6月13日~17日 面倒なお客さん(私)、馬の蹄と海の音
6月13日 命短し歩けよ初夏の日
グルカサンダルを買いました。
会社に履くようならGUでも良いかなーと思って、なんと1500円を切るお安さ!
この夏で履き潰してしまいそうな気がする。
履き物の命は、場合によってはとても短いのだ。
6月14日 不思議に惹かれる
古本屋で出逢った近藤喜博『日本の鬼』読了。
なかなか難しい、というか基本的な民俗学的な知識を持たないと上手く呑み込めない気もするな。
ただ、文章自体は読みやすかった。
別の著作も読んでみたいな。より理解が深まりそう。立ち読みしたとき、目次にカキツバタとあって気になったのですが、カキツバタの話はそこまでなく、そこは残念だったかも。
そういえば酒吞童子の話より、渡辺綱の話が満載だったな。綱ファンの皆様にはオススメしたいところです。
6月16日 考えすぎて面倒な客(私)
店員さんから「どうしましょうか?」って聞かれるのがほんとうに苦手。
自分が接客業で正社員を経験したこともあるせいか、『お店にとって不都合でない方法』を考えてしまう。
最果タヒさんがなにかのエッセイで書いていた、無意識に『模範的なお客様』になろうとしてしまう。
そして結果として、『コミュニケーションがとれねぇお客様』になってしまうのだ。
コンタクトを、買おうとしたんだ。クーポンで安くなってたから、クーポンの期限がもうちょっとで終わっちゃうから。
併設の眼科で診察を受けてから、コンタクトを買おうとした。そしたら受付のお姉さんが不思議そうな顔で言うんだ。
「コンタクトの処方箋、まだ期限切れてませんよ? 診察を受けずにご購入できます」
知ってる。
知ってるんだけど、角膜に傷ついてたら怖いし一応簡単に診察を受けたいんです。
それだけなんです。
「検査だけですね? 処方箋、更新しますか? 期限に余裕があるのでしなくても大丈夫ですけど。どうされますか?」
どっちでもいい。
マジでどっちでもいい。
『更新しちゃいますね』もしくは『更新しないでおきますね』って言ってください、言いにくいのはわかるんですけど。
どうすればいいんだ。
処方箋、更新しないほうが眼科的に手間がかからないかも? じゃあしないでおこうか。別に眼科の人に負担をかけたいわけじゃないし。
更新しないで大丈夫です。
「更新ナシですか?」
ちょっと不思議な顔された。
そしてその後も、別のスタッフさんの間で混乱が見られた。
更新するべきだったらしい。
コンタクト屋さんに併設の眼科だから、処方箋更新のためだけに訪れるお客さんが多いだろうし、私の選択が珍しいのはわかる。
でもなんかもやっとしたから、帰りにちょっといい石鹸を買いました。ムスクの香り好き。
6月17日 赤く青く焼かれる
『赤江瀑アラベスク1』再読了。私は赤江瀑アラベスク全三巻すべて持っている。これからすべて再読するぞ!
赤江瀑は絶版本が多い。Kindleで色々読めるが、本は紙派なので……最近、マンガは何作かを除いて電子書籍にしてるけど。そういえばSPY×FAMILYの最新刊をまだ買っていません……
『アラベスク1』は長編三つとエッセイをいくつか集めている。
最初に読んだときに、一番印象に残ったのは『星踊る綺羅の鳴く川』。タイトルからして完璧すぎる。
『上空の城』は少し読んでいるうちに思い出した。救いのあるんだかないんだかわかんない話で、割と赤江瀑は『救いがあるんだかないんだかわかんない話』を書くタイプの作家だと思っているんだけど、私は割とそういう話が好き(前回の日記で語った『オイディプスの刃』もそう)。
で、今回、改めて読んで「いやめっちゃ好き!」となったのは『海峡――この水の無明の眞秀ろば』かもしれない。
話の筋という筋も、あるようなないような。
小説とエッセイが溶けて混ざったような作品。
ただ、とにかく文章で脳が焼かれる。
冒頭1ページで、「あれ、こんなに良かったっけ!?」と驚いた。
引用するしかこの気持ちの伝えようがないので、引用します。
『青い海色の遊び着を着て、うなじのうしろに野生の馬が疾駆する地ひびきや映像を飼いながら、僕たち、自分たちを殺しに出かける昂奮で気もそぞろだったあの無数の濃密な昼や、夜や、また朝の、緊密に満たされあってわずかな空隙もない時間をわけあった仲間同士。彼等はどこへ行ったのか。いつ、あの仲間たちとは別れてきたのだろうか。』
詩の言葉だ。
実際、本人が書いた詩の言葉をいくらか織り交ぜているらしい。
この文だけで、不思議に海が眼前に広がる気がする。
馬の蹄の音みたいな波音も、聞こえる気がする。
最後に、もう一つだけ。
破片Hの一章句を引用。
『恋うる夜は
ひっそりと悪魔を焚いて充溢れている
そのことが信仰です』
近藤喜博『日本の鬼 日本文化探求の視覚』2010年、講談社
赤江瀑『天上天下 赤江瀑アラベスク1』東雅夫編 2020年、東京創元社
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