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田舎の家のこと2

コロナが始まって外出禁止になった直後は、自分の家間の行き来について政府はまだ厳しく言わなかったので、パリからブルターニュの小さな島に別荘を持っている人々が押し寄せているというようなことを聞いた。

私も恐る恐るノルマンディーの家に行ってみることにした。

サンラザール駅までガラガラのバスに乗り、駅でも電車の中でも特にコントロールされることもなく、私は二つの川のあるノルマンディーの小さな街の家までたどり着くことができた。

街行く人々はマスクをしているものの、人密度は少なく感染者も少ないので、パリでの重苦しい緊張感はなかった。

家の中は完璧な工事現場だった。そこら中埃だらけだったし、壁紙は剥がれていて、床はむき出しだった。キッチンを壊してしまっていたので、外でカセットコンロで料理をした。お湯は出ないし、おまけに水は家の真ん中の水道管から直接出ていたので、バケツで汲んで中庭に面した洗い場まで運んで洗い物をした。そのうちホースを買ったので、中庭の水場まで水を引っ張って使うようになった。唯一一部屋だけは工事をしないで残してもらっていたので、多分おじいさんが寝ていたと思われる古いベッドと寝具があって、そこで布団カバーとシーツと枕カバーだけ自分のものを持ち込んで寝泊まりした。

まだ寒かった3月ー4月のノルマンディーで半分キャンプのような生活をしていた。

暖房はまだついていなかったので簡易なヒーターを一つ買ってそれを部屋を移動するたびに持ち歩いたりしていた。

そんな中で友人の家で浴びる熱いシャワーは本当にありがたかった。

彼女と時間を過ごすうちに少しずつお互いのことを知ることができた。

そして彼女が現在住んでいる家を近いうちに離れるということを知った。


自転車を購入しそれで行動範囲が広がったので、少し遠くのスーパーやガーデニングセンターに行ったりするのが楽しかった。

庭にさくらんぼの木の苗を埋めたり、トマトやパセリの苗を植えたりして楽しんだ。

外でする料理にも慣れてきて、バーベキューをするのが習慣になった。なんでも炭火で焼くと独特の香りがして肉なども柔らかく焼けるので、簡単な料理でも美味しく感じられた。

不便もいっぱいあったが、その不便さを楽しんでいたと思う。


そのうちに外出禁止が解け、それと同時期に家の工事も進み始めた。

新しいガスの湯沸かし器を設置した後も何ヶ月もエラーが出てていたが(1分ほどするとお湯はお水に変わってしまった)それもやっと解決して、温かいお湯でシャワーを浴びた瞬間を忘れられない。去年の11月お湯が出なくなってから半年の月日が経っていた。日本では信じられないことだと思う。

お風呂を借りに行っていた友人が家を出るタイミングと、なんとか住むことができる程度に家の工事が進んだタイミングが重なって、私たちはノルマンディーの家をシェアすることに決めた。






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