足の裏から響くもの。
お洒落は足元からというけれど、街の美しさもまた、地面からではないかと思う。
この街は、古い通りはそれらしく整えられているところもあるけれど、足元に目を向けると、なんだかがっかりすることが多い。
きっと地面の下は老朽化した管がいくつも通っているのだろう。
いつもどこかで、掘り返しては埋める人たちとすれ違う。
パッチワークのように違う色のアスファルトがはぎ合わされた道。
低い凹凸がペダルを踏むたび、サドルを通して波打つ感覚が身体に伝わってくる。
買い物帰り、カゴに入れた卵ばかりが気になってしまう。
バウンドする車体にハラハラしながら、それこそヒヨコが生まれるのではないかというくらい慎重に、ぬき足さし足漕いでいく。
そういえば、家の近くはいつも水音がする。
どこにも水源など見当たらない。
かつて川が流れていたところに、道が整備されたのだという。
きっと今でも、細々とした流れが地中に残っているのだろう。
からりと乾いたコンクリートの下から響いてくる水音に、不思議な心地になる。
水の巡りが人の暮らしをつくり、街をつくる。
必要なものは上から継ぎ足され、埋められたものはそのまま、ゆっくり忘れられていく。
けれどある時、足元が揺らぐことだってあるかもしれない。
いつか突然、ちいさな継ぎ目から、時代の忘れ物が顔を出すのでは。
時々そんな不安とすこしの好奇心が過ぎる。
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