推し活のマリーアントワネット
ムスメがコツコツと自作していたペンケースが完成した。モンハン(モンスターハンター)に出てくるドラゴン(ムスメの推し)のペンケースらしい。
マニアックなムスメの愛するキャラクターはマイナーであることが多く、そもそも好きな作品自体がマイナーであることも珍しくない。
それゆえ推しのグッズが存在しないことも日常茶飯事なのだが、ムスメの場合、「推しのグッズがなければ自作すれば良いじゃないの」という推し活のマリーアントワネットなのでノープロブレムである。むしろ毎回、嬉々として自作している。自分の手で何かを作ることも愛してやまないムスメなのだ。
推しグッズが市販されている場合でも、ムスメが「これなら作れそう!」と自作に走ることがある。
なぜなら推しグッズは自分のお小遣いで買わねばならないが、手芸や工作の材料ならダディとマミィが買ってくれるからだ。創作のための材料や道具は子どものお小遣いで買うには高いことが多いので、なんとなくそういうことにしてある。
ちなみに母である私は、家庭科の先生が匙を投げるレベルに不器用である。
「あなたは切った布がとりあえず繋がったら合格でいい」と1人だけ課題の合格ラインを下げられたにもかかわらず、最終的に先生から「お母さんに頼んで仕上げてもらえない?」と言われたのだから、絶望的な不器用ぶりだったのだろう。
そういえば、ムスメが帰国後に通った中学のPTA活動で卒業生のためのコサージュを作ったときも、指にワイヤーが突き刺さって流血したのは私ひとりだったな……。年齢をこれだけ重ねても、不器用は克服できていないらしい。とほほ。
マミィがこんな有り様なので、ムスメは早々に自力で手芸や工作をマスターする道を模索し始めた。賢明である。
幸いニュージーランドの図書館には、子どものためのアートやクラフトに関する本がたくさんあったし、学校の友達や先生も教え上手だった。
(まことに恥ずかしい話なのだが、私はムスメに蝶結びを教えてあげることが出来なくて、ムスメはニュージーランドの学校のクラスメイトのソフィーとエマに習ってマスターした。そんなムスメの蝶結びは正確に言うとbetter bow knotという結び方である。)
YouTubeにも「◯◯の作り方」を教えてくれる動画が山ほどあって、明らかにマミィより教え方が上手い動画も簡単に見つかる。(私は人に何かを教えるのもおそろしく下手なのだ……。)
あれはオークランドの3回目のロックダウンのときだっただろうか。
YouTubeの動画の幅広さと、ムスメの「欲しいものがなければ自作すればいいじゃない」精神と、ステイホームで時間だけはたっぷりある状況が融合した出来事があった。
あの頃のニュージーランドのロックダウンは世界トップレベルに厳格で、普段同じ家で暮らしている人以外の人とはたとえ親族でも接触出来なかったし、営業出来る店も生活必需品を売る店に限られていた。
スーパーマーケットは営業していたものの、そこではムスメの生活必需品ともいえる無地のノート(創作のアイデアノート)は売られていなかった。
そんな状況で、ついに彼女のノートは最後の1ページになってしまったのだった。ピーンチ!
かろうじてA4のコピー用紙は手に入ったので、私とオットはムスメに「これに描くといいよ」とコピー用紙100枚を手渡した。
私達はムスメがコピー用紙をそのまま使うのだと思っていたのだが、彼女はなぜか興奮気味に「自分でノートを作る」と言い出した。「作り方はYouTubeで見つけた」と。
その時点でも私とオットは「ホチキスでとめて作るのかな?」くらいの呑気さで、ムスメの言葉を受け止めていたのだが……。
中学生にもわかりやすい製本の仕方を発信してくれたYouTuberさん、ありがとう!
……と、まあ、このように、ムスメ(子ども)の好きなことや興味の対象が私たち親の得意なジャンルではなくても、なんとかなる、というか子どもはなんとかするのだなあと感心している。
むしろ私やオットの得意な分野だと、あれこれ先回りして上手くいかないことも多い。
いずれにせよ子どもというのは伸びたい方向に伸びるものらしく、親に出来る最大の貢献は「邪魔をしない」ではないかと思う。
……思うけれども、ムスメの数学のテストのケアレスミスの多さに業を煮やしたオットが毎日30分ほどダディ塾を始めたり、ムスメが漢字アプリのドリルを忘れないようにマミィ・リマインダーになったり、「放っておいたら伸びる気を見せそうにない」部分には働きかけずにいられないのだから、子育てというのは我が子に対する情と欲と自制心のせめぎ合いの日々であることよ……。
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