逆襲のNPC 第1話
◯あらすじ
株式会社ガイアネットが運営する、フルダイブ型VRMMORPGアルカディア・オンライン。
その正体は仮想空間ではなく、本物の異世界を改造した実在する世界で、NPCも現地人が強制的に演じさせられていた。
少年型NPCの主人公は、ゲームマスターと悪質プレイヤーに虐げられた末に命を落としかけるが、この世界本来の神々を名乗る少女ルルアに救われる。
ルルアはこの世界をゲームマスターから取り戻す計画を立てており、主人公に協力者となるよう要請。
プレイヤーの力を吸収する能力「レプリカント」を与えられた主人公は、それを使ってプレイヤーに成りすまし、ルルアとともに叛逆のための力を蓄える旅に出るのだった。
◯本文
【P01】
右半分は白紙または広告という想定で、見開きの左半分からスタート。
以降、【P◯~◯】は見開きの2ページを指す。
過去シーン。中近世ヨーロッパの田舎のような牧歌的な風景。
幼い頃(十歳前後)の主人公が両親と和やかに暮らしている。
モノローグ
「穏やかで平和な日々。家族との幸せな時間。それが永遠に続くなんて、幼い僕だって思っていなかった。平穏も幸福もいつかは終わる。それは避けられないことだ。けれど、だからって――」
主人公がキョトンと空を見上げる。
【P02~03】
空から降ってきた巨大な塔が、村の近くの丘に突き刺さり、最上階に謎の少女が姿を現す。
村と住人が現実的な中近世風なのに対し、塔と少女はファンタジー系国産RPGのように凝ったデザイン。
謎の少女
「あー、テステス。マイクテスト。本日は晴天なりっと」
【P04~05】
謎の少女の顔のアップを描写。無邪気な残酷さを感じさせる美少女。
序盤のボスキャラポジションなので、読者にしっかりと印象付けておく。
謎の少女
「はじめまして、異世界の皆さん! 大変申し訳ありませんが、本日よりこの世界は、株式会社ガイアネットの所有物とさせていただきます! 抵抗される方々は、人間、魔族、神様の区別なく抹殺いたしますので、そこんとこよろしく!」
幼い主人公は、謎の少女の宣言の意味を理解できず、ただただ呆然としている。
モノローグ
「――よりにもよって、こんな形で終わるなんて。そんなのあんまりじゃないか」
【P06~07】
見開き扉絵。タイトルロゴとメインキャラクターを配したイメージカット。
【P08~09】
VRMMOゲームのログイン画面を、とあるプレイヤー(主人公ではない)の主観視点で描写する。
ログインが完了すると、そこは前シーンの塔のエントランスホール的な場所。
これがゲーム内の光景であることを明示するため、以下の演出を大きなコマで描写。
・一人称視点のRPGらしく、視界の隅に各種ゲージやインベントリ、マップ等を表示
・RPG風の装備を身につけた人間でごった返している
・他のプレイヤーの頭上に浮かぶ、名前やレベル、HPMPゲージ等
ページ終盤、視点になっていたプレイヤーが外に出るところを、第三者視点から描写。
サブヒロイン想定なので外見を印象に残す(魔法使い風の少女)
【P10~11】
ナレーションと並行して、以下の風景を描写。
・P03~04で丘に突き刺さった塔と、大きく拡張された麓の街(俯瞰構図)
・街の大通りを楽しそうに行き交うプレイヤー達
・プレイヤー相手に笑顔で接客をする店主
・ドラゴン等のモンスターと戦うプレイヤー
ナレーション
「アルカディア・オンライン」
「それは株式会社ガイアネットが運営する、フルダイブ型VR MMO RPG」
