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夏の星々(140字小説コンテスト第4期)応募作 part6

季節ごとの課題の文字を使ったコンテストです(春・夏・秋・冬の年4回開催)。

夏の文字 「遠」
選考 ほしおさなえ(小説家)・星々事務局

7月31日(月)までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、過去の受賞作などは以下のリンクをご覧ください)

受賞作の速報はnoteやTwitterでお伝えするほか、星々マガジンをフォローしていただくと更新のお知らせが通知されます。

優秀作(入選〜予選通過の全作品)は雑誌「星々」(年2回発行)に掲載されます。
また、年間グランプリ受賞者は「星々の新人」としてデビューし、以降、雑誌「星々」に作品が掲載されます。

雑誌「星々」既刊ご購入▼


応募作(7月27日〜29日)

投稿日時が新しいものから表示されます。

7月29日

ペリドット @saihate76
遠くの席から君を眺めている。隣に替わりの女の子が場つなぎで一生懸命に話しかけてくれるけど、右に左に流れてゆく。隣の女の子と君は何が違うんだろうね。早くチェンジの時間が来ないかね。君の体温を感じればそれだけでいいんだ。ああ、やっと来た。君が来てくれる。時が止まってくれればいいのに。

ペリドット @saihate76
ふいに遠雷が聞こえた。もう、考えるのも駆け引きをするのもやめた。彼女がいようが好きになってしまった気持ちを誰が止めようか。欲しかった。言葉より目が雄弁に語った。早朝に渋谷のセンター街の看板が落ちたニュースを聞いた。二人で初めて笑った。私達の罪への天からの罰の象徴のように響いたね。

真読 @setusame
薄紫とピンクの夕空がロマンティックで、泣きそうになった。生温い風は夕暮れを急かして夜を連れて来る。
あの星々は、人間に比べたら凡そ永遠で、星々からしたら人間なんかきっと刹那だ。
澄んだ夕闇の中、納得出来るのは君の存在だけ。後は全部、幻みたいだった。

猫とひまわり @orange_tomatoo
「同じくらい遠いなら、未来でも過去でもいい。私の存在しない世界に行って、別の人間になって、生きるのも悪くないって思いたい」笑いながら言う君に「そんなこと言うなよ」「無理して笑うなよ」浮かんだ言葉のどれもを言えなかった。どれもが外れな気がした。言えなかったことが一番の外れだった。

音葉なつ @otohanatsu
銀河を泳ぎきった頃、遠ざかる光を追いかけてはいけないと誰かが言って通り過ぎた。星々の見過ぎで目が疲れていた。まぶたの裏が眩しい。星の光はなぜこんなにも懐かしいのだろうか。いずれ滅ぶからだろうか。予感を振り払い、慎重に帰り道を辿る。あの町の夏の夜明けの鳥の囀りを思い出しながら。

(サイトからの投稿)
この人かもしれない。遺書を読んでそう思った。私は戦争資料館に来ると人一倍時間をかけて見て回る。ずっと誰かを探している気がしていた。遺書の中の彼は私が生まれる前に亡くなったはずなのに、この筆跡、この言葉を私は知っていた。遠い場所へ飛び立つ彼を私は引き止められなかったんだ。

(サイトからの投稿)
校庭の石っころ。ただの石。誰の気にも留まらないようなその一つの石を手に取って君は言う。
「この石にはね、歴史があるの。遠い遠い昔からの歴史。もしかしたらさ、この石は恐竜に踏んづけられたことがあるかもしれないよ。そう思うと、とってもロマンチックじゃない?」
僕は、君に微笑んだ。

ぱたの @patano81014
遠く遠く、一億光年先にある惑星に住む私が書いているこの文章があなたの目に留まるまでには9兆5千億kmの億倍の時間を要します。
きっと私の時間は終わっているでしょう。
でも遥か彼方のあなたに一瞬でも私を想って貰える時がある、そう考えるだけで今を生きていけます。この、私しかいない場所で。

にしん(サイトからの投稿)
ゆうべすべての猫が「遠く星」へ行ってしまった。「お別れです」とぼくの猫はその時初めて喋った。青とエメラルドグリーンの瞳のなかに、ぼくの悲しい顔が映っていた。猫は「遠く星」から見守ってくれるそうだ。ぼくの猫、そんな星に行かなくていいから、そばで丸くなっていて。ずっと。

ひなあられ(サイトからの投稿)
先月2歳になった子供を連れての帰省。実家の最寄駅まで両親が迎えに来てくれた。目尻の皺が深くなり、頭髪も白さが目立つ。ぁあ、私はこの人達から生まれたんだなとふいに視界が滲む。そして母となっても永遠に彼らの娘であることに誇らしさと安らぎを感じたのだった。

もこすけ @moconaksm
「どうした」
自転車でコケた脚を引きずっていると後ろから声がした。悪魔いや、芥の爺さん。膝の血を見るや、私を荷台に乗せて自転車を押し始めた。
小言の多い偏屈親父。
ずっと苦手だった。
「遠くの親戚より近くの他人。通りすがりの天使より見慣れた悪魔ってな。」顔を上げると悪魔は笑っていた。

京 卯梅(サイトからの投稿)
俺見たんだ、かーさんの膝の上で。手元の機械の中で、俺らの先駆者が彼らのおかーさんと悠々と街とか海辺とか散歩してた! 異国を旅するやつもいるんだぜ! お前も遠い目で外眺めるのもうやだろ? 今日からソファで爪研いだり食卓から失敬するのやめようぜ。喉ももっと鳴らそうぜ、な!

