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「やりたい仕事」をした会社員に立ちはだかった3つの壁

やりたい仕事をやってみた

最近読んで気になった記事に、若手の企業選択の理由が「やりたい仕事ができる」と記したアンケートがありました(図1)。

企業選択ポイント

図1. 21年新卒の企業選択のポイント(参考文献)

いつの時代も、やりたいことを仕事にしたい若者は多いものですね。

やりたい仕事があるというのは素晴らしいことです。

しかし、やりたいことを仕事にすると起きる心境の変化に関して、元野球選手のイチローが思いを語った動画があります。

つまるところ、責任や結果を求められるため好きな仕事が楽しめなくなる、というものです。

このフレーズは、やりたい仕事をするときに必ず語られるフレーズですから、知っている方は多いかと思います。

私も会社員として働いていると、結果を出す責任を負うことがありますからこの話には同意できます。

しかし「責任を問われなければ楽しいのか」というと、そうではないと思っているのです。

多くの場合、やりたいと思って入った会社だとしても、業務内容が自分の興味や能力と完全一致することはありません。

かくいう私も「これ以上やりたい仕事ができる会社はない!」と確信して入社しましたが、実際の業務では、

やりたい仕事: 4割
なんとも思わない仕事: 3割
やりたくない仕事: 3割

といった内訳でした。

この比率は、プロジェクトの進行や突発的な課題発生でよく変動します。

時には、やりたくない仕事9割といった時期が長いこと到来します。

長いことこんなことが続くと「こんなはずでは….」と悩むこともありました。

この時は、じっとしていても問題は解決しないと思い、どうにかやりたい仕事を社内できるようにできないか、とかなり考えを巡らせていました。

そこで思い至ったのが「じゃあ自分でやりたい仕事を提案すればいいんじゃないか?」というものでした。

今回は、私がやりたい仕事を提案してやっていく中で経験した会社員だからぶつかる3つの壁と、乗り越え方をお話しさせてください。


一つ目の壁: 上司ブロック

最初から最大の壁です。

上司に自分の思いついた仕事を提案してみたんですね。

しかし

「それって意味あるの?」

とそっけなくあしらわれてしまいました。

多くの人はここで心が折れて、仕事人として与えられた業務に集中していきます。

1~2年程度経てばやりたい仕事の比率が増える可能性があるわけですから、これも正しい一つの戦略です。

しかし、私はどうしても9割がやりたくない仕事という状態が耐えられませんでした。

そこで、直接上司に相談するのではなく、何人か同僚に相談してから上司に相談するやり方に方向転換しました。

同僚から提案の問題点を指摘してもらって修正することで、現実に起きている課題の解決という「現場からの声」に切り替えて、それを上司に提案することにしたのです。

「現場からこういった課題が複数出てきています」

同僚と相談した内容や、時にはその上司本人が言っていた会社の課題を例に出して、それを自分が解決するという図式に持って行ったんですね。

上司の立場からすれば、私から最初に提案された仕事(やりたい仕事)は、私ひとりが勝手によくわからない問題を提起しているだけにしか見えないのです。

「本当にそうなのか?」
「適当なことを言っているのではないか?」

と上司は疑ってしまうわけです。

そこで、みんなの力を借りて「やりたい仕事」と「プロジェクトの課題」のすり合わせを行ったわけです。

ありていな言葉でいえば「根回し」です。

根回しと言うと、日本の会社が抱える問題として挙げられるネガティブなフレーズに感じられると思いますが、このときの私が思っていたのは、

「上司の立場や任せることに不安になる気持ちにも配慮しなければならない」

という、日常生活で誰もが友達や家族に対してやっている当たり前の気遣いを仕事でやっているだけでした。

しかし、これで納得してくれる上司はかなり器が大きいです。

上司によっては、部下の提案を聞くだけの「時間」「能力」「お金」の余裕がないため、どれだけ真剣に話をしてもOKを出してくれないことが起こります。

頑張って職場の課題と、やりたい仕事をすり合わせてもダメだったときは、悲しすぎて転職の2文字が頭をかすめました。

しかし、やはり9割がやりたくない仕事という現状に耐えられなかった私は、協力してくれる他の上司を探しました。

幸運にも協力してくれた上司が何人かいたため、どうにか前に進めることができました。

ここで「最初から他の上司に相談した方が良かったのではないか?」と思われる方もいるかと思います。

しかし、直属の上司を飛ばして他の上司に相談するのは、2つの理由から得策ではありません。

1. 管理職視点(全体を俯瞰した視点)の課題抽出ができていないため、他の上司も却下する可能性が高い。
2. 直属の上司たる自分に相談なく話を他に持って行った!と直属の上司に思われる。

「1」は、同期に指摘された点、直属の上司が”却下した点”の改善方法を盛り込んで、他の上司との相談に臨むことを意味しています。

直属の上司が却下した点は、同僚と相談して炙り出したプロジェクトが持つ課題とは異なり、全体を俯瞰できる管理職だから見えた課題の可能性が高いためです。

ここまでできると、同僚が心配する現場視点と上司の心配する管理職視点の改善策を盛り込んだため、やりたい仕事として発案した頃と比べ、実現性の高い案「解決しなければならない課題」にグレードアップしていました。

