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完全帰国日記②


2021年12月21日(火曜日)

松山市の教育委員会へ国際電話をかける。
ムスメの編入予定の学校について、事前に幾つか確認する必要があるのだ。

松山市の小・中学校の中には、日本語に不安がある生徒のサポートをする支援員のいる学校もあるので、そこを希望されますか?とか、1つ学年を落として通うことも出来ますよ?とか、丁寧に確認してもらった。

選んだ学校で、卒業までの1年ちょっと、楽しく通ってくれるといいなと思う。

本人は「お母さんが日本語で電話する時って、ずっと、はい、はい、はい…… 言ってるね。おもしろーい」と、まるで他人事だったけど。やれやれ……。

この電話をもっと早くにかけるつもりでいたのだけれど、オットが「あまり早くに知らせてもクリスマスでリセットされて、絶対忘れられる」と言い張るので、なんとなく遅くなってしまった。

……いや、そんなことはないだろう。ニュージーランドじゃあるまいし。

帰国のフライトまであと37日。
ムスメの学校から書類が届かない。ここはニュージーランドなので油断できない。

12月24日(金曜日)

クリスマスイブなので朝のうちに近所のスーパーへフルーツを買いに行く。(25日はスーパーもショッピングモールも閉まるのだ。信じられないかもしれないが電車も運休する。)

既にカオスだった……。

レジのお姉さんがトナカイのツノをつけて、電球の形のピカピカ光るピアス(ピンポン球サイズ)をつけていた。
それを誰も不思議がらないところがニュージーランドだな、と思う。

お昼はKiwi友人と軽食を持ってピクニックへ。
広々とした公園の木陰で、1時間半くらいおしゃべりした。

彼女にはニュージーランドへ来た最初の年から何かとお世話になったし、母国語が違っても、人種が違っても、尊敬しあうことも、友人になることもできるのだと実感できたのは、彼女のおかげだった。

最後は涙と笑顔で別れた。またいつか必ず会おうね。

帰国のフライトまであと34日。

2021年12月25日(土曜日)

クリスマス。

我が家のサンタさんは12歳までしか来ないので、去年から来ていないし、ツリーも11月に船便で日本へ送ってしまったので、およそクリスマスらしい気分にならない。

そもそも夏だし。

ニュージーランドはクリスマスと翌日のボクシングデー(殴る方じゃなくて、箱の方。プレゼントの箱を開けるところからきているらしい)が祝日なのだが、今年はそれが土日にあたっているので、月曜日も火曜日も振替休日。

来週のゴミの収集日を確認せねば。(オークランドは祝日がある週はゴミの収集日が後ろにずれる。)

そう。ロマンチックからとても遠いところにいる私である。

それでも、パヴロヴァ(ニュージーランド発祥のメレンゲのケーキ。ロシアのバレリーナのアンナ・パヴロヴァが公演に来た時に、彼女の白いチュチュをイメージして作られたのが最初らしい)は食べた。

来年のクリスマスにはパヴロヴァを懐かしく思うんだろうなあ。

ムスメが「おかーさん、来年からはクリスマスにケンタッキーフライドチキンを食べる?」と聞いてきた。

食べません。(わざわざ混む日に買わない。)

帰国のフライトまであと33日。


2021年12月27日(月曜日)

オットが「帰国して落ち着いたら、温泉に行こう」と言い出した。

君も現実逃避か?

まあ、気持ちはわかるので(私も行きたい)、ぜひ帰国後も忘れずに実行していただきたい。(結局、近所の温泉にしか行ってない。道後温泉のことだけど。)

先日、ニュージーランド国内の某ショッピングモールでしか使えないバウチャー(商品券)を頑張って使い切った話を買いたと思う。

なんと、オットの職場からまた同じバウチャーを貰えることになった。

いや……良いんだけど……良いんだけど……。(複雑な心境)

帰国のフライトまであと31日。ちょうど1ヶ月だ。

2021年12月30日(木曜日)

昨日、ついにニュージーランドでもオミクロンの市中感染が出た。
UKから音楽フェス出演のために来たDJらしい。
しかも、隔離期間中に出歩くという、明らかなルール違反をやらかした結果、感染のリスクを振りまいてしまったのだ。

現在、ニュージーランドは国境管理が厳しいので、自国民でさえ入国が大変な状況である。
そんな中で、外国から娯楽イベントのために来た人物がルールを守らなかったせいで発生した市中感染のリスク…。

