【ライブレポート】2021/11/27 Lyric Jack presents 開花宣言Vol.1@下北沢Garage
Lyric Jack初となる自主企画「開花宣言Vol.1」にお邪魔してきた。今年のCDJに初出演を果たす藍色アポロ、そしてEggsのランキングでも上位に顔を出す注目株のペルシカリアという2組をゲストに迎えた下北沢GARAGEでのライブを、Lyric Jackを中心に簡潔に振り返りたい。
ペルシカリア
埼玉発の4ピースロックバンド。事前になんの情報も仕入れておらず、今日が自分にとっては初コンタクトとなる。小バコイベントでのトップバッターだと動員が厳しいことも日常茶飯事だが、ライブ前には彼ら目当てだと思われる観客たちの姿もあり、注目度の高さを感じさせる。
そして先ほど4ピースと書いたが、バンドのプロフなどを確認すると現状の正規メンバーは矢口結生(Vo/Gt)のみで、他のベース、ギター、ドラムはサポートらしい。
ひとりずつステージに出てセッティングし、ライブスタート。まず印象的だったのは少年性を帯びた矢口のボーカルだ。とても聴きやすいその歌声は、声が枯れるほどの絶唱に切り替わることもあり、一筋縄ではいかない魅力を持つ。
また、サポートギターのフルギヤによるプレイも強烈で、「“THE”ギターバンド」感を一手に引き受けるレベルのパフォーマンス。音に加えて体全体での表現も積極的。左手の運指も実に鮮やかだ。そんな個性の強いギターサウンドと矢口の歌声のコンビネーションが面白い。
よしはらこーが(Ba)も、サポートとは思えないほどの熱気でプレイし、最後の曲を演奏し終えた瞬間ベースを叩きつけるほどライブに入り込んでいた。
ギターとベース、そしてドラムも、サポートメンバーという立場ながら全力でもって燃え尽きるようなライブをしてしまう、それがペルシカリア、そしてフロントマン・矢口の持つパワーなのかもしれない。
個人的には埼玉のバンドというだけでもう推してしまいたいくらい。今日の出会いを機に、チェックしていこうと思う。
1.最初の晩餐
2.外苑西通り
3.離愁
4.ラブラドール
5.声
6.煙ビデオカメラ
7.さよならロングヘアー
8.愛情完済日
藍色アポロ
2番手は藍色アポロ。彼らのライブを観るのは一年ぶりくらいなのだが、当時と比べてバンドが進化したような印象を受けた。
トータルで激しいアクションもあり、GARAGEならではの鮮やかな照明も活かした魅せるステージングは、大きいステージも視野に入れているかのようだ。
ペルシカリアに負けず劣らず、観客たちは手を上げて盛り上がる。今日はどれかひとつのバンドに偏ることなく、それぞれのバンドのファンが集い、盛り上がる景色が広がっていたという意味でも、いい企画だったのではないだろうか。
記念すべき第1回の企画に呼んでくれたことについてLyric Jackへの感謝を述べるナガイレン(Vo/Gt)。彼は過去にツーマンも行ったLyric Jackとの思い出も語りつつ、ライバルとしてこれからもバチバチやっていくと語る。
バンドマンらしい熱いメッセージの後には、「音楽を通して希望や勇気を与えたい、そんな役割を果たしたい、背中を押したいと思っている」というMCから、その思いを投影したという「ペダル」を披露。熱のこもった歌と演奏だけでなく、みゃん(Gt)が観客に向けて手拍子を誘ったり、派手なステージアクションを繰り出したりしてフロアの濃度を上げていく。
ラストに演奏したのは2000年代の邦楽ロックテイストを色濃く反映させた「限界高速」。タイトル通り、まさに駆け抜けるようなスピードで歌い切ると「時間余ったんでもう一回やります」と再び「限界高速」を投下し、抜群の瞬発力と見せつけ、濃密なラストスパートでもって自らのステージを完遂した。
1.カゲロウ37℃
2.mind
3.shinto-arts
4.色褪せる
5.young boy to you
6.ペダル
7.限界高速
8.限界高速
Lyric Jack
トリを飾るのはもちろん、企画主であるLyric Jack。転換中、しっかりと時間をかけてセッティングを行い、ライブスタート。
