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6月1日~10日 かたな、青青


6月1日 6月始まりぎょうざの日

代々木上原で降りて『按田餃子』を食べる。

初めて食べた。ちなみに水餃子定食。優しいのに独特な水餃子の味。カレー風味のも美味しかったけど、ザーサイ? の水餃子が特に好きかも。

有名なお店だけど、一度も来たことがなかった。そもそも、どうして急に『按田餃子』が食べたくなったんだろう? 水餃子自体、普段から食べないのに。

自分の心理がよくわからないし、思い出せない。とにかく食べたかったんだろう、きっと。

古本屋に寄る。その後、代々木上原の駅をぶらぶらしていたら、カルディが移転していたうえにやたら大きくなっていたことに気づいた。

通常カルディの倍くらいの売り場面積がありそう。

しかも、カフェカルディーノもできるみたい。

名前通り、カルディがやってるカフェだ。店舗数は少ない。

池袋にもあるのに、行ったことがない。いつか思い立ったら行ってみよう。

そのいつかがいつになるかはわからないし、そのいつかが来たとき、今日の想いは忘れてることだけはわかっている。


6月3日 かたな、かおる

大雨だった。ザーッという音が窓の外で鳴り続けていた。

日付が変わりそうな時刻に、最近買ったアロマディフューザーにラベンダーのアロマオイルを落とす。

赤江瀑『オイディプスの刃』は、刀剣の話であると同時に香りの話だ。それも、ラベンダーの香りは物語の鍵となっている。

泉鏡花、塚本邦雄、谷崎潤一郎、三島由紀夫、澁澤龍彦、皆川博子、山尾悠子、そのあたりの作家が好きな人はぜひとも赤江瀑を読んでほしい……などとオススメするまでもなく、そのあたりの作家が好きな人は赤江瀑はおさえていそう。

私は好きな作家を問われれば澁澤龍彦と森博嗣を挙げるが、麻薬のような作家を挙げろと言われれば赤江瀑と服部まゆみを挙げる、と思う。

文章に酔う心地がする。いつまででも読んでいられる。

『オイディプスの刃』も読み始めて止まらなくなってしまった。

赤江瀑の描く世界は妖しい。そして男たちが美しい。

『精悍』という言葉がよく似合う男たち。文章から色気が立ち上る。溺れる、酔う。

(『妖艶』という言葉が似合う男たちもいる、やっぱり溺れそうになる。)

最後まで、一気に読んだ。

ラベンダーの香りのなかで読み終えられて嬉しい……けど、雪が降っていれば良かったのに、と読み終えて思う。

『彼は、少し苦しい、と言い、苦しいことはおれは好きだ、と言った。』

始まりの言葉が終わりの言葉だった。
私の中に、ずいぶん深く、この言葉が刺さっている。

赤江瀑アラベスクを読み返そうかな。


6月7日 青は人から遠いから好き

素晴らしい青色のサンダルを買う。

柔らかな青色ではなくぱっきりした青だ。鉱物めいている。

夏が近づくと、いつものお店の中が鮮やかになるのがいい。

くすみカラーって最近ずっと流行っているけど(デザイナーの友達はペイが多いからと言っていた)、私はだいたい、ぱっきりカラーが好き。似合う似合わないは遠くに放り投げるとして。

人間の体の中に存在しない色が好き。


6月9日 夜だけがうつくしい日

髪を切る。前回と同じ美容師さん。

私は極力美容師さんと話したくないんだけど、話してしまった。これは前回の私がいけない、だってちょっと話が盛り上がってしまったから。

美容院で私が居心地良く過ごすためには、『こいつ話せるじゃん』『実は話したいんじゃん』と思われる行動を極力避けねばならない。

予約するときも、備考欄に毎回『静かに過ごしたいです』と書いたほうが良いのだ、たぶん。

だから、私のせいだった。過ち。

その美容師さんは雑談のために手を止めるタイプだったことを思い出した。

そして、「奥さんは料理作るんですけど、自分は洗濯物干すんです。今の時代、男が全く家事やらない夫婦はいないんじゃないですか」と、しょうもないことをすごく堂々と言うタイプだったことを、今回知ってしまった。

あと、『結婚するのが当たり前』タイプで、『料理を作るのは女性の仕事』タイプだった。

別にそういうタイプでも良いんだけど、客と美容師という立場で論争するわけにもいかないし。したくないし。

自分がマジョリティだと信じている人間は、無敵だ。なにひとつ自分の頭で考えなくても、なんか絶対的に正しいことを言ってる、考えてる気になっている。

この美容院のシャンプー台は首が痛くなるし、次は別の美容院に行きます。

帰りに『fuzkue』。新しくなったキーマカレーがあまりにも美味しい!!

和風だ。お腹に優しそうだ。胃をすぐ壊す人間なので、こういうのはすごく好き。茄子のおひたし? みたいなのも美味しかった。完全にこの1皿で一食になるタイプのカレーだ。

稲垣足穂『人間人形時代』をようやく読み始める。数ヶ月前に買った本だ。

今日は薄曇りで、星も月も見えないけど、タルホを読むには良い夜だ。


6月10日 青は青だから好き

たまにはモーニング!

空きっ腹の状態で家から出るのがしんどいので、たまにしかモーニングに行けない。早起きはできる、ただお腹になにも入れずにお店まで行くのがとても辛いだけ。

今日は午前中にネイルオフする予定がありました。なので、モーニング。天井が高いお店で、とてもコーヒーが美味しく(フルーティな味わいでした、ベリーみたいな? って説明があったかな、酸味が強め)、カリカリベーコンと卵も最高だった!

時間になったらネイルをオフして貰い、久しぶりの自爪に。

帰ったら、ポリッシュを塗りました。

空とも海とも違う色の、青いポリッシュを。

人間の体には見当たらない青色を。


赤江瀑『オイディプスの刃』2019年、河出書房新社

この作品は私が生まれる二十年以上前に発表されているのに、文章や文体に古臭さを感じない。

赤江作品はなんか、こう、『幻想昭和』って感じがするのだ。そりゃあ風俗には古さを感じるけど(ネットなんて存在してないからね)、それ以外が時の流れから隔絶されているというか。
とにかく、今は赤江作品に酔いたい気分です。たまに休憩を挟まないと本当に酔いそうだから気をつけねば。

河出文庫版の表紙は佳嶋さんが描かれており、私は佳嶋さんもとても好き。
だからこの作品は私の中にとても長く棲むだろう。

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