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読書記録とフェミニズム批評について/『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』北村紗衣著

わたしの中の「なんかちがう」を明確に意識させた1冊について。

本書は英米文学(それも映画や舞台など多岐にわたる作品)のなかの「男性と女性の関係」「女性の考え方、扱われ方」について歴史的背景・文化などを絡めながら、軽妙な文体で解説したエッセイです。
著者が感じたありのままをベースにしながら、その考え方を裏付ける論理、および文献などを紹介する一冊。

フェミニズムについて無知だった

この本を読む直接のきっかけは、学問バーKisiさんでの出会いです。
フェミニズムを専門に研究している方にオススメしてもらいました。
もちろんわたしも「フェミニズム」について考えたことはありました。
でも正直なところ、(その当時は)どうとらえたらいいのか分からず……。
女性の扱いが低いのは当たり前なの? それはちょっと嫌なんだけど。
そんなふうに、なんだかモヤモヤしながらページをめくっていきました。
筆者の切れ味鋭い批評、コミカルなワードセンスに圧倒されながら、息つく暇もなく読み切って思ったのは「わたしが今まで社会に抱いてきた違和感はこれだったのか」ということでした。
そう、フェミニズムという言葉は知っていても中身を知らなかったのです。

フェミニズムとは「女性の自己表現に関わること」

わたしは生物学上女として生まれ、性自認も女です。
だから「これ、女性のほうが損してない?」と思ったり、「この制度はどう考えても女性に不利だからおかしい!」と怒ったりしてきました。
このわたしの考え方は妥当だとしても、致命的な欠陥がひとつありました。
「過去に女性がどう抗い、権利を獲得したか」の知識が無かったのです。
現代における女性が抱える困難、LGBTQ+の方の抱える困難など……
わたしはフェミニズムやジェンダーについて経験してきたことを踏まえつつ本から知識を得ましたが、結局のところ性別を超えた「マイノリティ」側のことを考えたかったのだと気付きました。
わたしは女性で、アジアの端っこ・日本で生まれて、家父長制度に辟易し、それでも進学する・教員になることは許されて。
かつては女性に学問が必要ないと思われていた事実には腹が立ちました。
いいように扱いたいだけじゃないかと。
そんなことを考えながらもう1冊、『フェミニズムってなんですか?』という本も読んで、だいたいの歴史的な運動や考え方の基礎をつかんでから批評『お砂糖と……』に進んだのが良かったみたいです。この考えに至ったのはそのルートだったからかも。
所有されるものでも、消費されるものでもない存在として、じぶんと他者を位置づけたい。
「わたしらしい」という表現がしっくりくる自己認識と関係性を築きたい。
そんな風に思えるようになったのは、勉強の成果だと信じています。

フェミニズムを超えて

今は『はじめてのジェンダー論』を読んでいますが、子どもに関わる仕事をしているので、ジェンダー規範にはかなり気を使っています。
「らしさ」は性の役割やステレオタイプでなく、「じぶん」で決めていい。
できればすべての人が、そう考えるようになってほしい。
わたしは黙らないからな、というスッキリした気持ちで読み終えました。

今後の執筆の糧を頂戴できれば幸いです。お気持ちだけで結構です。