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2018年9月の記事一覧
【小説】夜風の酔い覚まし
暮れなずむ空は、電線で斜めに切り分けられていた。小鳥の群れが、その電線から道路を挟んで反対側の電線へ、順々に踊るように飛び移る。イワシ雲が、夕映えの空いちめんに広がり、夏が終わったことを私に告げていた。
きれいすぎる夕空に、ちょっとおセンチな気分だな、と思ってから、その言い回し古い、と自分でつっこんだ。
「ギリギリまだビアガーデンやってるみたいだから、行こうよ! いつものメンバーで」
大学の
【小説】シンデレラの侍女
二月十四日の教室内は、今日だけ空気が薄ピンクに色づいている気がする。北山中学校二年一組の教室の、窓際一番後ろの席からは、クラス中がすべて見わたせた。
私はシャープペンをくるくる回しながら、ひとつ前の席の親友、有野華が、ちらちらノートから顔を上げて、教室の前のほうを見ているのを、後ろからじっと眺めていた。
教壇の先生や、黒板を見ているんじゃない。華の視線の先は、いつだって、変わらない。華は、華の