「サービス開始からまだ一年足らずでありながら、高度な人工知能を持つNPCと、本物の異世界を旅しているかのような没入感で人気を博し、フルダイブゲームの業界トップに躍り出た」
【P12~13】
成長した主人公(十代前半)が笑顔で街の紹介をしている。
RPGの街の入口にいるマップ案内用NPCのポジション。
プレイヤー達はリアルなNPCだと大盛りあがり。
次シーンの前フリとして、武器屋の店主が愛想よく接客している様子も描写。
左ページの最後にロケーションを変更。
日没後、プレイヤーのいない街外れの質素な酒場の前。
扉に立体映像で「NO ENTRY, NPC ONLY」の掲示。
最後のコマで「クソっ!」等の台詞と共に、ジョッキがテーブルに叩きつけられる。
【P14~15】
ジョッキを叩きつけた男は、前シーンで接客をしていた武器屋の店主。
日中の愛想の良さは跡形もなく、泥酔して憎しみを吐き散らしている。
武器屋
「ふざけやがって! 何がプレイヤーだ! あいつら俺達のことを生き物とすら思っちゃいねぇ!」
他の客も武器屋の叫びに同調。酒場の空気は葬式のように重苦しい。
武器屋
「それもこれも、あのイカれた塔のせいだ! 『ゲームマスター』どものせいだ! あいつらのせいで何もかも歪んじまった!」
酒場の窓越しに塔を描写。夜でも明るく輝いている。
その描写の後、酒場の隅で食事中の主人公に大ゴマでフォーカス。
パンとスープだけの簡素すぎる食卓。日中の笑顔はなく、酷くやさぐれた雰囲気。
(第1話終盤の演出のため、この時点でも主人公の名前は提示しない)
主人公の心の声という体裁で、オープニングから現在に至るまでの経緯を簡潔に説明。
モノローグの内容に合わせ、回想コマやイメージ図などを適宜挿入しておく。
モノローグ
「――もう三年前のことになる」
「空から降ってきた巨大な塔、アセンブリー・タワー」
「そこから現れた奇妙な格好の集団、ゲームマスター」
「奴らは逆らう人達を殺し、残った人達に絶対服従の契約魔法を強制した」
【P16~17】
モノローグ
「それから二年間、僕達はまるで奴隷のように働かされた」
「使い道の分からない建物の建設、誰も住まないような土地の開拓」
「神官や魔法使いは皆どこかに連れて行かれて、何かの研究をさせられているらしい」
「どうしてゲームマスターはこんなことをさせるのか――それが分かったのは、今から一年前のことだった」
大勢のプレイヤーが大挙して押し寄せてくるイメージ図を挿入。
モノローグ
「プレイヤー。アセンブリー・タワーから現れた、異世界の存在」
「人間離れした身体能力を持ち、見たこともない魔法を使いこなし、どんな攻撃を受けても怪我一つせず、ヒットポイントとかいう奇妙な数字が減っていくだけ」
「そんな怪物達がこの世界に来た目的はただ一つ――娯楽だ」
「ゲームマスターは、この世界をプレイヤーの遊び場として作り変えていたのだ」
回想コマやイメージ図はここまで。酒場に視点を戻す。
モノローグ
「プレイヤーがやってくる直前、ゲームマスターは僕達に新しい『役割』を与えた」
「例えば、僕には『始まりの街の案内役』を。例えば、あの人には『武器屋の店主』の役割を」
武器屋の店主がまだ騒いでいる姿を一コマ挿入。
モノローグ
「プレイヤーの前では、与えられた『役割』を演じることしか許されない」
「今の僕達を、ゲームマスターは『NPC』と呼んでいる」
「ノン・プレイヤー・キャラクター。あいつらにとって、僕達は人間ですら――」
左ページの最後、酒場のドアが乱暴に開けられる。