オープニングに歌ったのは「愛 my side」。森口楽絃(Vo/Gt)によるアコースティックギターの柔らかい音と旭くにこ(Gt)のエレキギター音がうまく絡み合い、耳心地のいい時間を演出する。
「恋の跡」で森口はギターをエレキに持ち替え、1曲目は前菜とばかりにギアを上げてライブは加速。前田梨沙(Ba)はノリ良く体を動かしエア熱唱。えだはるか(Dr)は彼女のチャームポイントともいえる、弾ける笑顔でこれでもかと楽しそうにドラムを叩く。
女子3人によるコーラスも映える一曲だ。
「恋の跡」が終わるもドラムが途絶えることなく、そのまま「train to rain」へ。ちびっこで可愛らしいビジュアルが揃うLyric Jackの中で、少し異質なアフロヘアの旭はパッと見で目立つ存在。しかしその見た目とは真逆のクールなプレイもまた異質。アフロ=陽気でファンキーという固定概念をぶち壊すキャラクターだ。
涼しい顔でのギターソロもビシっとキメる旭に痺れてしまう。
青い照明に包まれる中で披露した「ティーンエイジポップ」はドラムの疾走感、そして旭のカッティングギターが心地よく響く。HAPPYな気分を運んでくれるようなリズム隊によるコーラスワークには思わず笑顔がこぼれてしまう。
「あくたもくた」では、出だしのギターを森口がミスってしまい、森口とえだが笑い合いながらアイコンタクトする場面も。まだライブは前半ながら、そんな瞬間からも彼らが充実のステージを味わえていることが伝わってくる。
リズム隊による《ららら》のコーラスと対になる旭のギターも素晴らしい。また、低音パートから高音へジャンプする森口のボーカルもキラリと光る。
「一人が寂しくて、みなさんの夜にお邪魔してます。ならせめてその夜が素晴らしいものになるように、まるで星が降るような素敵な夜になるように、そんな曲を一曲」という曲紹介とともに演奏された「星降る夜に」では、汗をかきつつ熱唱する森口と、渋い“歌声”を聴かせる旭のギターとの対比が印象的だった。
本編最後となったのは「パノラマグライダー」。スナップの利いた、しなやかな旭の右手が個人的な見どころのひとつでもあるが、何といってもここは森口が歌うサビだ。
《彼方まで届け》
《悲しみを掻き消す》
《光り方を知っている》
《最前線響けこの歌よ》
《君の隣で》
飛び立つようなメロディに乗ったこの歌詞がフロアに響くと、半分近い観客が手を上げて反応する。Lyric Jackにとって今の代表曲と言っていいこの曲で、GARAGEの熱量がグッと上昇するのを肌で感じる、そんな瞬間だった。
リリースから約3ヵ月経つが、まだまだ育っていく曲だと思うので、これからもっともっと多くの人に届いてほしい。
本編を終え、一度ステージから去っていったメンバーだが、アンコールを求める手拍子に応えて再びステージに。
「自主企画初めてだからアンコールもらったことなくて嬉しい!」とえだが思わず本音を漏らす。なんという初々しさだろうか。
そんなピュアな彼女たちだが、アンコールで披露した「夜明けの詩」は荒々しいベースで始まる一曲。ステージ前方に出てフロアを煽る前田、そして旭も同じくギターソロで観客にアピールする。
最後の曲を熱唱する森口は、曲中に「最高の夜をありがとう!」と叫び、えだは額に髪を張り付けながらの熱いドラミングを炸裂させる。
「もうあとには引けない!」「これから走り出していく、開花していく僕らと一緒に夢を見てほしい!」
森口はある種の決意を帯びたメッセージをフロアに届け、Lyric Jack初となる自主企画は幕を閉じた。
1.愛 my side
2.恋の跡
3.train to rain
4.ティーンエイジポップ
5.あくたもくた
6.星降る夜に
7.恋はアナログ
8.パノラマグライダー
EN.
9.夜明けの詩
記念すべき初の自主企画。ライブでの課題もまだまだたくさんあると思うが、それでもまずは第一歩を踏み出すことができたLyric Jack。スタジオで、そしてライブハウスでスキルや曲をどんどん育てていって、バンドそのものも大きくなっていくことを期待したい。
終演後、各バンドそれぞれに物販ブースがにぎわっていて、それはとても素敵な光景だった。対バンライブの醍醐味も感じられた「開花宣言」、Vol.2の開催も楽しみに待ちたい。