【小説】冬嵐 第14話「風邪」
第1話「拾い物」
前話「残業」
マガジン「連載小説・冬嵐」
光希の墓のある山寺は、石階段すらも雪で埋もれて、おまけに吹雪で視界が悪く、彼女の眠る場所にまでたどりつくのに、ひと苦労だった。二月十日。今年も光希の命日がやってきた。一歩一歩、重い足を踏みしめ、雪にあゆみを邪魔されながら、階段を上り切り、小さな石づくりの墓から、雪を払ってやる。
線香をつけたかったが、例年のごとく吹きつける雪まじりの強風で叶わない。ただ、手袋をはずして、手を合わせて、光希がいまもう辛くない場所に