【P18~19】
大怪我をした男二人が酒場に転がり込んでくる。
一人は瀕死の重傷で意識がなく、それをもう一人が支えている。
負傷した男
「プレイヤーだ……プレイヤーに、やられた……」
他の客達が驚くリアクションを通して「プレイヤーはNPCを攻撃できない」という設定をさり気なく説明。
二人の男は介抱を受けるが、瀕死だった方は息を引き取る。
負傷した男
「森の案内を、してたら……モンスターが出てきて……ちくしょう……あいつら、俺達を巻き込んで、魔法を……! しかも、笑ってやがった……腹抱えて、ゲラゲラと……!」
それを聞いて驚き喚く客達の叫びの吹き出しに、謎の人物の台詞の吹き出しが被さる。
謎の人物
「適正な処理ですよぉ。残念ながら、ね」
【P20~21】
酒場のど真ん中に空間の歪みが生じ、その穴から謎の少女(P05~06)が現れる。
主人公と違って、こちらは肉体的に成長しておらず、前の登場シーンと全く変わらない。
驚きのあまり絶句する酒場の客達。
謎の少女
「おやおや? もっと喜んでもいいんだよ? みんなのアイドル、モシネちゃんに拝謁できたんだから!」
上記の台詞と同時に、少女の名前と肩書を四角い吹き出しかテロップで読者に提示。
「グランドゲームマスター ニーモシネ」
主人公の心の声
(グランドゲームマスター!? 最上位のゲームマスターが、どうしてこんなところに……)
謎の少女モシネは陽気な態度で一方的に喋り始める。
モシネ
「さて、それじゃあ本題! 本日付でNPCのシステムにメジャーアップデートが入りました! といっても、NPCの皆さんが楽になる機能の追加なので、そこんところご心配なく」
モシネが先程息を引き取ったばかりの男に横目を向ける。
悲しむ様子はなく、過度に蔑む気配もない。至って無関心な視線。
モシネ
「こんなふうに、NPCが『不慮の事故』で死んでしまった場合! 今までは残った皆で穴埋めしてたでしょ? 大変だったでしょ? そ・こ・で!」
モシネが現れた空間の歪みが再び活性化する。
【P22~23】
空間の歪みから一人の男が吐き出され、酒場の床に両膝を突く。
自分から出てきたのではなく、誰かに背中を押されて放り出されて酷く困惑している様子。
先程息を引き取った男となんとなく似ているが、瓜二つというほどではない。
モシネ
「これからは運営が責任を持って、足りなくなったNPCを『補充』しまーす! もちろんタダ! いよっ、太っ腹!」
酒場の客
「は……? そ、そいつ、どこの誰だよ……」
モシネ
「この大陸のどこか? オーちゃんが持ってきたのを使ってるだけだから、どこで調達したのかは知らないなぁ。あっ、それとも名前のこと聞いてたりする? ええと……」
モシネが死体を片手で軽々と持ち上げる。見た目通りの細腕ではあり得ない怪力。
モシネ
「この死体、なんて名前だったっけ? まぁいいや。今日からは、あっちをその名前で呼んであげてね」
その状態で、空間の歪みから出てきた男を横目で見下ろす。
モシネ
「NPCを補充するっていうのは、そういうこと。名前も仕事も肩書も、ぜーんぶあっちに移し替え。じゃないとプレイヤーが混乱しちゃうでしょ?」
淡々とした口調の説明だが、逆にそれが恐ろしさを醸し出している。
愕然とし、青ざめる酒場の客達。
モシネ
「あ、見た目は大丈夫。これくらい似てたら、プレイヤーの視覚補正で同一人物に見えちゃうし」
「だからもう、こっちの死体のことは忘れちゃっていいよ。適当に処分しとくから」
