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四月の星々(140字小説コンテスト)応募作 part4

part1 part2 part3 part4 part5 結果速報

月替わりのテーマで開催する140字小説コンテスト。

【4月のテーマ】
作中に必ず『花』という文字を入れる。

4月30日までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、各月の受賞作などは下記をご覧ください)

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応募作(4月20日〜26日・投稿順)

ササキ(サイトからの投稿)
送別会でもらった花を玄関の花瓶に生けたら尖りだした。すぐに尖ったわけではなく、2、3日をかけてゆっくりと、帰宅する度にまた少し尖ったことに気づく。恋人も気づいた。言う。花は尖るよ。でも送別会でもらった花なのに、と言うと、送別会でもらった花だからじゃないの、と疲れたように言われた。
ササキ(サイトからの投稿)
温室の番人を殺した。番人の胸を突くと血が噴き出した。番人は傾ぎ、私の胸に縋りつき、耳に唇を寄せて、花を見てゆきなさい、今夜ひらく筈だったから、と囁いてそのあと死んだ。私は急に恐ろしくなり、震えながら温室を出て二度と戻らなかった。百年に一度の花はそのようにしてひらいて萎んでいった。
ササキ(サイトからの投稿)
明日には廃棄される花々を哀れんで花屋の子どもは花と寝る。奇癖に気づいた花屋が毎夜子どもの枕元に立つ。夥しい数の花瓶を、片付けながらそっと言う。花の中で眠るのおよしよ、死んでるみたいよ。子どもは夢遠く、答えない。寝返りをうつまるい背中、萎れかけた花々の束に、花屋は何かを後悔する。
ササキ(サイトからの投稿)
三十八年前に住んでいた団地には五歳の私がまだ住んでいる。ときどき様子を見に行く。五つの冬、私と母はヒヤシンスの水栽培をしていた。朝はベランダに花を出し、日の沈む前に部屋にしまった。今年も私がベランダに見えた。ろ号棟、四階、右から三番目のベランダに。
ササキ(サイトからの投稿)
南から来た花束が春を越せないのが悲しくて、出来心で、私の肉にみんな接いでしまった。人とは会えなくなったけれど、もういいのだ。踝からふくらはぎをつたうアイビー。背中に添い咲く金水仙。指先に、猛々しく開くチューリップ。
ササキ(サイトからの投稿)
夜、磯の香に誘われて窓を見ると、使者達が海へ帰りゆくところだった。使者達は貴人の足取りで藤壷を踏み、波の花がぶわぶわそこらを舞う。供を呼ぶ太鼓が鳴る。窓を開け出てゆこうとする私の手を捕まえてつれあいが低く低く囁く、よしなさい、よしなさい望郷は、ここにいて、愛してる。
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