椎名涼(サイトからの投稿)
さっきまでいた会社が燃えた。間一髪だった。炎に包まれ崩れていく光景を見ていると遠い記憶が蘇る。新社会人で奮闘した20代。責任がある仕事を任されるようになった30代前半。そして30代後半は……何をしていたっけ?
それよりも今はこの感情を大切にしたい。
「死なずに済んでよかった」

京 卯梅(サイトからの投稿)
遠い昔の話だが、その国は魚料理で世界的に有名だったんだ。最初はペットたち、それからその友達そして海の仲間たちへと伝えられたのさ、こっちでは菜食主義者が多いことがね。で魚たちは島から出れない仲間を悲しみつつも大海原を移住したわけ。特別沢山の人が頻繁にネットを見る国でもあったからね。

ふみ(サイトからの投稿)
「おかあさん、これよんで」
娘が絵本を寝床に忍ばせ、私を待つ。
 今は亡き遠い星。タイトルは「青い星」。
 それは豊かな自然の中で共存する命のお話し。
 けど実際は……
 もしご先祖様が移住を決断しなかったら……
楽しそうに聞き入る娘に、私は今夜も情感を込めて読み聞かせた。

大原 史(サイトからの投稿)
遠い国から来た恋人みたいだった。
店先に並ぶ『フィリピン産マンゴー』はまだわずかに緑がかっているようにも見える黄色で、手にとってみると、ひんやりとしてどこか頑なな顔をのぞかせた。1個398円。買い物かごに入れるのは背徳的な行為な気がして、僕は手に取ったマンゴーをそっと戻した。

澤村 廻凛(サイトからの投稿)
星の話をする君の目は、ひときわキラキラ輝いて、どうしても名前の覚えられないほにゃらら星雲の、遠さを僕は好ましく思う。どれだけ焦がれても、届かない距離。僕は安心して、君の肩にそっと触れ、近くにいる喜びをひっそりと噛み締める。流れ星、流れて消えろ。僕はここにいる。君の、となりに。

五十嵐彪太 @tugihagi_gourd
手紙が届いた。宛先が何度も書き直され、切手は貼り重ねられ消印だらけ、歴戦の猛者の趣きすらある。よくぞここまで辿り着いた。いくつもの星を経由して配達された、遠い星に住む父母からの近況を伝える便りだ。デジタル通信は大昔に技術も信頼性も失った。私はコンピューターを教科書でしか知らない。

柊鳩子 @yorunohituzi
花火大会へ向かう人混みを遠巻きに眺めながら、一人反対方向へ歩く。
「一緒に行こう」とたった一言声をかけられないまま今日になってしまった。
一人分のビールを買って、小さな部屋に着くと電気もつけずにベランダに出る。
あるのは微かに聞こえる音とほのかに光る夜空だけだった。

灰白 せいか(サイトからの投稿)
ずいぶんと遠くまで降りてきた。帰り道はもうわからない。空を見上げると同胞たちが燦然と輝く。私は両手いっぱいの、こぼれそうな命を大事に運びながら地上を目指す。全ての希望を乗せ降下する私は今一番煌めいている。衝突の音は、轟音。それはまるで鐘の音のように響く。そしてすべては果たされた。

(サイトからの投稿)
祖母が暮らす田舎の夜は
漆黒の闇が広がった。

暗いと何も見えない
怯える私に祖母は
明るいと見えないものもある
と言った。

蚊帳越しに
流れ星を集めたみたいな
咲き乱れる花みたいな
蛍の光を見た。

未知を知る歓びで
目を輝かせた
遠い遠い、あの夏に
還れたら、いいのに。

文月ノ文(サイトからの投稿)
遠敷明神が清流に垂れた糸を引くと、水は天地を流れ、大和の国の山裾へ届く。人の暦で一年に一度。
あるとき「この水は神様が遅れたおわび」と人が言った。遠敷明神の姿にいわれのないくもりがかかった。明神は人の眼に見えなくなった。
星の下で川面が動く。今年も水が流れる。見えない路を通って。

彩葉 @sih_irodoruha
花畑にいる。そばで蝶がとぶ。花におりるためかと思っていたらわたしが移動してもそばにいる。何かを伝えようとしているかのように。立ち止まると高く飛んでいった。それから10日ぐらいそんなことが続いた。大切な知らせがポストに届いた。遠い国にいる親友がそれを投函したころ蝶がきはじめたのだ。

