a story of the egg killer the way home
負傷確率は半々といったところか。
よく足を延ばす街中のスーパーだろうが、近所のスーパーだろうが結果は同じこと。
繊細にしてスリリング。
タマゴとはじつに悩ましい食材だと思う。
あらゆる衝撃から守るため、買い物袋の最上部を陣取ったタマゴパック。
にもかかわらず、タイヤ下の凹凸を敏感に察知してカチャカチャと不穏な音を立てる。
恐る恐る信号待ちで買い物袋の中を覗くと、案の定、あらぬ体勢に寝返っているではないか。
灼熱の中、帰宅するまで、二度三度とポジションチェンジの攻防戦が続く。
やっとの思いで家に着いたときにはすっかりこちらが茹で上がっている始末。
意外と大丈夫だろう。
タマゴパックというのは、ある程度の衝撃に耐え得る設計になっている。
そう心落ち着けながら、取り出した瞬間、パックの隙間からぬるりとした感触が指に伝う。
こうして、本日、生まれるはずのなかったタマゴ焼きがひとつ焼きあがる。
この町はなにしろ道が悪い。
こちらの修繕が終わったと思ったら、今度はあちらが老朽化。
結果、以前書いたように、ツギハギだらけの路面に足元を揺らされるハメになるのだ。
タマゴパックを食パンの上に鎮座させる、中華屋のおかもちが如く片手にぶら下げる、そもそも自転車のカゴにクッションを敷いておく。
そんな試行錯誤を繰り返しながらも、未だ芳しい成果は得られずにいる。
ふと見ると、割れずに助かったタマゴが、うっすらと汗をかいているではないか。
いやいや、汗だくなのはこっちだ。
真夏の運び屋は、黄身も白身も私も、皆、命がけなのだ。
タマゴ焼きに機嫌よくケチャップがかけられる。
夏の午後。
苦難の道のりを経て、白身が三割流れ出たタマゴの命は、腹ペコのお腹に吸い込まれていった。
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