性を重んじる人々に「本を読んで学ぶ」ことを勧めるのを躊躇する気持ちもありました。人によっては読んだものを「あるべき論」と捉えて内なる声を覆い隠してしまうかもしれない、と恐れていたからだと思います。

1、2冊しか読まなければ、それを「あるべき論」と捉えてしまう可能性はあります。しかし、ブラッドベリが言うように多様な本を大量にインプットすれば、「あるべき論」となるような唯一の正解は存在しないことがわかり、自分の内なる声を外に出すための語彙やメタファーが蓄積されるのですよね。視野の狭い経験主義に陥らずに自分の内面を把握するには、幅広いジャンルのインプットを大量にシステマチックにすることだ、と整理ができました。

まとめ:創造性にはまず読書

まとめると、創造性を高めるには、アウトプットの方法(デザイン思考など)や環境整備(心理的安全性など)の前に、「教養」にあたる多様なジャンルの読書を大量にする必要があるんじゃないか、ということです。大量のインプットと自分の経験が結びつき、内なる声として蓄積される。蓄積があって、はじめて環境やアウトプット方法が本当に意味を持つのでしょう。

ちなみにでブラッドベリはこの講演の他の部分で「毎週1本、短編小説を書こう」というアドバイスもしています。インプットも大量に、そしてアウトプットも大量に、ということなんですね。

わずが2分足らずの動画から、半ば無意識に多くのものを感じ取っていたために、見てからずっと忘れられずにいたようです。このnote を書いてみて、多少は言葉にアウトプットでき、自分の考えていたことが見えてきました。

今日は、以上です。ごきげんよう。

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