負傷した男
「ま、待て!」
死んだ男を連れてきたもう一人の男が、たまりかねて前に出る。
負傷した男
「そいつは俺のダチなんだ! 忘れるとか、そんなのできるわけないだろ!」
モシネ
「あ、そう? じゃあお手伝いしてあげる」
モシネは至って平然とした態度のまま、死体を持っているのとは逆の手を男に向ける。
すると男の額に魔法的な模様が浮かび上がり、男が頭を抱えて苦しみもがく。
負傷した男
「ぐああああっ!?」
モシネ
「これでよし。さて、本題本題っと」
モシネは死体を空間の歪みの向こうに押し込め、酒場の中をきょろきょろと見渡す。
【P24~25】
モシネ
「いたいた! おーい!」
モシネの視線の先にいたのは、酒場の隅にいた主人公。
主人公は声をかけられた理由が分からず、ただただ戸惑うばかり。
モシネ
「えーっと、確か名前は……どうでもいいか。君のパパとママのことはよーく覚えてるよ。めちゃくちゃ刃向かってくれちゃってさぁ。大変だったんだよ、ほんと」
楽しげにそう語りながら、主人公に近づいていくモシネ。
主人公は警戒心剥き出しに睨み返しているが、モシネは相変わらず涼しい顔。
主人公
「……仕返しでもする気ですか?」
主人公の心の声
(父さんと母さんは、こいつらに殺された。あいつらに逆らったからだ。それを根に持っていてもおかしくは……)
レジスタンス活動を指揮する両親の姿の回想コマを挟む。
直後の展開のため、二人の顔立ちなどがよく分かるように。
モシネ
「あはは! ないない、それはない! そんな気があったら一年も放っとかないって!」
笑い飛ばすモシネ。少しホッとした顔をする主人公。
ところがページの最後で、モシネが明らかに悪意のある笑顔を浮かべる。
モシネ
「でもね、思ったんだ。いくら反逆者の子供だからって、親がいないのは可愛そうだなって」
【P26~27】
モシネ
「だから、補充してあげるね」
満面の笑みのモシネの背後の空間が歪み、一組の男女が突き飛ばされるように出てくる。
どちらも酷く困惑し、怯えている。外見は主人公の両親と似ているが、明らかに別人。
(この流れを、見開き右ページで大ゴマ描写)
愕然とする主人公。モシネが負傷した男にそうしたように、主人公に向かって片手を振ると、主人公の額に先程と同じ模様が浮かぶ。
左ページの大ゴマ描写で、主人公の記憶が改竄を受ける。
冒頭シーンや前ページの回想に出てきた両親の姿が、今連れてこられた二人の姿で上書きされていく。
頭を抱え、絶叫する主人公。錯乱して酒場を飛び出してしまう。
【P28~29】
モシネ
「あらら。逃げられちゃった」
モシネは平然とした様子で主人公を見送り、片手を軽く振って立体映像のような通信ウィンドウを開く。
モシネ
「メルちゃん。さっき出ていった子、どこに行ったか分かる?」
通信相手
『西の森へ向かったようです。追跡しますか?』
モシネ
「あー、そっちかぁ。じゃあいいや。追跡は終了ね。代わりに男の子の補充、一人分手配しといて」
通信相手
『よろしいので? まだ死亡すると決まったわけでは』
モシネ
「その森にさぁ。試作品のボスモンスター、一匹解き放ったばかりなんだよね。どうせ食われて死んじゃうでしょ」
ここで改ページ。
夜の森の中を、息を切らしながら走る主人公。
やがて崩れ落ちるように膝を突き、絶望的な表情で涙を流す。
主人公の心の声
(ダメだ……思い出せない……記憶の中の、父さんも、母さんも……全部、塗り替えられて……ちくしょう……僕達には、思い出すら……)