美零(サイトからの投稿)
「絶対に朝になるまで、扉を開けてはいけないよ」そうきつく言われて、私はここにいる。「外からいろいろな声が聞こえてくるかもしれないが、それは魔物だ」母や友達の声が聞こえたが、私は無視した。「コケコッコー」鶏の声だ。朝だ! 私は扉を開けた。まだ、真っ暗だった。夜明けまで、まだ遠い。

美零(サイトからの投稿)
雨が蕭々と降っている。車のフロントガラスに落ちては流れる滴は、まるで僕の涙のようだ。いつもの時間、いつもの待ち合わせ場所。あの人はもう来ない。いつも目の前にいたのに、気がつくと近くて遠い他人になってしまった。1年だった。たった1年の期間限定の恋。そうして、僕は今日、この街を去る。

文月ノ文(サイトからの投稿)
宮には、毎日無数の品が届けられる。伊豆から鰹。甲斐から胡桃。荷札に書かれた国と、品の名を書き写していく。山と積まれた米に近づき、荷札を裏返した。ふいに淡い水面が広がった。その国の名を記すのは、この仕事に就いて初めてだった。ゆっくりと筆を落とす。
……遠水海國。

京野都 @whiteplum_chan
酷暑とい草の香りに誘われ寝転がると、遠くチリンと、風鈴が夏を奏でた。点けはなしたテレビから、大相撲の賑やかな音が響く。ぼんやりと瞼を開けると、皺々の肩と白い団扇が懐かしいリズムで揺れた。
(じいちゃ…ん)
いや、まさか。祖父は昨年逝ったのだ。チリンと風鈴が微かに鳴り、私はまた微睡む。

そらとうみ(サイトからの投稿)
窓から公園が見えた。5階建て市営団地。夏休みになると公園の真ん中にやぐらが組み上げられ始める。完成したら三日間、賑やかな盆踊り。
踊りの輪の中に入りたいけど恥ずかしくて母の手を握ったままのわたしは、覚えた踊りを家に帰ってから、窓から聞こえる音に合わせて一人踊る。遠い昔の思い出。

なつか @natuka_recipe
この島に訪れて、どれだけ時が経ったのだろう。流れ着いた瓶から取り出した手紙にゆっくり目を通す。耳を撫でるラジオの歌。空高く響く鳥の声。水平線は今日も変わらず光を帯びていた。じっと向こう側を見つめてから、目を細めて風を受け止める。遠路はるばるやって来た星の瞬きをそっと懐にしまった。

すみれ @sumire_sosaku
通勤途中の駅で、大きなスーツケースを持ち制服を着て、駅員さんに地図か路線図を見せられている女の子を見かけた。朝の雑踏の中、そこだけ流れている時間が違うよう。最近、遠方から来たのかなという子をよく見かける。わかりにくいよね、と数年前までその立場だった私は心の中でエールを送った。

李都 @litolittlen
炎天下、サウナのような体育館でひたすらに球を追いかけた日々。キュッキュッと鳴るシューズの音も仲間の声も、むせかえる体育館の匂いも、ずっとずっと永遠に続くと思っていた。背中の番号は自分のものだと信じて疑わなかった。この1番を後輩が背負う姿を見た時、俺のこの夏はもう続かないと悟った。

此糸桜樺 @Konoito_Ouka
じめじめとした空気の中で、窓に打ちつけるような雨音が響く。町に広がる陰鬱な空気は、遠くの雨雲にまで続いている。テレビをつければ天気予報の、雨。番組を変えれば生中継の、雨。いい加減、長雨にも嫌気がさしてきて「やまないなあ」と呟けば、机のトロピカルソーダが場違いにもカランッと鳴った。

想田翠 @shitatamerusoda
実家の縁側に座り、スイカの種をプププと飛ばす。勢いよく、より遠くへ。すっかり大人になってしまったけど、この瞬間に夏休みを感じた。早食いする芸人にゲラゲラ笑ったのは、遠い昭和の記憶。猛暑と引き換えにどんどん情緒が失われていくようで…風鈴を吊るしてみたら「うるさい」と老母に叱られた。

モスタシン(サイトからの投稿)
「遠くに行っちゃうの?」彼女は僕にそう質問する。「うん。残念だけどね」僕がそう答えると彼女は涙を流し、僕の手を握った。「でも、ずっと待ってる。そして、遠くからずっと見てるから」僕は力無く彼女の手を握り返した。

【星々運営】
ナヲコ
@nawoko140
遠くに行くための荷造りを、ずっと手伝っているみたい。どこかでひとり泣かないように、あれを入れて、これも入れて、全ては入りきらなくて。何が大切か決めるのはあなただから、その朝が来たら荷物は空っぽのまま送り出す。新しい荷物を揃えていく道中、ほんのときどき思い出してくれたらそれでいい。

どらまにあ(サイトからの投稿)
出入り業者の森さんから、新入社員を紹介された。「初めまして、遠藤です。」彼は途中入社で、以前はH社にいたらしい。「H社ってブラックですよ。」彼は、H社の悪口を並べたてた。へえ、そうなんだ。知らなかったなあ。ひと月ほどして、また森さんに会った。「遠藤ですが、先週辞めちゃいました。」

