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#バレンタイン
【再掲載】ポケットの中のチョコレート【小説】
私のコートのポケットの中には、個包装の小さなチョコレートが一枚収められていて、そいつは朝からずっと、その存在を私の頭の中で主張している。普段なら、なんの気負いもなく、そのチョコレートを、運転席に座る佐竹に渡せただろう。
だけど、今日はバレンタインデーだった。そうして、私たち二人を乗せた社用車は、二月のこの大雪で、果てのない渋滞に巻き込まれて、少しも動く気配がない。フロントガラスの向こう、降りしき
私のコートのポケットの中には、個包装の小さなチョコレートが一枚収められていて、そいつは朝からずっと、その存在を私の頭の中で主張している。普段なら、なんの気負いもなく、そのチョコレートを、運転席に座る佐竹に渡せただろう。
だけど、今日はバレンタインデーだった。そうして、私たち二人を乗せた社用車は、二月のこの大雪で、果てのない渋滞に巻き込まれて、少しも動く気配がない。フロントガラスの向こう、降りしき