ページの最後に、背後の茂みがガサガサと動いて何者かが現れる描写。
【P30~31】
茂みから現れたのはプレイヤーの男。装備も充実していて強そうな印象。
プレイヤー
「うわっ! あー、びっくりした。またNPCか」
主人公の心の声
(プレイヤー!? どうして、こんなところに……ま、まさか……)
主人公の脳裏に、前のシーンで酒場に転がり込んできた男の言葉が蘇る。
負傷した男(回想)
「プレイヤーだ……プレイヤーに、やられた……」
「森の案内を、してたら……モンスターが出てきて……」
主人公の心の声
(……まずい、逃げないと)
立ち上がってこの場を離れようとする主人公。
しかしそれより早く、プレイヤーが主人公に声を掛ける。
プレイヤー
「ちょっといいか? 道案内してもらいたいんだが」
話しかけられた瞬間、主人公は自分の意志とは無関係に振り返ってしまう。
主人公
「は、はい。どこに案内しましょうか」
土と涙で汚れ、引きつった笑顔の主人公。
その描写のコマの直後に、同じ構図でプレイヤー視点から見た主人公の姿を描く。
こちらは汚れのない綺麗な姿。笑顔も自然なものに補正されている。
【P32~33】
森の中の別の場所、切り立った崖の上に場面転換。
主人公
「ええと、本当にここで間違いありませんか」
プレイヤー
「ああ、合ってるよ。ついでにもう一つ手伝ってくれ」
突然、プレイヤーが主人公を強く突き飛ばす。
プレイヤー
「やっぱり、ただ押すだけなら攻撃判定にならないっぽいな」
プレイヤーは戸惑う主人公を何度も押して、背後の切り立った壁に追いやっていく。
プレイヤー
「実験だ、実験。どこまでなら攻撃扱いにならないのか、ってな。魔法に巻き込むのは通ったが……さぁて、このまま突き落とせるのかどうか……」
主人公
(身体が、動かない……プレイヤーと会話中だからだ……)
(勝手に話を切り上げるなんて、NPCには許されていないから……!)
プレイヤーを睨み上げる主人公。直後、この世の終わりのように絶望的な顔をする。
【P34~35】
プレイヤー
「おっ、もうちょっと! 結構いけるな!」
右ページ全体を使った大ゴマ。
何も知らず調子に乗っているプレイヤーの背後で、大型トラックほどのサイズの大型モンスターが牙を剥いていた。
ライオンをベースにコウモリの翼とサソリの尾が生えたマンティコア型の合成獣。
左ページ。
違和感に気付いたプレイヤーが振り返った瞬間、合成獣が振るった前脚が、主人公とプレイヤーをまとめて崖下へ吹き飛ばす。
なすすべなく落下する主人公。背中から地面に叩きつけられて激しく吐血する。
【P36~37】
主人公は崖下の地面に仰向けで倒れたまま、朦朧とした意識の中で独白する。
それと並行して、無傷のプレイヤーが合成獣と戦っている様子を描写する。
主人公の心の声
(身体が動かない……これが、死ぬってことなのか……)
(僕が死んだら……きっと……どこかの誰かが、僕の代わりに連れてこられて……僕の名前で生きるんだ……)
(……僕は、誰でもない死体になって、そのまま……)
左ページ後半、プレイヤーが大技を放とうと剣を輝かせるが、発動前に合成獣の攻撃で吹き飛ばされる。
主人公の心の声
(嫌だ、そんなのは、嫌だ)
主人公
「……死にたく、ない……」
謎の声
「いいだろう。ただし、全てと引き換えだ」
【P38~39】
いつの間にか現れていた神秘的な少女が、主人公の顔の傍で主人公を見下ろしていた。
神霊や精霊を思わせる姿をしていて、地面から少し高いところに浮かんでいる。