むーにー @love_sfc23
遠い宇宙の果てで、星々がきらめいている。その光は遥かな過去からの伝言。僕は望遠鏡で星々を観察し、謎を解き明かす。遠くても、僕の心は宇宙と一体だ。近い将来、僕は星々と対話する。遠い星々の輝きが、僕の夢を呼び寄せる。そして、ビッグバンが起こる。遠い宇宙の果てから、新たな夢が生まれる。

むーにー @love_sfc23
遠くの山を見つめる少年。その目には、遠い未来への夢が映っていた。遠ざかるはずの時間が、彼の心の中で静かに膨らんでいく。遠い日の約束、それは彼の心の中で永遠に続く旅の始まりだった。遠くの山々は彼の夢を映し出し、遠い未来へと彼を導いていく。遠い未来、それは彼が追い求める夢だったのだ。

むーにー @love_sfc23
遠い昔、祖父が語った物語が、今も私の心に生きている。遠く離れた祖父の故郷、その風景が目に浮かぶ。遠い過去から未来へ、物語は繋がっていく。遠く、遠く、物語は響き続ける。遠い昔の物語は、未来に生き続ける。遠い昔の物語は、さらに遠い未来にも響くのだろうか。今の物語も、どうなんだろうか。

チアントレン @chianthrene
文字を読むことを辞めようと思った。漢字でもアルファベットでもない国に越して、すれ違う誰かの顔色すらぼやかして、無限遠の大自然だけを眺めた。
文字のない日々は得た。それだけだった。
気付けば山の季節を読み、草木の盛衰を読み、海の機嫌を読み。僕の脳はとっくに、読み続ける形に歪んでいた。

チアントレン @chianthrene
夜の街路樹に火を放てば、けたたましく囀る木の葉は動物としての肉を落とすだろう。もう呟かない肉は二度と木登りをせず、進んで小さな井戸に垂れ潜んでいく。井戸に溜まる肉の量は遠からぬ樹の終わりを物語るが、暗い火はクリスマスの御馳走を得られると信じていつまでも鳥の幽霊達を焙り続けている。

チアントレン @chianthrene
今日のスパチャで見せた硬直っぷりはデビュー配信以来かも。また一歩関係をステップアップさせた実感で胸が一杯。主への気持ちが遠退いてるだなんて噂していた奴らの嫉妬コメが一層心地好い。どんなに陰口で敗北を認めても許してやらない。二人を結ぶ絆の固さを全世界に知らしめ続けてあげるんだから。

神足颯人 @frontiara510
水を入れたバケツを振り回して「遠心力ゥ~」を教えてあげようとなさる先生に、令和の若人らは冷め尖った視線を与え続けるので、ついに周囲の気温は零下に達してしまいました。「ありゃ、氷になってる。そりゃ零れねぇワケだ。」地球温暖化を解決するのはZ世代だなと、思い知らされる先生なのでした。

神足颯人 @frontiara510
「自分の頭の中で文章が小走りで進んでいって、遠い人にならないでね」――。あのとき、あなたはなぜこんなことを言ったのですか。この季節が来るたびに、僕はあなたを思い出さなくてはいけないのですか。あの夏の、宝石のような日々の中で、あなたは笑います。あなたはいつ、遠くなってくれるのですか。

八日水素 @yokawater
「どこか遠い国を旅したい」という話を始めて、数時間。白熱した議論の末、旅の目的はシャボン玉に入ったまま、街を空から見下ろすことで決まった。さて、いざ旅の第一歩を、と扉を開けたところで気がついた。世界はどうしようもなく、暑かったのだ。私はアイスを頬張り、君は扇風機の前でうなだれた。

八日水素 @yokawater
君は暗がりに紛れながら、乗りなよ、とリアキャリアを軽く叩いた。「ハンザイはダメだよ」よく知らない言葉で咎めるも「遠慮すんなよ」と手を引っ張られ、仕方なく僕は君の背に身を預ける。途端、車輪が回り出す。坂道に差し掛かり、風に呑まれる。その夜、小さな犯罪者は、すっかり冒険に耽っていた。

神足颯人 @frontiara510
夏には確かに「正解」があって、それを追いかけてしまうものだが、変わり者の僕はあえて別解に徹したい。例えば、ほとんど音しか楽しめないような花火を遠くからひとり眺めて、もう終わりかな、帰ろうかなと思った途端に、またひとつ花火が上がるせいで帰れなくなるような、とびきり奇特なやつがいい。

(サイトからの投稿)
僕は深海魚になってしまったようだった。周りはとてつもなく暗く、寒く、寂しい。上も下もわからない場所を、立ち止まるのも怖かったから、ただひたすらに泳いだ。どうしてか思い出せない夏の星座は、今頃どうしているだろう。幼い頃に遠足で行ったプラネタリウムの星空しか、僕はまだ知らないのに。

