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【読書日記】赤と青のガウン

「赤と青のガウン」 / 彬子女王

私が彬子女王の名前をはっきりと認識したのは、ある作家さんのエッセイの中だった。要約すると、その作家さんのエッセイが収録されたアンソロジーに彬子女王のエッセイも収録されていて、(作家さんが)「彬子女王とは、なかなかすごいペンネームだな」というようなこと(詳細な記憶は曖昧)を思っていたら本当に女王(女性皇族)だったというエピソードである。確かに、このお名前をペンネームだと思いこんでいたら、「フレディ・マーキュリーのファンなのかな?」とかいろいろ迷走してしまいそうである。(「王様」という、洋楽の直訳日本語カバーの人もいましたよね???)

その(?)彬子女王のオックスフォード留学記を拝読した。ただの留学記ではない。あのオックスフォードで博士号を取得するまでの記録である。

上記のエピソードに通じる、皇族ならではのエピソードも随所に散りばめられていて、それももちろん面白いのだが、このエッセイの白眉は「知を求める生き方」について書かれている部分だと思う。そこが面白くて、背筋がピンと伸びる思いだった。現在、日本社会で幅をきかせている「反知性」の対極にあるようなエッセイだ。(個人的には彬子女王もIELTSに苦戦なさったんだなと親近感を抱いた。あれは……本当に……二度と受けたくない。)

反知性と同じく、近年、公の立場にある人が人格者でないどころか、人格者であろうとする素振りすら見せなくなったことを個人的に不安に思っているのだが(なにしろ権力は頭から腐るのだ……)、そうではない立派な方々もいると知れる嬉しい1冊だった。

まあ……このエッセイを読んだら博物館や学芸員が反知性の波によって苦境に立たされている現状に、ますます腹立たしくなるのだけれど。


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