グレードアップした案で真剣に課題を解決する必要があると伝えれば、ひとりくらい背中を押してくれる上司がいるものです。

では「2」はどうでしょうか。

ここでも上司側の心境を考えてください。

直属の上司をすっとばすと

「そんな提案、俺は何も聞いていないぞ」
「あいつは独断で行動するやばい奴だ」

と、よほど器の広い上司なければ不満に思います。

たとえ確実に却下するタイプの上司だとしても、この段階を踏むことで一度相談したという事実があるため比較的気持ちを抑えてもらえます。

次のステップで他の上司に協力を得られれば、直属の上司を一緒に説得してもらうこともできますから、勝手に行動する奴だと思われにくい特典もあります。

これも根回しと呼ばれるものですが、当時はそんなことは考えておらず「直属の上司が納得してくれないから、他の協力者を探そう」くらいに考えていました。

結果的にやったことは根回しなわけですが、自分としては「解決しなければならない課題」をどうにかして解こうと必死でした。


二つ目の壁: 予算

二つ目の壁はお金です。

「やりたい仕事」から「解決しなければならない課題」にフェーズが移ると、実際にやる場合の問題として予算をどうするのかという議論に移ります。

「予算はどうするんだ」
「無い袖は振れないからな」

くらいのことは当たり前に言われました。

最悪の場合は

「失敗したらどう責任をとるんだ」

と言われるケースもありえましたが、幸いにも言われることはありませんでした。

しかし、大体のケースで予算がないことなんてありえません。

実はこの手のことを上司が言う理由として、相談した上司が想定される額のお金を使う権限を持っていないことがあります。

管理職といっても役職によって自分の一存で許可できる金額が違うため、自分の権限外のことまでやらせることができない、という事情があるため案に否定的なことを言うのです。

そういうときは

「提案したものは少々金額が大きいため、失敗した時のリスクはあります。ですので、私から○○部長を含めた人たちに一度説明させていただけないでしょうか」

と言うと、解決しました。

より大きな権限を持つ上司に話を自分から持って行くことで「失敗した時は私の責任」と周りが思うようにしたのです。

「必要な仕事は皆さんにアドバイスをもらいながら私が進めます」と言い含めることも、私が提案した仕事によって他の社員の面倒ごとが増えるのではないか、と心配する人たちが安堵してくれて効果的です。

どちらかといえば真に問題なのは「本当に会社やプロジェクトにお金がない」というケースです。

その時は、そのプロジェクトや会社は相当ヤバイです。

現場の課題を解決する案としてブラッシュアップした改善案にお金を用意できないわけですから、お金が無くて消滅しそうなプロジェクト、もしくはそもそも問題を解決する気が無いことを意味します。
※投資家や国プロなど、お金を持っている外部を頼る方法もありますが、ここまで来ると「3」で述べる問題が勃発します。


三つ目の壁: やっているうちに嫌になる

三つ目の壁ですが、もはや本人の気持ちの問題です。

上司ブロックと予算の問題に揉まれるうちに、嫌になってくるんですね。

予算の承認、現場の課題を理解してくれない上司、その板挟みの末に心身ともにヘトヘトです。

これだけやったとしても、周りの意見に揉まれる毎に徐々に自分のやりたい仕事と違う方向に捻じ曲げられることも起こります。

最期にとどめの一撃のように、本当に会社にお金がなく許可してもらえないこともありえます。

ここまで来ると、嫌になって二度と自ら提案などせずに黙って与えられた仕事をこなす仕事人になりたくなります。


終わりに

いかがでしたでしょうか。

順番にやったことをまとめますと、

1. 「やりたい仕事」を上司に提案した。

2. 同僚や上司と相談して、その会社やプロジェクトが持つ課題とやりたい仕事のすり合わせを行い「解決すべき課題」としてアップグレードした。

3. 具体的な解決方法を実行可能なレベルに落とし込み提案した。

4. 予算との兼ね合いを図り、上司達をプレゼンで説得した。

のようになります。

責任があろうがなかろうが、やりたい仕事をするのも大変だな....と思えませんか?

正直、若手社員がここまでやっても許可が下りないのであれば「プロジェクトの問題」もしくは「会社の問題」です。

そして、自ら考えて行動したという実績を携えて、部署移動か転職した方が良いです。

異動や転職するときに、成功体験や失敗経験として十分にアピールできる行動量ですから、その点でも良い経験ができたと胸を張れます。

「この人はやる気がある」
「同僚や上司との調整ができてコミュニケーション能力が高い」
「うちの会社の問題を解決してくれそう」

と思われて、欲しい人材に見えてくれるでしょう。

これから就職や転職する方々が、やりたいことをできることを祈っております。


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