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Knight and Mist第四章-7 悪夢

その晩、ハルカは悪夢にうなされていた。

久しぶりに見る悪夢だった。

精一杯背伸びして臨む就職活動。

空回りして、本当にやりたいのかも分からない仕事に必死にすがりついてーー

ーー結局、無碍もなく切り捨てられ、何かが欠ける感触。

友人から受ける内定の知らせ、結婚の知らせ、子どもが産まれたことの知らせ、

みんな新しいステージへ立って進んでいく。

私だけ取り残されたまま。

浪人もしてるし、就職活動には失敗できない。

私の手元にだけ何もないまま。

そもそもそのステージに進みたいのかも分からない。

どうして子どもの頃に書いた世界なんかへ来てしまっているのだろう。

ーー置いていかれる

ーーついていけない

焦りばかりが募る。

ーーみんな「いいよいいよ」「無理しないで」って笑顔で、私のことを切っていく。離れていく。

(……切られたくない)

どこで何が起きているのかいつも把握していなくちゃ。

でもそれはとても大変。

だから言われる。

「無理しないで」って優しく。

そしてその人は何も言わないで離れていく。

それって全然優しくない。

私のもとには誰も残らない。

ただ『友人』が笑顔のまま遠くなる。

連絡がなくなる。

他の知らない人たちと楽しそうにしているのが分かる。

誰か、になればこの寂しさは消えるのだろうか?

私はここでいったい何をやっているのだろうーー


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