明らかに、プレイヤーともNPCとも異なる雰囲気。
メインヒロイン予定なので、少女の姿の描写は大ゴマで印象的に。
少女が光の球のようなものを差し出す。
少女
「『受け入れる』と願え。それだけでお前は、新しい命と力を手に入れられる」
「その代わり、お前はもう二度と、これまでの生活には戻れない」
【P40~41】
主人公の胸に光の球が吸い込まれ、眩い光を放つ。
その直後、キマイラが主人公に前脚の一撃を叩き込み、大爆発のような粉塵が巻き起こる。
しかし攻撃が当たった場所には、主人公と少女の姿はなかった。
上記の内容を大ゴマで印象的に描写。
【P42~43】
キマイラから離れた場所で膝を突く主人公。
攻撃を受ける直前、主人公は自分でも驚くような速度で遠くへ飛び退き、モンスターの攻撃を回避していた。
主人公
「な、何が、どうなって……うっ!」
主人公の額にP26~27の模様が浮かび、砕け散って消滅する。
同時に、改竄されていた両親の記憶が元通りになる描写。
主人公
「……ゲームマスターの魔法が……消えた……?」
「それに……なんだ、これ……」
主人公の主観視点のコマを挿入。
P08~09のプレイヤーの視点と同じ、ゲーム的な表示が各所に浮かんでいる。
困惑する主人公の隣に、先程の少女が瞬間移動してきたように出現する。
少女
「疑似アカウントだ。偽造アカウント、と言ってもいい」
主人公
「ア、アカウント?」
少女
「プレイヤーの本体、力の源のようなものだ。お前に与えたのはその偽物、複製品だ。私はそれをレプリカ・アカウント――レプリカント、と呼んでいる」
合成獣が咆哮し、再び主人公に狙いを定めて飛びかかる。
主人公は間一髪でそれを回避。
【P42~43】
合成獣の攻撃を紙一重で回避し続けながら、以下のやり取りを描写する。
主人公
「身体が軽い! これならアレだって倒せるかも――」
少女
「いや、それはまだ無理だ」
主人公
「なんで!?」
少女
「レプリカントは未完成。あと一手が必要だ」
そのとき、ヒットポイントがゼロになっていたプレイヤーが白い砂のようになって崩壊し、身体から光の球が抜け出す。
戦闘不能が確定してリスポーンが始まった描写。
少女
「説明は後だ! あれを捕まえろ!」
主人公は浮き上がっていく光の球に飛びつき、片手で握りしめる。
すると光の球が主人公の身体に吸い込まれ、光が全身に駆け巡っていく。
【P44~45】
主人公の容姿が一変。そのプレイヤーと同じ装備品を装着した姿になる。顔や身体はそのまま。
主人公
「こ、これは……!?」
少女
「プレイヤーのアカウントを吸収し、その能力を我がものとする! これがレプリカントの真の力だ! 今のお前ならモンスターにも遅れはとらない!」
合成獣の一撃を、主人公は咄嗟に剣で防ぎ、力任せに弾き返す。
そのまま互角の戦いを繰り広げるが、膠着状態。
少女は守護霊のように主人公の背後に浮かんでいる。
【P46~47】
少女
「通常攻撃では駄目だ! スキルを使え!」
主人公
「スキル!? どうやって!」
少女
「視界の左にスキルスロットがあるだろう! それに意識を向ければスキルのリストが展開するはずだ! その中から攻撃力表示が最も大きなものを――」
主人公
「いやいやいや! 無理無理無理! 何が何で何っ!?」
混乱しながら猛攻を凌ぐ主人公。
少女
「ならば、最強の一撃を願え!」
主人公
「最強……!」
主人公が合成獣の爪を剣で弾き、後方へ大きく飛び退く。
主人公の心の声
(身体が勝手に動く! これなら!)
