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2018年2月の記事一覧
【小説】春来たりなば
風邪の名残のマスクをしたまま、ほんのり春めいてきたおもてに出るため、実家のドアを閉めた。今年おろしたばかりのラバーブーツは、すでに小さな傷がたくさんついてしまっている。
道の脇にはとけのこった根雪が、早春の陽に洗われて少しずつその体積を小さくし、アスファルトの隙間からはさみどりの若草が萌えていた。
遠いと思っていた春が、もうここまで来ている。コートのポケットに、まだ少し寒さにかじかむ手をつっこ
風邪の名残のマスクをしたまま、ほんのり春めいてきたおもてに出るため、実家のドアを閉めた。今年おろしたばかりのラバーブーツは、すでに小さな傷がたくさんついてしまっている。
道の脇にはとけのこった根雪が、早春の陽に洗われて少しずつその体積を小さくし、アスファルトの隙間からはさみどりの若草が萌えていた。
遠いと思っていた春が、もうここまで来ている。コートのポケットに、まだ少し寒さにかじかむ手をつっこ