(サイトからの投稿)
ここから飛び降りてしまおうと思うのよ。本当に。「美しい満点の星空だったから」、そんな理由でいいでしょう。どうか、許して。あなたのことが好きだった。好きだったから、きっと、ここまで来たのに。あなたがずっと遠くへ行くから、仕方がないから、私、あなたがいる星空を歩いてみたくなったの。

7月28日

さき。(サイトからの投稿)
ここは未来。目の前にはこれから私の元に降り立つ光。「えんえんってなあに?」なぜ泣いているのかわからなくて思わず涙がこぼれてしまう時も、長すぎて辛すぎてわからなくなってしまう時も。それでも永遠とは君のことを愛する時間のことなんだよ、と。微笑みながらそっと君の頭に触れた。

さき。(サイトからの投稿)
将来役に立つように、関係ないことも興味のないことも、直向きに勉強した。そんな私は将来に到達した今もまだ選択肢を増やす生き方を続けている。いつまで遠い未来に思いを馳せているの、と風の中から声が聞こえる。目の前の景色にピントを合わせ、ゆっくりと息を吸い込んだ。

冬林 鮎 @fybys1_ayu
先生は星を追う。ヘマタイトの様に燻む夜空を見上げ、夏の大三角を探すのだと仰って。私はビクセンの望遠鏡を覗く鼻高の横顔を盗み見た。
「ベガの輝きは25年前のものだ。焦がれる時にはもう遠い。星は常に我々の前にのみ在る」
アルタイルは17年前。天の川で見つめ合う二人にも歳の差があるのですね。

藤原佑月 @yudukifujiwara
春、夏、秋、冬、冬、冬。
君と別れた遠い季節から抜け出せない。
「新しい恋を始めたら」と友達が言った。

冬、冬、冬、冬、冬。
「新しい恋を始めましょう」とAIが言った。

冬、冬、冬、冬、冬、冬、冬、冬。
僕はスノードームの中で今日も、君が硝子を割って僕を窒息させてくれるのを待っている。

堀江常行(サイトからの投稿)
夏、綺麗な星は。冬の大三角、綺麗だ。夏の大三角、これも綺麗。でも冬の大三角、構成するシリウスは、他の星と比べて、とても近い。他の星は遠い。肉眼の錯覚による者だ。夏の月、これは近い。だけど美しい。地球から見てこんなに美しい星は、他にない。肉眼で、模様まで見える星は他にないのである。

友川創希(サイトからの投稿)
僕は小さな娘と妻とともに近くの花畑に足を運んだ。
子供がひまわりに止まる蝶を眺めながらなにかを感じているみたいだ。なにを感じているのかはわからないけれど、それが娘が成長した姿に僕らは思える。
永遠にこの日々が続いていきますように――そう思いながら、僕と妻は娘のもとに近づいた。

友川創希(サイトからの投稿)
彼女はいつも誰かの助けになるようなことを進んで行ったり、誰かの悩みを聞いてあげたり――いつも自分よりもその人を一番に考えてくれている。そんな彼女の後ろ姿を見ているといつも思うことがある――本当に僕には届かない遠いところにいる存在だなって。僕も少しずつでもいいから近づけるだろうか。

冬村さや(サイトからの投稿)
 向こうでは朝陽が昇る頃だろうか。あの人は元気だろうか。私は、病室の窓から沈む夕陽を眺めていた。私が昔諦めた世界を、遠い国であの人が見ている。
 あの人は特別だから。私だって、あと一歩だったのに。こんな風に言い訳してばかりの私を見たら、あの人はなんて言うのかな。

一口一 @hitokuchi_h1
君が遠い土地へ星を見に行きたいと言ったから、高い望遠鏡を買ったし、星が1番綺麗に見える時期を待った。遠くに行くために車の免許も取った。僕なりに精一杯準備をしたつもりだけど、足りなかったみたい。突然遠距離恋愛をさせてごめんね。僕が遠心力を操る準備を怠ったせいだ。

【第3期星々大賞受賞者】
のび。
@meganesense1
遠雷を聞く。ベッドから起きて窓の外を見た。海沿いの保養地へ来てニ週間、この辺りの天気は変わりやすく、目が覚めるような快晴が今や光の差さない曇天だ。遠雷。偶然に真っ白な稲妻の軌跡を目にして、海への落雷が生命誕生のきっかけだという話を思い出す。遠雷。すぐそこに命があるような気がした。

大場さやか @sayaka_ooba
この線路を辿っていけばどこまでもいけるのかな。日本の果てまではいけるのかな。北海道なのか沖縄なのか、線路の果てがどこなのかわからないけれど、そこまで逃げられれば大丈夫なんじゃないのかな。最終電車が去った真夜中に、私は線路の上を歩く。脚が疲れてももっと遠くまでいこう。あ、電車来た。

沖青磁(サイトからの投稿)
聞いたよ大変だね。ああ両親の理解がなくて、特に老父が大反対。仕方ないね、生理的に無理ってヤツだ。男が男を、なんて許せないんだろう。――うん。悩む男は遠い目をして空を見上げた。愛する人を食べて送りたいってだけなのに。食人葬。新しい価値観を認めることは、遥か未来でも難しい問題らしい。

