三條すずしろさんの「伊緒さんのお嫁ご飯」シリーズ読むとほっこりします

こんばんは、上田です。

今日は私が読むとほっとするなあ、と思う作品を書いている素敵な作家さんをご紹介します。

三條すずしろさんです。男性です。

こちらがすずしろさんのブログになります。


私がカクヨムのほうでも作品を上げていたとき、一番最初にレビューさせていただいた方でして、ときどきお互いの作品を読んで、お互いファンになっているという方です。

すずしろさんは、歴史に明るく(帯刀古禄さんという別名でも、歴史ライターとしてご活躍され、歴史小説を書かれています)武道もされているとかで、とてもいろいろな方面で才能のある方なのですが、一方で、すずしろさんのかわいい面が見られるのが、私が今日ご紹介する「伊緒さんのお嫁ご飯」シリーズなんです!

これは、夫婦の物語。小さな出版社に勤める「僕」と、歴史ライターのお嫁さん「伊緒さん」の、ご飯にまつわるお話で、読むとしぜんにこっちまで笑顔になるんです。

それもこれも、出てくるお料理は、「どうやったら美味しくできるか」の伊緒さんの工夫が小説の中に織り込んであるし、ときどき、歴史や和歌の豆知識も出てくるし、すずしろさんの持っている見識の広さと、夫婦の会話のあたたかさが交わって、なんともいえないぬくもりのある読後感を感じることができるんです。

なので、ぜひ、美味しいご飯の話を読んで、くつろぎたいなあ、という日があれば、まさにぴったりな小説なんです。

伊緒さんのお嫁ご飯はいろいろなサイトで公開されているので、読みやすいところからご覧になってみてはいかがでしょうか。

アルファポリス

カクヨム

エブリスタ

第一話の途中から、少し引用させていただきますね。

ほんとに心があったかくなるやりとり。

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ドアを開けた瞬間、カレーの匂いが風になって吹き寄せてきた。

「おかえりなさい、晃くん」

満面の笑みで出迎えてくれるのはいつものことなのだけど、毎度毎度、まともに照れてしまう。

「ただいま、伊緒さん」

お嫁さんである女性を、ぼくはいまだにさん付けで呼んでいる。こんな毎日のやりとりが、僕にはたまらなく嬉しい。

「今夜はカレーだよ!」

ドヤァ! といった顔で伊緒さんが宣言する。

もちろんかなり早い段階で分かっていることだけど、ぼくは素直に大喜びすることにしている。

なぜなら、本当に、大変喜んでいるからだ。

およそカレーが嫌い、という人にはこれまで出会ったことがない。

もちろん、中には

「え、ごめん。カレーだめなんだよね」

と、のたまう方もおられよう。

だがしかし、ぼくにとってカレーとはまさしく憧れの家庭の雰囲気を体現したものにほかならない。

そもそも本邦におけるカレーの始まりとは、英国式に倣った海軍設立の時代にさかのぼるという。

伊緒さんはどういうわけかこの話が大好きで、カレーを作るたびに英国統治時代のインドと、日本への英国式カレー伝播の歴史について熱く語るのだ。

さらに、旧海軍では海上でも曜日の感覚を失わないよう、毎金曜日は「カレーの日」と決まっており、それは現代の海上自衛隊にも受け継がれているのだというトリビアで締めくくられるのだった。

「手を洗ってうがいをしてね」

と、母親のようなことを言いながら、伊緒さんが食卓を整えてくれている。

僕が着替え終わった頃にはちょうど料理を並べられるよう、いつも気遣ってくれているのだ。

カレーのときこそ真っ白なテーブルクロスをひくのは、彼女なりの美学なのだろうと思う。サラダにラッキョウや福神漬けといった重鎮らが卓上に布陣し、カレーライスはやや控えめに盛ってある。これは「お代わりしてたくさん食べてね」という伊緒さんのメッセージなのだ。

そしてコップの水には伝統にのっとってスプーンが浸されている。

伊緒さんと向かい合わせになっていそいそと卓につく。

二人同時に手を合わせ、

「いただきます」

と、二人同時にとなえてスプーンをとった。

「おいしい!」

開口一番、ぼくは必ずそう叫ぶようにしていた。

なぜなら、本当においしいからだ。

にっこり笑って伊緒さんもスプーンを口に運ぶ。ぼくがおいしいと言うのをいつも見届けているのだ。

「うん! カレーだね!」

と、伊緒さんが謙虚な感想を述べる。

「はい、カレーですね!」

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引用ここまで。伊緒さんはたしかにお料理上手だし、晩御飯をだいたいつくってくれてるけど、このお話は「伊緒さんだけが晩御飯を作る話」ではありません。「僕」――晃くんも、伊緒さんが風邪で倒れたときや、伊緒さんの親戚の子がやってきたとき、手料理をふるまうんです。

お互いがお互いを敬愛し、大切にしているこの夫婦のお話を読むと、本当に「相手を大切にしている関係って素晴らしいなあ」と思います。人の心の純粋さに触れた気がして、心が温まるのですよね。

また、伊緒さんの喋り方、ちょっとオタクっぽくてかわいい。

むふー、むふー。
ドヤァ!
ニャーッ。

などなど(笑)こんなかわいいお嫁さん、私にもいたらいいなあ…

伊緒さんの夢のために、最後に「僕」が下す決断は本当に感涙します。こんな風に、夢ごとパートナーに大切にしてもらったら、どんなに嬉しいでしょう。

なお、番外編がいま更新中でして「伊緒さんのお嫁ご飯~手作らず編~」

それに「異世界の伊緒さんのお嫁ご飯」があり、私もまだ読んでいる途中なので、続きが非常に楽しみなんです。

かわいいお嫁さん、伊緒さんの飯テロに遭ってみたい方は、ぜひどうぞ!

幸せな気分になること、間違いなしですよ!




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