Kiwi激おこ。

長引いたロックダウンやワクチンを巡る対立で、ただでさえ苛立っている国民感情的にも最悪の展開だろう。

このDJのおかげで、年末年始の2週間を自宅で自主隔離することになった人(濃厚接触者)がわんさか出たそうで、恐ろしいことですよ……。

なにしろKiwiの夏へ賭ける意気込みはただならぬものがあって、夏を満喫するためにロックダウンを耐え、ワクチンも打った人も少なくないと思う。

それが台無し……。

いや、ほんと、我が家だって激おこだ。

ニュージーランドでの残り少ない日々を自由気ままに満喫することもできないし、フライトがキャンセルになる可能性もあるし、日本帰国時に強制隔離の対象国になるリスクも上がったわけで……。

ふざけんなーーー。

帰国のフライトまであと28日。4週間だ。

2021年12月31日(金曜日)

大晦日だ。

しかし、今年も大晦日感はない。(理由はクリスマスと同じ。)

ご近所さんはことごとくキャンプに出かけている。8月みたいだなあ。いや、大晦日なんだよ!

……という1人ボケツッコミを、脳内で繰り返している。

でも、来年こそ……来年こそは日本で年越しできるので、今から楽しみです!(気が早すぎる)

お昼はパスタで、夜は年越しそば。
新しい年も(何がなんでも)みんな健康で過ごしたい想いがあふれて麺類が続く我が家なのだった。

帰国のフライトまであと27日。

2022年1月1日(土曜日)

明けました。元旦です。

大晦日に引き続き、実感ゼロ。
目にうつる風景がthe夏休み。

家族で近所を散歩して、大人は昼間からアップルサイダー(アルコールです)を飲んだ。
明るいうちに飲むお酒はなぜこんなに美味しいのか。
夏は冷やしたアップルサイダーを瓶のまま飲むのが好きだ。

ニュージーランドに来なかったらアップルサイダーも、お酒を瓶のまま飲む楽しさも、知らないままだっただろうなあ。

帰国のフライトまであと26日。

2022年1月5日(水曜日)

一年の中で、今の時期がいちばん、日本との心理的距離を感じる。
日本の人たちが1月を生きているのに、私たちは8月の世界にいる。そんな距離感。

今日のお昼は茹でたとうもろこしだった。(おもち食べたい……)

物がどんどん減っていく中で生活していると、日常がどんどん非日常へ変貌していくのを感じる。

大きな変化の波(渦かもしれない。それとも激流?)の中にいるんだなあ。

自宅の郵便受けにムスメの学校からの書類が入っていた。

どうやら9年生のディーン(日本の学年主任みたいな先生)が届けてくれたらしい。

「postするわね」って、そういうことだったのか……(郵送かと思っていた。)

帰国のフライトまであと22日。

2022年1月8日(土曜日)

不動産屋さんから連絡があって、うちと隣の物件(お隣さんがイタリアに帰国した7月からずっと空き家)のビューイング(物件の見学)を朝10時からやることになった。

めんどくさい……。

ニュージーランドでは現在のテナント(借り手)が住んでいてもおかまいなしにビューイングをやるのは珍しくないとはいうものの、このご時世ですよ?

私達が退居してからやればいいのに……。

見学者にはワクチン接種の証明とマスク着用が義務づけられているとはいえ、なんと19組も見学に来たので密だった。

うちは集合住宅で、共有の中庭があるのだけれど、そこに突如たくさんの人がやって来たせいで、集合住宅内の他の住人から不動産屋スタッフに苦情が出た。(同じ集合住宅でも物件の持ち主が、うちと隣の物件以外は、全部違う。なので、不動産屋さんもよその人には流石に自分のところの借り手に対するようには強気に出られない。)

ホント、このご時世なので、不安に思われるのも無理もない。

なぜ、根回ししておかなかったのか……。(不動産屋の責任者が変わってから、いろいろオペレーションが雑になった。)

次のテナントが決まらなければ、月曜日もまたビューイングがあるらしい。(憂鬱……)

帰国のフライトまであと19日。

2022年1月11日(火曜日)

昨日は結局、No ビューイングだった。(もしかして次のテナントは決まった?と思っていたが、その後、決まっていないことが判明。結局、私たちの退去後にまたビューイングをやるらしい。だから、最初からそうしろと……。)

娘は親友と最後のplay date。
いろいろと「いよいよ」感が高まってくる。

娘の親友はYear10でも日本語を選択して、本格的に学ぶ気満々でいるらしい。
「いつかまた海外旅行できるようになったら、まず最初に日本へ行くよ」
親友とママとパパの言葉が嬉しかった。待ってるよ〜。(2023年に本当に遊びに来てくれました。)

この家ですごすのもあと1週間ちょっと。(最後はホテルに移ります。)

帰国のフライトまであと16日。

2022年1月20日(木曜日)

借りていた家をなんとか空にして、オークランド中心部(CBD)のホテルへ移動した。
家具や家電は友人・知人に譲ったり、trade me(ヤフオクみたいなサイト。賃貸物件を扱っていたり、家やビジネスまで売っていたりする。)を使って、かなり減らしたものの、日程的に間に合わなかったものはジャンク屋さんに依頼。

