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Knight and Mist第四章-10魔霧-ミスト-②

あたりを飛び回っているのは、コウモリのような姿の魔物だった。

少し遠くでキィキィと鳴いている様子から、自分たちのことを探しているのが分かる。

馬車のなかは静かだった。

イーディスは剣の柄を握りしめ、セシルは警戒するようにあちこち目を走らせ、レティシアは祈るような仕草をしている。

ハルカはオロオロしつつ、ことの成り行きを見守った。

「知ってるかハルカ。この霧にまかれたヤツぁ全員行方不明なんだよ。例外なく」

「ーーーーえ?」

イーディスの言ったことがすぐに飲み込めず、聞き返す。

「でも、セシルがいればなんとかなるよね?」

「うーん、俺様の考えじゃ、コイツにも無理だな」

セシルはイーディスを睨むようにしながら、無言で首を横に振った。

「行方不明の原因が、ドラゴンとか魔物なら俺様とコイツでなんとかできるだろうよ」

「ちょっと待ってーー」

こめかみに手を当て、ハルカは頭を整理した。

「まず、馬車はこの魔力に耐えれるの? 消えちゃわないの?」

「セシルさんの魔導によりそこはカバーされてます」

これはレティシア。

「霧が晴れるまで待つしかない? この霧って晴れるの?」

「…………」

これには沈黙しか返ってこなかった。

これがホラーやミステリーなら、「そんなことがあってたまるか! 俺は出てくからな!」とか言って飛び出していく人がいてもおかしくない。それで外の魔物の餌食になる人がいるのだろうが、馬車にいる人間は御者を含め全員が息を潜めて霧が晴れるのを待っていた。

そんなときだった。

ゴウゥン……!!

地面が轟いて、馬車がガタガタ揺れた。

馬が心細げにいななく。

「なんだぁ!?」

イーディスの声にかぶるように再び轟音。

見れば、地面の下から炎をまとった手のようなものが地面を突き破って生えていた。

「今のって、もしかして」

イーディスが青くなったところで、

ガタガタガタガタッ

すごい音が鳴り、宙に投げ出される感覚があってーーそれから、真っ白になった。


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