インターネッツのせいで癖(へき)が増えていってしまう
子供のころからずっとマンガが好きなんです。長編だろうが短編だろうが、それこそ一コマでシチュエーションだけを描いているものだろうが。
今は昔と比べてSNSやPixivでマンガに触れる機会が増えた。その多くが商業向けではなく、それぞれの方が好きで描いているものだ。
エネルギーが『読者に受ける』ためじゃなく、『溢れ出る自分の好き・癖(へき)を形にしたい』ために費やされている。
僕はそういうのが好きでたまらない。
その癖が自分とマッチしないものだとしても、「好きなものは好きなんじゃ」と全力で表現しているものは純粋に眩しい。
マンガやイラストに限らず、好きなことについて目を輝かせている人に触れるだけで、何かしらのエネルギーを受け取れている気がする。
で、気が付けばいつの間にか、自分もそれを好きになってしまっているのだ。
例えば、有名どころだと『からかい上手の高木さん』の作者の山本崇一朗先生のPixivアカウントには、”デコ出し”の女の子で溢れている。
自分の作品はもちろん、他の版権キャラのファンアートもほとんどがデコ出し女子だ。まれにデコ出しじゃないキャラもあるが、その場合は「デコが出てない…だと?」とPixivのコメントがザワつく。それほど山本先生は界隈では有名なデコ好きなのだ。
他にはX(ペケッター)で毎日かなり濃いめの癖をマンガに乗せて発信している堀出井靖水(ほりでいやすみ)先生。
これでも比較的マイルドなもの。
ペケッターではロボット女子・獣人・TS(トランスセクシャル)ものが多い。本当に、かなり、とてもお好きなご様子で、もともと18禁作品の作者だけあって際どい描写が多い。
「好きで描いてる」「隠しようもない癖」と清々しいまでに語るスタイルが魅力だと思う。
最近ではSNS・Pixivの作品から商業化するパターンが増えている(というかもはやそれが主流だけど)こともあって、昔に比べて『作者の癖』を感じる機会が増えた。
癖とはつまりパターンだ。属性だったり、シチュエーションだったり、関係性だったり。悪い言い方になるけど、もう既に誰かが開いたジャンルともいえる。
でもそのジャンルに特化し、掘り下げ、色を濃くすることで、得体の知れない強いエネルギーが生まれるんだと思う。
インターネットの海をプカプカ漂っていると、そんなエネルギーに触れることが多い。そして
「ふん、なんじゃいこれ。よくあるパターンじゃないか」
と思いつつも、
「まあね、よくあるけどね、まあ、いいね、こういうの。いや別に好みじゃないけどね」
と誰に向けてか分からない言い訳をつぶやき、気が付けば同じジャンルの作品を探してしまう自分がいる。
おかげであらゆる癖に触れてしまい、好きなジャンルがどんどん増えてしまっている。
最近だと「アサシンの女性がターゲットの男性に恋してしまう」「(傭兵的な)影のある過去を持つ女性がメイドとして普通に振る舞おうとするが、要所要所で強者ムーブをしてしまい慌てる」というジャンルに「へ~、まあ、いいじゃんこういうの」と思い始めてしまっている。
「自分は以前はこんなんじゃなかったのに!君に変えられてしまった!」と涙目で訴えかけてやりたい。インターネットに。
誰かインターネットの概念を擬人化して作品かしてくれないだろうか。