香ばしき誘い。
この週末にかならずつくろうと思うほど食べたくなったものがある。
焼きおにぎりである。
米はそのまま握るだけ。
三角になりきらなければ丸でもなんでもいい。
上に味噌を塗ってトースターへ直行。
味噌の端っこがちょっと焦げるくらいまで。
子どもの頃好きだった焼きおにぎりといえば、もっぱら某食品メーカーが出している醤油味のもので。
米の芯まで味が染みていて、ある種の中毒性とでもいうのか。
大人になった今でも時々、店頭で見かけると手に取ってしまう。
間違いない、そういう類の味だった。
けれども、今、無性に食べたいのはそれではない。
昔、母がよくつくっていた味噌焼きおにぎり。
当時は正直、あまり魅力的ではなかった。
下に敷いたアルミホイルに、ご飯がすこしだけひっついてしまう。
味噌の塩辛さと白飯。
口の中でバラバラな味を繋ぎ合わせなくてはならないことが億劫で、子ども心に、焼きおにぎりは冷凍だな、と思っていた。
それなのに今夜は思い浮かべるほどに、あのじんわりとした味噌の味が舌の上に甦ってくる。
子どもたちのためにつくっていたというよりも、母自身が好きだったのだろう。
楽しそうにご飯を握る母の姿が、香ばしい匂いと重なる。
空耳ならぬ、空鼻の如く、味噌の香りが漂ってきたではないか。
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