雨粒行脚
雨が降ってきた。
最終地点に落下し、ひと粒ずつ、雨音を残して流れていく。
大昔の雨はもっと静かだったのではないだろうか。
コンクリートの建物、アスファルト、鉄の車体。
降り立つ先が堅ければ堅いほど、雨音は大きくなる。
すると、雲から着地するまでの雨は無音ということか。
激しく降る雨と、どこまでも静かな空の合間。
見てみたい、そして聴いてみたい景色。
どうしたって叶わない。
佇む者がいれば、その肩を弾いた雨が音を生んでしまう。
では、世界でいちばん雨が静かに降る場所はどこかと考えてみる。
やわらかい土、繁る芝、ふわふわとした子犬の頭上。
雨音がやさしいところは、きっと居心地がいい。
雨を遮ろうとすれば音は大きく、強くなり。
雨を吸い込めば、しっとりと足音すらも消し去っていく。
雨が落ちる先に居るということは、受け入れることがきっと自然なのだろう。
それでも、明日は水玉のレインコートを着て買い物に行く。
自然に背いても、風邪をひくわけにはいかない。
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