剣を脇構えの体勢で構える主人公。P36~37と同じように剣が光り輝く。
飛びかかる合成獣。主人公が剣を振り抜く直前で次のページに。
【P48~49】
巨大な光の斬撃が合成獣を両断する。見開き決めゴマ。
台詞ではなく、大きな書き文字で「極光斬」と技名を表示。
【P50~51】
斬撃が森と地面に刻んだ痕跡を大きく描写。
完全に決着がついたことが一目で分かる。
主人公
「やっ……た……」
力尽きて意識を失う主人公
それを少女が受け止めたところでブラックアウト。
【P52~53】
主人公がハッと意識を取り戻す。
朝焼けの中、主人公は少女に膝枕されていた。
少女
「気がついたか」
主人公
「……モンスターは……」
少女
「完全に消滅した。よくやったな」
膝枕されたまま、安堵の表情を浮かべる主人公。
少女
「そういえば、まだ名乗っていなかったな。私はルルア。ゲームマスターによって駆逐された、この世界の神々の一柱だ」
主人公
「ルルア……女神ルルア……」
主人公は最初こそ驚いた顔をしたが、すぐに疑いの表情になる。
主人公
「……いやいや。女神ルルアっていえば、もっとあちこち大きな……ふぎゃっ!」
ムッとした少女に膝の上から落とされる主人公。
【P54~55】
ルルア
「奴らのせいで弱体化しているだけだ。そんなことより、自分の心配をしたらどうだ」
主人公
「痛たた……自分の?」
ルルア
「NPCとしてのお前は死んだ。比喩ではなく、ガイアネットからは死んだものとして認識されたはずだ。もう二度と、元の生活に戻ることはできないだろう」
主人公
「それなら大丈夫。あの街には戻りたくないからさ」
寂しげに笑う主人公。偽両親の姿の回想を一コマ挟む。
ルルア
「……そうか。行く当てがないのなら、私の計画に力を貸してもらえないか」
主人公
「計画?」
【P56~57】
ルルア
「叛逆だ。この大陸を支配するグランドマスターを打ち倒し、それを足掛かりに世界そのものを奴らの手から解放する」
「そのために、お前には『プレイヤーキラー』になってもらいたい」
「レプリカントはアカウントを吸収すればするほどに強くなる。プレイヤーに成りすまして好機を伺い、アカウントを奪い取る。これはお前にしかできないことだ」
真剣な面持ちで語るルルアを、幾つかの大きめのコマに分けて描写。
【P56~57】
主人公
「分かった、いいよ。命を助けてもらったお礼もしないとね」
ルルア
「即答にも程があるな。もっと悩まなくてもいいのか」
主人公
「あいつらが来てからずっと悩みっぱなしだったんだよ。これ以上何を悩めっていうのさ」
あっけらかんとした主人公を見て、ルルアは一瞬辛そうな表情を浮かべるが、すぐに不敵な態度を取り繕う。
ルルア
「そうと決まれば、まずはプレイヤーとしての名前を考えなければな。本名でも構わんが、やはり『あちらの世界』の語彙を使うべきだろう」
主人公
「うーん、急に言われてもな」
ルルア
「ならば私が考えてやろう。そうだな……」
【P58~59】
ルルア
「……ネモ、というのはどうだ。あちらの世界の古語で『誰でもない』という意味だそうだ」
主人公
「ネモ……うん、いいね。僕は今日からネモ。プレイヤーキラーのネモだ」
朝焼けに向かって微笑む主人公。悩みや迷いのない爽やかさがある。
ここで改ページ。
どこかの建物の廊下を、ゲームマスター・モシネが不機嫌に歩いている。
顔の横には通信ウィンドウが開いていて、遠くの誰かと会話中。
通信相手
『どうした、ニーモシネ。珍しく虫の居所が悪いようだが』
モシネ
「機嫌も悪くなりますって! せっかくのプロトタイプ・マンティコアがぶっ殺されたんですよ! 原因究明真っ最中です!」
通信相手
『ははは、それは災難だったな』
モシネ
「普通のネトゲだったらログを追えば一発なんでしょうけどね! うちってアナログ過ぎません!?」
通信相手
『……ニーモシネ。ゲームマスターを満喫するのも結構だが、我々の真の目的を忘れるなよ』
モシネ
「分かってますって。問題なく進行してますよ」
不意にシリアスな顔になるモシネ。
【P60】
第1話最終ページ。見開き右ページのみを想定。
ページ全体を使った大ゴマで、有翼かつ多頭のドラゴンらしき巨大な怪物が厳重に封印されている姿を描写。
モシネ
「堕神計画。我らガイアネットの悲願」
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