スズムラ @suzumuraxxxjun
遠足で仲間外れにされてから不登校になり、中学校生活も不登校を続けた。友達とも疎遠になった。ただ幼馴染の遠藤菜摘だけは、変わらず接してくれた。彼女に熱帯夜に連れ出された夜。花火大会を遠くから眺めた。花火が終わりると、空に静寂が戻った。僕は花火より星空と彼女の横顔の方が輝いて見えた。

いち子聡(サイトからの投稿)
急に冷たい風が吹いた。空を見上げると遠雷が。僕がそっちを見ると君は急いでやって来る。君は相変わらずだ。君「いつまでもここにはいられないの」僕「もっと会いたいよ」君「会えるのは一瞬だから愛しいのよ」君がすっと消えた。刹那、物凄い雷鳴が。君の照れ隠しだと受け止めるよ、今の大太鼓。

獅子頭(サイトからの投稿)
私はさなぎ。卵から孵り、初めて外の世界に足を踏み入れた。空腹を満たし、成長するため睡眠をとった。外敵に命を狙われることも度々あった。だが生きている。さらなる成長を遂げるため、私は身を固めた。そのひと時、私は思考する。再び足を踏み出す世界は、きっと一度目とは程遠い世界なのだろう。

トガシ @Togashi_Design
遠くで小さな女の子がシャボン玉を飛ばしている。ふよふよと風に乗って流れて来たシャボン玉には、砂漠が映っていた。なるほど。この町の未来ってわけか。ふぅーっと息を吹きかけると、シャボン玉はパチンとはじけて、ボロボロと砂がこぼれた。砂は太陽の光を反射し、きらきらと輝く。僕は目を細めた。

雨琴 @ukin66
まだ像を結ぶこともない。黒々とした眼がこちらを見ている。深淵もこちらを見ているというけれど。いい子だからこんな醜い私を見ないで。遠い未来では編集されて、私の存在なんてなかったことになる。痛めることすらできないのに、どうしてお腹は減るのかな。この指を握られても、返せるのは笑顔だけ。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
やめたい癖がある。と思い出すたびに思い出さなければやめられていたのにと残念な気持ちになる。この癖は思い出したが最後、それは抑えきれない欲望となり、やめなきゃというより、むしろやりたいになってしまうのだ。思考に遠近法を取り入れることにより、この問題を解決できないかと遠くを見る。

スズキサイハ @SZK_SiHal_888
遠いところに住むじいちゃんが亡くなった。生前なかなか会えなかったのに、星となり地球を超えて何億光年先の住人になってしまった。もう二度と会えないだろう。そんなある朝、顔を洗いに鏡を見れば大きなあくびをするじいちゃんがいた。
「久しぶり」
思えばずっと、じいちゃんは私の中に住んでいた。

7月27日

(サイトからの投稿)
星が瞬いた。とても遠い場所にある青い光。 
どうしてか、足下が気になった。安物の白い靴は、夜の色で青い。
ぽつり。ぽつり。
隠したい音は少しうるさい。頬を伝うのは、涙だ。
今日は、父の命日。
遠い昔の出来事。
それでも。地球からあの星までの距離に比べたら、きっと、近いから。

石川幸亜(サイトからの投稿)
届かないほど遠い所に彼は居る。
そこがどこなのか、誰も知らない。
婚約者が亡くなるなんて思わなかった。
結婚も控えていたのに。
それを思うと悔しくて涙が止まらない。
あなたと式を挙げたかったよ。私はあなたと。
今私は彼の元にいる。数十年の哀しみを経て、向こうで式を挙げたのだ。

きさらぎみやび @KisaragiMiyabi1
コンコン、と窓を叩く音がする。僕はペンを走らせていた手を止めて、窓に近寄りカーテンを開ける。半分の月が中天にかかっていた。今夜も真夜中が配達されたのだ。時間通り、きっかりに。犬の遠吠えが聞こえてくる。明日が届けられたことを寿いでいるのだろう。真夜中は、未来も連れてやってくるのだ。

煮込みメロン @7fWufZUZdAWh0FN
昔、星々の輝く海から手紙を出したことがある。人類がまだ太陽系よりも遠くへと出ることができなかった時代だ。
「あなたに会いに来ました」
銀河の外からの使者が、延命装置に繋がれた私に、古い手紙を差し出した。
『私に会いに来てください』
この日、私は二百年越しの返事を受け取ったのだった。

島岡來(サイトからの投稿)
一人暮らしを始めた翌日、遠い親戚だと名乗るおじさんが現れた。何しに来たのか聞くと、ゆっくりしに来たと答えた。怪しい。だけど他人のような気がしなくて、家に招いてお茶をご馳走した。コーラがよかったとぶーたれる。我儘なおじさんめ。「そりゃあんたのひ孫だからな」おじさんはニヤリと笑った。