サルベーション・アーミーなら無料で引き取ってくれるのだけれど、1月中旬の回収の予約はクリスマス前には埋まっていたので、利用するなら早めの予約をオススメする。

本当はダイニングテーブルと椅子4脚もジャンク行きだったところを、この日の朝、シングルのベッドマットを取りにきたオットの同僚が「これも貰っていい?」と即決で引き取ってくれた。奇跡だ…ありがとう。

そんなわけで、くたくたになった……。

心のパトラッシュを召喚する。

疲れたよ……パトラッシュ。もふもふさせて……。

ホテルの部屋は10階なのだが、ベランダに鳩が来る。

たくましいな……。

窓から見えるのはアルバートパーク。

帰国のフライトまであと1週間。


2022年1月22日(土曜日)

ホテル生活3日目。

鳩が毎日やって来る。
ベランダをひょこひょこ歩いては、扉の隙間から部屋の中の様子を伺っている。
隙を見せたら(隙間を広げたら)室内に入ってくる気満々なのが伝わってくる。
たくまし過ぎないか?

昨日は借家の退去作業の予備日としてスケジュールしていたのだけど、特に必要がなかったので、家族3人で港の方まで散歩に出かけたり、のんびりと過ごした。

CBDに滞在するのは2013年に下見旅行に来て以来なので、さまざまな想いが去来する……。

……が。正直、この1年ほどは帰国に向けてありとあらゆることを調整して、準備して……の連続だったので、さすがに疲れた。

かつてムスメを妊娠していた時に、最後の方は「もう妊婦に疲れたので早く生まれて欲しい」と思っていたが、あの気持ちに近い。

今日も飛行機に上手く乗せるためのパッキングについて、テトリスか知恵の輪なみに頭を悩ませている。

なんで我が家は荷物が多いのか……。

帰国のフライトまであと5日。

これが、たくましい鳩。そしてアルバート・パーク。

2022年1月23日(日曜日)

以前の日記で頑張ってバウチャーを使い切ったのに、またオットの職場から貰ってしまった話を書いた。

あれ、実はまだ受け取っていなくて、例年通り100ドルだろうし、もうめんどくさいから、ちょっともったいないけどマネージャーにあげたら?と提案したら、なんと今回に限って450ドル!
なんでーーー!

このタイミングじゃなかったら大喜びだけれど、あと3日のうちに450ドルをショッピングモールで使い切らないといけないなんて……なんの企画?

そんなわけで、家族3人で散歩がてらマネージャー宅まで受け取りに行ってきた。(徒歩20分くらいの距離。)

マネージャーからも「頑張って使い切って」と笑顔で言われたものの、既に荷物がぱんぱんなので嵩張るものは買えない。

なにより、このバウチャーが使えるショッピングモールがCBDにないわけで……。

果たして使い切れるのか?

帰国のフライトまであと4日。

2022年1月24日(月曜日)

結局、バウチャーはCBD近くに住んでいるお友達にお願いして、2割引きで買い取って貰った。

ニュージーランド全域がtraffic light system(新型コロナ対策の警戒指標みたいなもの)のredになったこのタイミングで、バスに乗ってショッピングモールに行くのはさすがにリスクが高い。
買い取って貰えて助かった。

明日はいよいよpreflight testを受けに行く。

帰国のフライトまであと3日。

2022年1月26日(水曜日)

preflight testは家族全員陰性だった。
紙に印刷された検査結果も手に入れた。
日本の書式の検査結果もある。
これでひと安心だ。

しかし、今日はやたらと暑い。
最後にのんびりと散歩を……と思っていたけれど、さすがに断念する。

夕飯はホテル近くにあるお気に入りのピザ屋のピザにしよう。
イタリア人がやっている、本物(?)の美味しいピザ。

ホテルに滞在している間は、部屋に備え付けのキッチンで調理することもあったが、1日一食はテイクアウトだった。
帰国の準備で痩せた分、元に戻ったのではないかと思う。

ホテルの部屋には食洗機とオーブンと洗濯機(と乾燥機)もあって、それなりに使え……なくて(どれも微妙に故障していた)、さすがニュージーランドだなと感心した。
ニュージーランド・クオリティともお別れなんだな……としんみりする。
しんみりするポイント、そこかよ。

でも、まあ、ホント、懐かしくなるのはニュージーランドのフレンドリーで大らかで、でも、意外と生真面目なところだろうなと思う。

別にニュージーランドに嫌気がさして帰るわけじゃないので、これからも私達にとってニュージーランドは特別な国だ。

We love New Zealand.
またいつか!

帰国のフライトまであと1日。

③へつづく。


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