島岡來(サイトからの投稿)
遠足前日に隕石が接近してきた。世界中がパニックになり、とうぜん遠足どころじゃなくなる。最後の日をどのように過ごしたいですか。難しい顔でたずねる女性アナウンサーの声は少し震えていた。お母さんのお弁当を食べて、友達とお菓子を交換っこしたいです。僕はテレビの前にでインタビューに答えた。

島岡來(サイトからの投稿)
向こうに見えるのがモナリ座だよ、と嘘を教える。父さんに買ってもらった望遠鏡を覗き込みながら、弟はすごいすごいとはしゃいでいた。「もっと教えて!」僕は得意げにどんどん嘘を教えていく。あれがチョップ座、あれがひ座、それからラザニア座。最後に一番明るい星を指さして言った。「あれが弟座」

ぺいきち(サイトからの投稿)
 右隣のじいちゃんが、遠い目をしていた。僕は声をかける。じいちゃんは眼鏡を差し出してきた。僕が眼鏡をかけると、じいちゃんが変身した。両親、友達、そして今は亡き妻――僕は眼鏡を外す。右隣には誰もいなかった。
「じいちゃん」
 左隣を見た。昔の僕に似た少年が、首を傾げていた。

凪野りょう(サイトからの投稿)
カササギが集まって、天の川に橋を架ける。「さあ織姫様、この橋を渡っておゆきなさい」わたしは躊躇する。背中を踏みつけられるというのは、カササギたちにとっては苦痛だろう。「どうかお気になさらず。彦星様はすでに渡り始めています」わたしは動揺する。遠くの彼は、躊躇しなかったのだろうか。

春うか @UkaHalu
毎週火曜、夜八時。生温い夜気を連れて、自動ドアがひらく。ひとりぼっちのコインランドリーがふたりきりになるとき、僕と貴方の視線が交差する。乾燥機が止まるまでの逢瀬。ぐるぐると回るYシャツを見ながら、話のとば口をぐるぐると探す。鼻歌を歌う声しか知らない。貴方との距離は、近くて、遠い。

たつきち @TatsukichiNo3
その人は「遠くの人」と呼ばれている。奇抜な髪色と見慣れないデザインの服が印象的なその人はいつも遠くを見ている。僕も河原の土手の上や展望台の最上階で見たこともある。
「ほら、遠くの人だよ。今日も何を見ているんだろうねぇ」
彼の瞳が映す景色より、その瞳を覗き見たい。僕はいつも思うのだ。

宮川雨 @rainy0702
光は掴めそうで掴めない。自らの手のなかに収めようと手を伸ばすが掴めず、次第に手を伸ばすことをやめてしまった。
隣にいるあの人の手の中には別の光が収まっていて、その人はがむしゃらに光を求めて走っていたのを私は知っている。だから、私も。同じように遠いあの光に向かって再度走り出す。

こたろう @tDdKt587KklMAWJ
遠い記憶の中。日曜の朝が待ち遠しかった。その日だけは早起きできた。遠足の前の日には興奮して寝れなかった。おやつは三百円までという謎のルールがあった。時々理由もなく遠くへ行きたくなった。遊びに行くときには遠くへ行ってはいけませんよとよく言われた。そんなに遠い時代の事ではないけれど。

文月ノ文(サイトからの投稿)
今日は海と親戚が見えました、雷も少し。わかりやすいですね。ええ、たまには穏やかな野が見たいです、あなたは。老眼鏡でした。おもしろい、遠眼鏡をのぞいて眼鏡が見えるなんて。そろそろ認めざるを得ないのでしょう。それにしても、なぜ、わたしたちの心はあんなに遠いところにあるのでしょうね。

こしいたお(サイトからの投稿)
久しぶりに幼なじみと食事をした。僕はハンバーグ定食、彼は天ざる定食を注文した。「そのハンバーグ半分ちょうだい」「え、うん」彼のあだ名は物知り博士。彼の知識は幅広く、初心者にも分かるように噛み砕いた説明もうまい。最新の対話型AIでも彼には敵わない。しかし、相変わらず遠慮を知らない。

はるひ(サイトからの投稿)
僕はあの色気のない星が嫌いだ。本当なら他の星と変わらないぐらい明るくて大きいはずなのに、僕から遠くにいることで暗く小さく見えて全く色気がない。まるで、周りから人気でも、自身から友達の輪に入ろうとしない、教室での僕のようだ。だから、鏡に投影されたかのようなあの色気のない星が嫌いだ。

かをり(サイトからの投稿)
結婚し子も生まれたが、好きな人が出来た。人生で一番好きな人。どんな芸能人より、元彼より、夫より、好きになってしまった。
顔も声も名前も服装も背丈も、全てが好きだ。気持ちを抑えられない私に彼は言った。「お前は俺が夫でないからかっこよく見えるんだ。」と。
彼は遠くで妻子を愛している。

かをり(サイトからの投稿)
いつも私を無視する祖母が大嫌いだった。私が呼んでも、お礼を言っても、いつも祖母は無反応だった。こちらを一瞬は見てくれるが、反応は無い。
私は祖母に育てられた。6歳の時、祖母が亡くなり施設に入ることになった。12歳の時、施設の人から話を聞いた。祖母は、耳が遠かったということを。

黒田ナオ @kuragenohirune
布団で横になっているはずなのに、気がつくと夜市に出かけている。パジャマのまま綿菓子を手に持って。煌めくアセチレン灯。お面をつけた人々がぞろぞろ歩いている。いつの間にか人波から外れて、草ぼうぼうの原っぱにいた。遠い夜空を見上げていると、怖くもないし寂しくもない。

かをり(サイトからの投稿)
遠くから聞こえる踏切の音。工事の音。子の泣き声。心を落ち着かせ耳を澄ませば、遠くからの音や声もよく聞こえるものだ。
私が今、一番気になるのは子の泣き声だ。隣人の綾は、全く気にならないそうだ。私もそうだった。先月までは。
気になり始めたのは、私のお腹にも来てくれたとわかったからだ。

ベ―リ・リーナ(サイトからの投稿)
夜空も、未来もせつないほど遠い。思うだけでもぞっとする。人間がとても愚かで無力に見える。けど、遠いからこそなぜか妙な安心も感じられる。まだ遅くない、と。目指せるところがある、と。私たちには永遠が与えられていないとしても、遠い空をじっと見つめて永遠の形を想像することができる。

財前ゴボウ @zaizengobo
子供たちは公園の回転遊具で遊び、空に笑い声を響かせていた。一人の少年、ヒロは遊具の端に立ち、彼の体を外側へと引き寄せる力を感じた。周囲の世界が早回りし、彼はその驚きを楽しみながら自然の法則と対話を始めた。遠心力という名の新しい友人との出会いだった。

伏水瑚和 @coyori_fushimi
どうして会うのもダメなの、と彼女は泣いた。君が大切だからだよ、と僕は答える。モニター越しの瞳が寂しさを訴えているのに気づいていた。そして気づかれないよう本心を殺す。会ったら触れてしまう。だけど気づいてほしい。君は今、一番遠ざけたい人だと。無自覚に僕が殺してしまうかもしれないから。

【第2期星々大賞受賞者】
へいた
@heita4th
遠眼鏡を手に入れた。遠くのものが素敵に見える。空の彼方のお星様。海の向こうの宝物。ビルの谷間に人影がある。誰かの背中だ。何かを覗いている。見覚えがある。あの服。あの肩。手を伸ばそうとして、しこたま転ぶ。遠眼鏡が転がり落ちた。両手を地面につくと土の匂い。足元に小さな花が咲いていた。

歩く天使(サイトからの投稿)
どういう風な内容なのか読もうとしましたよね。今あなた、文を読んでなんじゃこりゃと思いましたね。私は遠感を持っているのであなたの考えていることが分かるのですよ。遠感って何ですかって?皆が聞いたことある名前で言うとテレパシーのことです。

トガシ @Togashi_Design
引っ越し先で荷物を片付けていると、いつの間にか夕方になった。知らない街のコンビニで買ったお弁当をレンジでチンして食べていると、急に不安に襲われる。たまらず窓を開けると、遠くから小さくガタンゴトン……と電車の音が聞こえた。まるで「大丈夫だよー」と囁いてくれたようで、少し元気が出た。

鬼姫ライム @KiKi_lim224
俺は今"シドニー"を走っている。耐寒装備を疎かにしたせいで凍死寸前なのだ。遠征を終えても魔物を換金しないと意味がない。

「はぁ……」とため息が漏れる。
俺はパソコンを閉じてすぐ布団に入る。カーテンの隙間から朝日が差し込んで顔を照らす。俺は必死に腕を伸ばして扇風機のスイッチを押した。

桜 花音 @ka_sakura39
「みんなで天体観測しようよ」
夏休みの宿題で夏の大三角を観測する事になっていた。
幼馴染のアイツは五年生になってからよそよそしい。今だって、家まで迎えにきてくれたのに、三歩先を歩いて行く。
近くて遠い、離れてしまった距離がさみしい。ほんの数カ月前、この手を繋いでいたというのに。

わか猫 @wakaneko_22
ベタベタした生ぬるい風を感じなくなる代わりに、一筋の光さえ見えない暗闇に身体が吸い込まれていく。ざぶんざぶんと繰り返す波の音、君と過ごした青い夏が頭に浮かぶ。去年、ここで君の最後の笑顔を見た。
遠くから、誰かがやめろと叫んでいる。けれど僕は振り返らない。
これから君に会えるから。

泉ふく @fuku_izumi
この日、この夜、この場所。
普段は遠く散り散りな者達が一体となる日。デートだろうか、仕事終わりだろうか、友や家族と楽しむ者もいるだろう。
私だって窓から缶ビール片手に眺めてる。
澄み切った夜空、幸せな爆発音に皆の視線が集中する。散りばむ灯りは華やかに、そして儚く私達を包んでくれた。

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予選通過作 受賞作

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